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TUONI ~闇を被った死神~  作者: 穀潰之熊
At Doom's Gate

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2021年5月29日16:34 永葉県大桑村大桑研修センター


 瑩はかろうじて、栄輔の肩を借りて逃げ帰った。

 春香と弥生は蒼白した顔面で彼女を出迎えた。


「何があったんですか?!」

「……緊急事態です」


 瑩を春香に預けると、栄輔はかつての正門を閉ざした。

 状況は定かではないが、反射的に弥生はそれを手伝った。


「何なんですか、あの人達。管理人さんも、さっき戻ってからどこかへ行ってしまって……」

「正直、本官にもわかりません。ただひとつ確かなのは……彼らがまともじゃないって事だけです」


 門の向こう、表情がかろうじて窺える距離で、暴徒達は動きを止めた。

 彼らの顔にあるのは、先ほどまでの怒りと憎悪ではない。


 決して大きな口では語れないが、嫌がらせが見事成功してスッキリ気分爽快と言わんばかりな。

 そんな陰湿で歪んだ笑みを一様に浮かべていた。

 耳栓なしの発砲で耳鳴りを感じていなければ、栄輔にも彼らの笑い声が聞こえていたことだろう。


 この光景を目の当たりにした弥生は、詳しく聞くまでもなく納得した。


「助けは? 助けは来ないんですか?」

「駐在所とパトカーの無線が破壊されました。電話はどうです?」

「繋がりません。今のふたりは、状況を確かめるために降りていたんです」

「そうかぁ……」


 無線は破壊され、電話も通じない。

 南を見れば、今も高速道路の高架を車が走っている様子が見えるというのに。

 人の気配があっても、この異常な状況は外に届かないのだ。


「となると、直接村の外へ助けを求めるしかありません」

「そんな……」


 研修センターから集落もとい、県道へ繋がるルートはひとつだけ。

 正気を失った人々が封鎖するこの道しかないのだ。

 少なくとも、突破は名案とは思えなかった。


 拳銃のシリンダー弾倉を開放する。

 装弾数は5発、38口径のしょっぱいリボルバーだ。

 皮肉にも、これが先ほどの少女を救ったのだが。


 銃身の下にあるエジェクター(排莢)ロッド()を奥から手前に向けて軽く押し、弾倉内の弾を浮かせる。

 なかでも、尻にあたる雷管に撃針痕(小さな穴)がある空薬莢を引き抜く。


 こうして生じた空席に弾丸を詰めていく。

 これがリボルバーで弾が半端に残った時の装填だ。


「その、弾はあるんですか?」

「……ええ、問題ありません」


 最近多発していた地方強盗団への対処として、駐在所に保管される実包は多めに支給されていた。

 駐在所でそれを全て持ち出してはいたが、十分な量とは言えない。


 もし暴徒を全弾一発で仕留めることが出来れば、もしかしたら足りるかもしれない。

 もちろん、これは道沿住民に限った話である。

 他の近隣集落でも似たような状態ならば確実に足りない。

 化け物? 想像する余力さえない。


 栄輔の銃の腕は、そう良くない。

 さらに地方の駐在所勤務とあって、訓練の機会はさらに遠のいていた。

 あのヘッド・ショットは、ちょっとした奇跡だったのだ。


 装填を終えると、弾倉を閉鎖する。


「とにかく、今は対策を考えないと……」


 思考はまとまらない。

 状況もさっぱり掴めない。

 しかし彼には、そう言うより他なかった。

◆限られた武器、相手は未知数───

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