表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】婚約者の王子に浮気されていた聖女です。王子の罪を告発したら婚約破棄をされたので、外で薬師として自由に生きます  作者: ゆうき@呪われ令嬢第二巻発売中!
第一章 目標への第一歩

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/115

第十話 不治の病

「妹様を……?」


 深々と頭を下げるオーウェン様の言動には、嘘偽りが感じられない。心の底から、私に治してほしいとお願いしているのがわかる。


 どうしてわかるのかって? カーティス様と違って、目や言い方が真剣に見えたからだ。そんなのは、私のさじ加減じゃないかと言われたら、それまでだけどね。


「はい、私に任せてください」

「エリンさん……ありがとうございます。では、我が家に来てもらえますか?」

「わかりました、と言いたいところなんですが……まだ体に力が入らなくて」

「心配はいりません。先程も少しお話しましたが、俺があなたを運びますから」


 オーウェン様はそう言うと、私のことをひょいっと軽々持ち上げた。


 大きな木を、あれだけ簡単に切ってしまうほどの力があるなら、私を持ち上げることなんて、造作も無いのはわかっていたけど、改めて持ち上げられると、凄いと思ってしまう。


「……って、オーウェン様。これってお姫様抱っこでは……?」

「そうですね。女性を樽を片手で担ぐように持ちあげるわけにはいきませんので」

「それはそうかもしれませんけど……」

「手なら心配いりませんよ。あなたのおかげで、もう痛みは一切ありませんから」

「それはなによりですけど、そういうことでは……」


 お姫様抱っこどころか、こんなに男性と密着したことも初めての経験だ。カーティス様に、そういう触れ合いは、結婚してからと前々から言われてたからね。


 周りに人がいない状態でも、想像以上に恥ずかしいけど……これからの私には一生縁がないものだろうから、良い経験が出来たと思うようにしよう。そう思わないと、ドキドキしすぎて死んじゃいそうだわ。



 ****



 歩きだしてから三十分くらいだろうか。木々が生い茂っていた森を抜け、開けた所へとやってきた。そこには、大きくて綺麗な豪邸……ではなく、こじんまりとした小屋が建っていた。


「あの、ここがオーウェン様の住んでいるところですか?」

「はい。ここに妹と二人で暮らしています」


 どういうこと? てっきり貴族の人だと思っていたのに、この家は貴族どころか、平民が住む家よりも質素な家に見える。


 いや、今は家のことなんてどうでもいいわね。いま私が考えるべきことは、オーウェン様の妹様のことだけでいい。


「もう自分で歩けるので、降ろしてもらえますか?」

「わかりました」


 私はオーウェン様に降ろしてもらってから、小屋の中に通してもらう。中は整理整頓されていて、とても綺麗だった。


「妹は地下の寝室にいます」


 部屋の奥にあった階段から地下に行くと、そこにはベッドで横になっている女の子がいた。


 オーウェン様と同じ、綺麗な赤い髪が特徴的な少女は、眠っているようだけど、息が荒いし顔色も悪くて、とても苦しそうだ。


「彼女が妹様ですか?」

「はい。ココというのですが……三か月ほど前から体調が悪くなって、最近ではいつも苦しそうにしています。多くの医者に診てもらったのですが、原因はわからず……処方してもらった薬も効かないんです」

「なるほど……私に診せてもらっても良いですか?」

「わかりました」

「では終わったらお呼びしますので、上で待っていてください」


 素直に上にいったオーウェン様を見送ってから、私はココ様の診察を始める。


 症状は……発熱があるわね。咳やくしゃみといった症状は見られない。衰弱と、筋肉の低下も見られる……あと一番気になるのは、肌のあちこちに黒いシミがあることだ。


 あきらかにぶつけた時にできるアザとは違うものだ。真っ黒で、その部分だけ人間の肌の色とは思えないようなものだ。


「……このシミ、もしかして……」


 もう少しココ様の体を調べていると、二の腕に一際大きい黒いシミがあった。その中心には、何かにひっかかれたような傷があった。


「やっぱり、この症状は……」


 ココ様の病気の正体がわかった私は、急いで上の階にいるオーウェン様の元へと向かった。


「オーウェン様、ココ様の病気の正体がわかりました」

「本当ですか? それで、妹は……」

「ココ様は、黒染こくせん病です」

「黒染病……?」

「とても昔に流行った伝染病です。古い文献によると、とある動物の持っている病原体が体に入り込むことで、発症する病です」

「動物?」

「アカジサルです」


 これが、あの猿達が危険な理由。そして、薬ばかり勉強していた私が、どうして彼らを知っていたかという理由だ。


 彼らに噛まれたり引っかかれたりすると、彼らと共存関係である病原体が体に入り、黒染病になってしまう。


 黒染病は不治の病とされているため、昔の人の手によって、アカジサル達を駆除したと記録に残っている。先ほど見た彼らは、駆除から逃げ延びて、ひっそりと子孫を残した個体だろう。


 ……薬の勉強をしている時に、病気の歴史についても勉強させられたのだけど、その時に黒染病の項目も勉強しておいてよかったわ。


「発熱に衰弱、あと肌に黒いシミが出来ることが特徴です。最近アカジサルに出会いませんでしたか?」

「……倒れる前、一緒に森に食料を採りに行ったら、妹が白い猿に襲われて泣いていたことがありました」

「腕にケガをしてませんでしたか?」

「してました。幸いにも、軽くひっかかれた程度だったので、応急処置で済ませたのですが……」

「それが原因だと思います。ココ様は、かなり末期な状態です……このまま放っておいたら、衰弱して死に至ります」


 黒染病の進行具合は、シミの範囲でわかる。ココ様は、既にシミが体の三割に及んでいる。これは、かなり末期の状態だ。


「そんな……俺がもっとしっかりしていれば……ココはもう治らないのですか?」


 オーウェン様の表情に、絶望の色が宿る。唯一と仰っていた家族が不治の病だとわかれば、絶望するのは当然だろう。


「当時の記録では、黒染病にかかれば助からないと書いてありました。ですが……私の力が宿った薬があれば、治せます」

ここまで読んでいただきありがとうございました。


少しでも面白い!と思っていただけましたら、モチベーションに繋がりますので、ぜひ評価、ブクマ、レビューよろしくお願いします。


ブックマークは下側の【ブックマークに追加】から、評価はこのページの下側にある【★★★★★】から出来ますのでよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ