表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】婚約者の王子に浮気されていた聖女です。王子の罪を告発したら婚約破棄をされたので、外で薬師として自由に生きます  作者: ゆうき@呪われ令嬢第二巻発売中!
第二章 奇怪な病

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/115

第五十一話 元気な後輩騎士

 どうして騎士団の後輩がここに来たのだろう? この方も、エクシノ様みたいにオーウェン様をバカにしに来たとか?


 この方の雰囲気からして、そういう陰湿なことをやるようには見えないけど……人間は見た目だけでは判断できない。


「本当に久しぶりだな。また会えて本当に嬉しいよ」

「オレも嬉しいです! あっ、オレはクロルーツェ騎士団所属、ヨハンと申します! すみません、さっきのお話が聞こえてきちゃってまして……ごほんっ、オーウェン先輩、おめでとうございます!」


 ヨハン様は、ビシッと敬礼を決めながら、祝福の言葉を伝え始めた。


「お嬢さん、オーウェン先輩は訓練の時は厳しいですが、それ以外のところはとてもやさしく、情に厚く、料理も出来てこのルックス! 最高の男なんですよ! オレが保証します! だから、末永く仲良くしてあげてください!」

「は、はい」


 ……あ、あれ……? なんだかもの凄く祝福されてる? それに、オーウェン様のことを慕っているような言葉まで……。


 オーウェン様も、会えて嬉しそうな反応をしていたし……悪い人じゃないのだろうか?


「えっと、申し遅れました。私はエリン。薬屋アトレの責任者で、薬師を務めております」

「私はココだよ! よろしくね!」

「エリンさん、よろしくお願いします! いやーそれにしても、ココちゃんは大きくなったねぇ!」

「わたしのこと、知ってるの?」

「実は、まだ小っちゃい頃に会ってるよ! さすがに覚えてないか~!」


 確か、以前聞いたオーウェン様のお話では、事件があったのはオーウェン様が十五歳、ココちゃんが二歳の時だったはずだから、覚えてないのも無理はないわね。


「立ち話もなんですので、中にどうぞ」

「ややっ、これはこれは、ご丁寧にありがとうございます!」


 空は既に真っ暗で、夜風もだいぶ冷たくなってきた外で話を聞くのは、さすがに申し訳ない。それに、どうやら本当に悪い人じゃなさそうだから、素直に家の中に案内した。


「よければ、こちらをどうぞ。お仕事をしていたということなので、疲労回復がある薬茶です」

「おぉ、なにからなにまでありがたい! よろこんでいただきます!」


 私は、家にストックしてあった薬草を煎じてお茶にすると、ヨハン様に手渡した。すると、ヨハン様はまるで子供ように大喜びしながら、お茶に口を付けた。


 ここまで喜んでもらえると、出した甲斐があったというものだわ。


「ヨハン、すまないが俺はすぐに夕飯の支度をしなければならなくてな。料理しながら話を聞いていても構わないか?」

「全然大丈夫ですよ! あ、手伝いしましょうか!?」

「ありがとう。だが、客人にそんなことはさせられない。気持ちだけ受け取っておくよ」


 ヨハン様の申し出をやんわりと断ったオーウェン様は、先程買ってきた食材を使って、ビーフシチューを作り出した。


 その手慣れた手さばきは、何度見ても本当に惚れ惚れする。お付き合いを始めたからなのか、いつも以上に惚れ惚れしてしまっている気がする。


「いや~! 今まで僻地の駐在所に勤務していて、オーウェン先輩に会いに来れなくて……手紙を出そうにも、屋敷も無くなっていてどこに行ったのかもわからず、完全に疎遠になってしまっていたんですけど、最近こっちに異動になったんですよ! それで戻ってきたら、こっちの騎士団の仲間から、最近オーウェン先輩がとある事件の参考人として、騎士団に来ていた話を聞いて、居ても立っても居られなくなっちゃって!」

「は、はぁ……」

「それで、仕事終わりに来てみたら、まさか本当にいるなんて! しかも、こんなに可愛い彼女さんもいるとは! あ、お茶おいしいです!」

「それはなにより……」


 ……この人、ずっと元気に喋っているけど、疲れたりしないのだろうか? 私が真似したら、五分で力尽きそう。


「それで、オーウェン先輩とはどこまでいきました? キスとかしました?」

「きっ……!?」

「エリンお姉ちゃん、もうそこまでやっちゃったの!? きゃー!」


 き、ききき、キスって……!? た、確かに一応告白をされた時にしてもらったけど……ダメだ、思い出したら体中が熱くなるし、顔がにやけちゃう!


「その反応……もしかして、それより先もしていたり!? かーっ、羨ましいですよ! 後学のために、どんな感じだったのか教えてもらえませんか!?」

「おい、あまりエリンを困らせるな」

「いっでぇ!?」


 すたすたと私達のいるテーブルのところに戻ってきたオーウェン様のデコピンがヨハン様の後頭部に直撃した。


 結構いい音がしたけど、大丈夫かしら……?


「オーウェン先輩のデコピンは、相変わらず痛いのなんの!」

「オーウェン様と、仲良しなんですね」

「ええ、それはもう! 異動が無ければ、もっと早く会いに来れたんですけどね。ここだけの話、騎士団の連中は、ヴァリア家のことを悪く言ってますけど、オレは全然そんなことないんで! むしろ、国と民のために最善を尽くそうとしたヴァリア家の方々を、尊敬してるくらいなんですよ!」


 ……もしかして、オーウェン様が以前仰っていた、唯一の味方ってこの人のことなのかしら? うん、きっとそうだ!


 どんな人なのかちょっと気になっていたんだけど、本当にオーウェン様を慕ってくれる人で、安心したわ。


「っと……熱くなりすぎちゃいました! 失敬失敬!」

「いえいえ。それでヨハン様、今日は一体どんなご用件で?」

「ヨハン様ぁ!? オレはそんなかしこまった呼ばれ方される器じゃないんで、もっと適当な呼び方でいいですよ!」

「そういうわけには……」

「オレは平民の出身なんで、そんな呼ばれ方をされたら変な感じなんですよ~! お願いしますよ〜!」

「で、では……ヨハンさん。改めてお聞きしますが、どのようなご用件で?」


 もう一度ヨハンさんに用件を聞くと、ふぅ……と小さく溜息を漏らしてから、口を開いた。


「オーウェン先輩に会いたかったってのもあるんですけど……実は、アトレに仕事の依頼をしたくて」

「依頼? どんなものでしょう?」

「俺の幼馴染が病気になってしまって。しかもその症状が……体が植物になってしまうというものなんです」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ