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【完結】婚約者の王子に浮気されていた聖女です。王子の罪を告発したら婚約破棄をされたので、外で薬師として自由に生きます  作者: ゆうき@呪われ令嬢第二巻発売中!
第一章 目標への第一歩

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第十八話 おませな妹

 寄り道もせずに真っ直ぐとオーウェン様達の元に帰ってきた私は、ギルドで聞いたことをオーウェン様とココちゃんに話した。


「なるほど、そんな制度があったのか……すまない、完全に俺の知識不足だった」

「お兄ちゃんの時って、そういうのは必要なかったの?」

「俺の場合は、王家直属の騎士団に所属していたと、事前にギルドに伝えていたから、そういうのが必要だって話を聞く機会がなかったんだ」


 なるほど……それならオーウェン様が知らなかったのも、無理はないわね。でも、これからどうしようかしら……このままでは、薬師になることが出来ない。


「薬師か……俺に一つ、手があるんだが」

「なんですか?」

「俺の知り合いに、薬師がいるんだ。かつてはヴァリア家の専属の薬師だった人物だ。その方に、エリンとココを会わせるんだ」

「私とココちゃんを?」

「そうだ。彼はココが倒れた時に、最初に診てもらった薬師でね。彼にココが治ったことやエリンが治したことを伝えれば、エリンを認めて推薦状を書いてくれるかもしれない」


 貴族の直属の薬師になれるほどの腕がある方の推薦状なら、ギルドも許可を出してくれるに違いないわね。とても良い案だわ!


「そうと決まれば、早速行こうよ!」

「いや、ココはもう少し休んだ方が良いだろうから、来週あたりに行こう」

「ダメだよ! 早く行かないと、エリンお姉ちゃんがお薬屋さんを開けないじゃん!」

「しかし……はぁ、わかった。それじゃあ俺がココをおんぶしていこう」

「突然お邪魔して、ご迷惑じゃありませんか?」

「恐らく大丈夫だと思うが……もしダメだったら、その時は出直そう」


 方針が決まった私達は、その薬師の元に向かって出発する。オーウェン様が言うには、私が使った町の入口とは反対の辺りに住んでいるらしい。


「お兄ちゃん、一人で歩けるよ~」

「まだ病み上がりなんだから、無理はさせられないだろう」

「ちょっとくらい平気だってば~!」


 薬師の元に向かう途中、オーウェン様におんぶされていたココちゃんが、一人で歩きたいと主張しながら、じたばたと暴れはじめた。


 結構遠慮なしに暴れているけど、大丈夫なのだろうか……オーウェン様は顔色一つ変えていないけど……やっぱり騎士になれるくらいだから、頑丈なのかしら?


「少しくらいは動いたほうがいいんだよ! エリンお姉ちゃんもそう思うよね?」

「えっ? ええ……いきなりたくさん動くのはよくないけど、少しずつ運動して落ちた筋力を戻すのは良いことだと思うわ」

「なるほど。わかった、それじゃあパーチェに着いたらな」

「やったー!」


 さっきまでの不満そうな顔から一転して、ニコニコ笑うココちゃんを微笑ましく思いながら、再びパーチェへとやってきた。


 やっぱりここにくると、心が躍ってしまうわね。あと五十回くらい来れば、平常心を保てるようになる……かもしれないわ。


「ここからどれくらいで着くんですか?」

「二十分くらいだろう。ココに合わせて歩くつもりだから、もう少しかかると思ってもらえるとありがたい」

「わかりました」


 ゆっくり行くぶんには、何の問題もない。むしろ、のんびりと散策が出来るから、嬉しいくらいだ。


 ただ、パーチェの町並みを見ることに夢中になりすぎて、二人とはぐれないようにしないとね。


「表情が硬いが、緊張しているのか?」

「あ、いえ……はぐれないように気を付けようと思っただけです」

「なるほど」


 オーウェン様は少しだけ考えるような素振りを見せた後、私に右手を差し出した。


「えっと?」

「はぐれないように、エスコートをさせてくれ」

「あ、ありがとうございます」


 ただ私に手を差し出しているだけなのに、一挙一動に一切無駄がなくて、とても美しいというか……端的に言うと、すっごくカッコよく見えた。


 こんなに男性をカッコいいと思ったことって、今まであっただろうか? カーティス様が好きだった時も、こんなにカッコいいと思ったことも、胸がここまでときめいたこともない。


「あれあれ? 二人とも、いつからそんなに仲良しになったの? あっ、もしかしてお付き合いするの!?」

「お、お付き合い!?」

「お兄ちゃんって、全然女の人とお付き合いとかしないから、心配してたんだよね。エリンお姉ちゃんなら優しいし、安心してお兄ちゃんを任せられるよ!」


 わ、私のような人が、オーウェン様みたいな素敵な男性とお付き合いなんて、あまりにも失礼すぎるだろう。オーウェン様には、もっと素敵な女性がきっと現れるわ。


「ココ、あまりエリンを困らせるようなことは言わないようにな」

「え~? でもでも~!」

「と、とりあえず行きましょう! ほら、ココちゃんも手を繋ぎましょう!」


 私は右手でオーウェン様と、左手でココちゃんと手を繋ぐと、目的地に向かってのんびりと歩き始める。


 ……こうしていると、なんだか旦那様と子供と一緒に歩いているみたいだ。こんなことを考えてしまうなんて、きっと浮かれている証拠だろう。


 このままだと、変なことばかり考えてしまいそうだし、なにか話題を振って場の空気を変えた方が良いわね。話題……あ、そうだ! いつか聞こうと思っていたことがまだ聞けてないから、それを聞いてみよう!


「オーウェン様とココちゃんは、花びらも茎も葉っぱも、全て真っ白な花って知りませんか?」

「え? うーん、わたしは知らないかなぁ。お兄ちゃんは?」

「俺も知らないな……」

「そっかぁ。どうして急にそんな話をしたの?」

「その花が広がる花畑が、唯一私の記憶の中にある、故郷の景色なの」


 私には、お母さんや故郷について覚えていることが、ほとんどない。なにしろ、まだ幼い頃にお城に無理やり連れていかれちゃったからね。


 そんな私の記憶にも残るほど、真っ白な花畑はとても印象的で綺麗なものなの。


「私ね、いつか自分の故郷に行ってみたいの。そのために、記憶に残っている故郷の特徴を知っているか、二人に聞いたのよ」

「そっか……知らなくてごめんね。いつか見つかるといいね!」

「ええ。ありがとう、ココちゃん」

「全てが白い花か……かなり貴重なものだろう。俺の方でも、情報を集めてみるよ」

「オーウェン様も、ありがとうございます」


 残念ながら、最初の情報収集は空振りに終わってしまったけど、これくらいで諦めるつもりは無い。もっともっと色々な人に聞いて、必ず故郷の手がかりを見つけるんだから。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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