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 なんだか知らないが謎の少女にいきなり怒られた。

 本当になんだというのだろうか。


「まぁちょっとやりすぎちゃったことは謝るよ。悪かった。ほら、落ち着いていいから」


「なに子供をあやしてる雰囲気出してんのよ! 私が駄々こねてるみたいじゃない!」


「本当に悪気はなかったんだ。助けようと思ってのことだったんだ。現にこうやって助かってるじゃないか」


「ぐっ、まぁそりゃ結果だけを抽出すればそうなるんでしょうけど……ああ、もう訳わかんない! こんな不愉快な気分は久しぶりよ!」


 やはりぷんすか怒る少女。

 なんだ……俺はどうしたらいいんだ……? いっそのこと魔法で拘束でもしてやろうか? いや、それは意味分からないな。ここはもうついでに街とかへの道を尋ねておこう。


「そんなことより俺は街に行きたいんだ。集落とかでもいいんだけど、近くで知らないか?」


「何も悪いことしてませんみたいな顔つきして……はぁ。街を探してるっていうけどあなたそもそも何者なのよ。こんな魔法の威力普通じゃありえない」


「うーん、まぁ確かに普通じゃないのかもしれないなぁ。でも詳しいことは言えない」


「どうして?」


「君は他人だから」


「そりゃそうでしょうけど隠すようなことなのかしらね」


 少女はピキピキしていた。


「人に聞く前に自分から答えてよ。街への道を教えてくれたら俺も一部情報を開示するから」


「なんか想像してた通りのやばい奴だった……街ならそこの道を辿っていけば辿り着くわよ。そっちの方面に現状私が暮らしてるロオジエの街があるわ」


「ありがとう。じゃあな」


「あんたの情報を教えなさい……!」


「ぐぁっ」


 俺は踵を返そうとすると、少女に耳たぶを掴まれてしまった。

 痛い、痛いんですけど! なんてやばんな女なんだ。信じられん。耳たぶを引っ張られるなんて漫画でしかみたことないぞ。想像以上に痛いんだが。


「俺は旅人だ。訳あって迷子になってるんだ」


「その訳が非常に気になるところなんだけど」


「遠くからやってきたってだけ」


「その魔法はどうしたの? どこで誰から学んだの?」


「さぁ、気づいたら使えたって感じかな」


「こいつふざけてるわ!」


「ま、待ってくれ! 俺だってまだよくわかってないんだ。落ち着ける場所を探したいのは本当なんだよ!」


 俺の説得に少女ははぁ、とため息をつき両腰に手を添える。


「ああ、そうですか。じゃあもういいわ、あなたのことは記憶から一つの欠片も残さず抹消いたします。もうあなたのことは見えません。とっとと目の前から失せて頂戴。私の目が開く前にね」


 しっしっと少女は猫でも追い払うかのような仕草をとる。

 まぁせっかく出会ったからなんか話そうかとか思ってたけど、よくよく考えればそんな必要ないか。せっかくの美少女だしお近づきになりたいとか一瞬思ったけどこの性格じゃあな。まぁ俺もこの人のことはもう忘れるとするか。そんなことより魔法の実験を色々してみたいし。


「わかった。じゃあまたな。もう二度と会うことはないと思うが」


「…………ちょ、ちょっと待ちなさい」


 教えて貰った道に向かおうとすると、再び呼び止められる。


「なんでしょうか」


「そ、そうね。あなたの魔法、多少なりとも評価するところはあるというかなんというか。そう、あなたは私に仕える必要があるわ! さっきの私への攻撃に対する穴埋めにね!」


 なんだかそんなことを言い出した。


「意味分かんないけど。もう俺のことは見えないんじゃなかったのか」


「もう見えるようになったわ。いい? あなたは私に償わなければならない」


「なんでだよ」


「さっきの適当な謝罪じゃ足りないわ。だって殺されかけたのよ私? その借りはきっちり返すべきだと思うのよね」


「じゃあどうすればいいんだ」


「言ったでしょ。私を手伝いなさい。そう、あなたの魔法は非常に魅力的。その魔法で私をサポートするのよ」


 少女はそんなことを言い始めた。

 えー、なんでそうなる?








 俺は結局少女と道を歩いていた。

 最初は全力で断ろうとしたが、そんなこと許されない雰囲気を醸し出され、結局押し通されてしまったのだ。

 うーん、まぁ大変遺憾ではあるが、この世界について何も知らないしな……。案内役と考えれば決して相手だけにメリットがある話でもない。そうだ、寧ろちょうどいいかもしれない。まさかずっと一緒にいるわけでもないだろうし、使うだけ使ってやろう。ふっふ、我も策士よなぁ。


「ねぇ、さっき誤魔化してたけどあんたのその魔法、どこで学んだの? 何か隠してるんでしょう、教えなさい」


 そんなことをまた尋ねてきた。

 大きな紫の瞳が割と至近距離で俺にぶつかる。

 まぁ至近距離っていうのは俺が主観で感じてるに過ぎなく、一般で言う普通距離に該当する可能性は否めないが……まぁ、とにかくこいつは美少女だ。タイプまである。性格を抜きにすればな。


「学んだっていうか、本当に気づいたら使えたんだ。だから俺もまだまだ試行段階って感じでな。まぁ天才肌なところはあるから凡人には理解できない感覚かもだけど」


 あまりにしつこいが適当にはぐらかしとく。

 まさか神様に転生させて貰って異世界から来ましたうんぬんかんぬんを語りだしても、本当に変人と思われてしまうだけだろう。隠すつもりも特にないが、変人と思われるのはごめんだ。


「つくづく腹立つわね……」


「あんたは何してたんだよ。こんなところで馬車なんか走らせて……それにあの不思議な生き物たちは?」


「あんたって言い方やめてちょうだい。私にはリベラっていう名前があるんだから。これからはちゃんと名前で呼びなさい」


「わかったよ。俺は黒山琉弥っていうんだ、よろしく」


「クロヤマリューヤ……? 何、もしかして名字持ちとかってこと?」


 え、名字持ちって珍しかったりするのか? 出たよ、異世界特有のやつ……

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