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そのモノ、青白く光る。

 





静かな森の中、その静寂を破り俺達は人ではないナニカと争っている。


「クリス!そっちにも行ったぞ!」

「了解っ!くっ!」


 なんでクソ雑魚ナメクジなゴブリンに、俺だけ苦戦してんだよっ!

 喰らえっ!

 ・

 ・

 ・






「悪いけど…クリス。お前とはこれ以上チーム組めねぇわ」


戦闘を終え、街に戻ってきた俺に仲間の一人がクビを宣告した。


「いやいやいや!待ってくれよ!今日のは…そ、そうだ!腹の調子が朝から悪くて『ごめんね』えっ!?ルナ!?君もっ!?」



 成人を迎え、故郷の村を飛び出して街にやって来た俺は仕事を探していた。

 ロクな技術も知識もない俺みたいな田舎者にできる仕事は身体を張った討伐者くらいしか見つからなかった。


 討伐者は魔物と呼ばれる生き物や、獣を駆除…討伐して報酬を得る仕事だ。

 魔物とは魔石を身体に有している生き物全般の事を指すが、一つだけ例外がある。それは俺達人間だ。

 人間も身体に魔石があるんだけど、魔物ではないらしい。


 さっきのゴブリンは前世のゲームに出てくるゴブリンそのままの見た目と体格をしている。


 そう。俺はこの世界に転生した転生者って事になる。


 もちろん誰にも前世の事は言っていないし、他にそんな話を聞いた事もない。

 つまり誰かに言っても頭がおかしい奴だって思われるだけだろうな。


 それで話は戻るんだけど……情けない事に、俺はこの世界で『馬鹿でも出来る仕事』と言われている討伐者すらマトモに熟せていないんだ。

 腕力も非力だし、剣に心得があるわけでもない。さらに異世界あるあるの魔法で無双しちゃうぜっ!みたいな事もない…

 魔法はあるんだけど、使えないんだよ…なんで…



 成人(15歳)して村を飛び出した俺は、このダンデュールにやってきた。

 そして、手に職もない俺はもれなく討伐者になってソロで活動してたんだけど、最弱のゴブリンどころか魔物ですらない鹿もマトモに討伐出来なかった。

 一人じゃ何も討伐できない俺は、隣村の同い年で顔馴染みの奴らと偶々街で会い、チームに加えて貰えたんだけど……

 今日がチーム戦三日目で、俺だけ戦果なし…どころか、足を引っ張って余計な仕事(俺の護衛や討ち漏らしの討伐)を増やしていた。


 だがっ!コイツらに見捨てられたら俺は野垂れ死ぬか借金奴隷のどちらかになってしまう!

 プライド?んなもん前世に捨ててきたぜっ!


 ガバッ


「頼む!必ず強くなって、必ず役に立つから!」


 今日の討伐依頼を終え、街に帰っていつもの酒場でクビを宣告された俺は、土下座をもってこの危機の回避を図った。


 必ず必ずなんていう奴って信用ないよね?


「悪いな。俺たちも必死なんだわ」

「ごめんね。でも恥ずかしいからそれはやめて」

「チッ。プライドも無いのかよ」


 当たり前だよな……







「はぁ…」


 溜め息しかでねぇ…

 街の外壁(魔物避け用の壁)にもたれ掛かった俺は、財布の中を確認する。


「銅貨四枚でこれからどうしろと…」


 この世界の通貨かは知らないけど、この国の通貨は銭貨・銅銀金・白金貨とある。全部十枚区切りで上がっていって、銀貨一枚が1000円くらいの価値って感じかな。物によるけど。


「だいたい魔力が目に集まるタイプってなんだよ!

 普通手に集めるだろうがっ!

 もしくはサ○ヤ人みたいに全身にオーラを纏うか」


 魔法が使えない事は知っていたけど、討伐者登録する時に無料(ただ)だから検査してもらったんだ。

 そしたら俺の魔力は目に集まっている事が判明したんだけど…


 魔力が目に集まる体質の人は、魔物や人の強さがわかったり、風魔法のように視認しづらい魔法を見極めたりする事が出来る様になるらしい。

 ・

 ・

 ・

 いや!その前に戦う術をくれよっ!


「はぁ…ほんと溜息だけはいくらでも出るな…」


 溜息は幸せが逃げるなんて、前世ではよく聞いたモノだけど…すでに幸せポイントゼロの俺から逃げる幸せはない!……はぁ。


「はぁ…アホらし。食べられる草やキノコでも探した方がマシだな…」


 仲間(寄生先)を無くした翌日だが、人は食べないと動けない。

 俺は魔物に怯えながらも、なけなし装備のナイフを片手に街の外に出ることにした。










「ひぃぃっ!!?」


 俺は絶賛魔物に追われている。

 何で冷静なのかって?

 そりゃあ…死を覚悟してんだよ…


 追って来ているのは、ホーンラビットと言われる名前の通り角が生えたウサギだ。

 こちらもゴブリンと並び、最弱に数えられる魔物の一種だが、もちろん俺の方が弱い!





「ぜぇ…はぁ…な、なん、とか、撒けた…な」


 息を整えながら周囲を確認する。

 良かった…ここに魔物はいないようだ。


「ここは…どこだ?死に物狂いで逃げて来たから迷ったな…」


 周囲は木が乱雑に生えていて、人の手が入っていないということくらいしかわからん。つまり森の深くにいるという事くらいしか判断できなかった。


「とりあえず、水が飲みたいな…」


 強制的に始まったマラソンのせいで、喉がカラカラだ。

 帰る方角もわからない事だし、じっとしてても何も始まらないからとりあえず歩こう。




「おっ!川だ!」


 魔物から隠れ進む事10分程。目の前に小さな小川を発見する事ができた。


「ぷはぁっ!生き返ったぁ!死んでないけど」


 水を飲んで、少し冷静になったところで恐怖が襲って来た。


「…強い魔物はいないよな?そもそもどの魔物も俺にとっては強敵だけど…あっ!!」


 知らない場所に来て、帰り道もわからない。

 そんな恐怖の中にいた俺の視界の中で、見慣れたモノを見つけた。


「マジックマッシュルームだ…街で売ればそこそこの値段が付くけど…」


 街が何処にあるのかわかんないんだよな…


 マジックマッシュルームは焼いて食べる魔力が少量回復する素材(食用キノコ)だ。

 ヤバい幻覚を見せてくれるアレでは決してない。


「勿体無いけど背に腹はかえられないよな…そもそも生で食えんのか?」


 街の近くで食材探しをするつもりで来たから、火おこしの道具も持って来ていなかった。装備以外は宿に預けたままだ。宿と言っても雑魚寝専用の安宿だけど。


「もう少しで日が暮れるな……野宿もした事ないけど、ここでこのキノコを食べないと明日は確実に生き残れないな。よし…パクッ」


 何故かわからないけど、鼻を摘んでキノコを齧ってみた。


「モグモグ。ん。ゴキュ。食える。つーか、美味い」


 腹が減っているからか、普通に美味しかった。

 味はほどんどないけど、優しい香り?がした。


「なんで火を通して食べなきゃいけないんだ?」


 キノコはそういうモノなのか?

 料理の知識がないからわかんないな。


 一先ずこのキノコが食べられる事がわかった俺は、右手に残ったキノコを綺麗に平らげる事にした。



「ふぅ…足りないな。でもこれで生き残れるかも。・・・うっ。なんだ?…いたっ!?目がっ!?」


 キノコを食してすぐに異変が起こった。


「痛タタタタッ!?」


 メッチャ目が痛い!?


「み、水!川だ!」


 バシャバシャ


「ふぅ…助かった…まだ少しズキズキ痛むけど、ここが川の近くで良かった…」


 川の水で目を濯ぐと痛みが治まってきた。


「なんだったんだ?…ん?なんだ?あそこ…青白く光ってるな」


 川から顔を上げた俺の視界の片隅で、青白いモノを捉えた。

 森の一部が光っている?


「ま、魔物じゃないよな?」


 ビビりまくっているが、あのキノコだけじゃ育ち盛りの俺の腹を満たしてはくれなかった。

 もしかしたら俺の知らない食べ物の可能性がある為、光の元へと確認に向かうことにした。


 馬鹿かもしれないけど、お腹空いてたら仕方ないよね?





「えっ?魔法陣…か?」


 光っていた場所は元いた場所から50mくらいしか離れていなかった。そのお陰ですぐに着いたんだけど、何だこれ?

 前世のゲーム内でよく見た魔法陣が俺の目の前に存在している…


「魔法陣ってこの世界にあったっけ?」


 魔法が使えないから知識もないんだよな。でも、そんな存在があるなら小耳に挟んでいてもおかしくはないよな。

 青白く光を放つ魔法陣を眺めていると、俺は更なる驚愕の事実に気付く。


「読める…英語だ…『recovery(リカバリー)』回復…で、いいのかな?」


 魔法陣に何故か英単語が記されてあった。

 その魔法陣は地面に書いてあるように見えるけど、よく見たら少し地面から浮いていた。


「こんなの聞いた事ないぞ…そもそもこれはなんなんだ?本当に魔法陣なのか?」


 よく分かんない…

 ゲームなら、回復してくれるところ?かな?


「よし。入ろう」


 馬鹿だと思うだろ?

 馬鹿なんだよ。


 だって、入ったらこの空腹感がなくなるかもしれないんだぜ!?


「決めた!俺は空腹とはおさらばするぜ!」


 目の前の青白く光る魔法陣は凡そ直径二メートルの真円だ。

 俺はその魔法陣(ひかり)に飛び込んだ。

簡潔に纏めたいのですが、能力がない…


よろしくお願いします。

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