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少しして、獄介が戻ってきた。
「ちょっと、電気が通ってないみたいですね。すぐ良くなると思うので」
などと、瑩達を落ち着かせるようなことを言ってみせた。
しかしそれはおかしい。ならば、倉庫の照明は何だと言うのか。
「でも、そこの電気ついてますよ?」
「ソーラーパネルがあるからね。日中の陽射しが強かったら、一晩は十分賄えるんだ」
なるほど、それならば問題はないだろう。
しかし顔面を蒼白にしたままでは、説得力がない。
「なにかあったんですか?」
「えっ」
明らかに尋常でない様子を感じ取った瑩は質問をぶつけた。
この反応がまた露骨だったが、やや間を置くと、彼は口を開いた。
「電話回線も、ダメみたいで」
「電気が通らなかったら、電話も繋がらないんじゃ?」
「いや、ここは避難場所の公共施設だから、電話回線だけで通話できる固定電話があるんだ」
光回線でなければ、通話に必要最低限の電力供給は電話線のみで行える。
過疎地である大桑村でも、災害時などはそれで問題なかった。
しかし双方が使えないとなると、線そのものに異常が発生した可能性があった。
「この施設だけの問題……ということはありませんか?」
「どうでしょう。それは降りてみないと」
その推測は、スマホの電波が届かない時点で怪しかった。
電波を発するアンテナは、少なくともこの施設が管理しているものではない。
瑩は出入り口から外を見渡した。
多目的ホールと旧校舎、それぞれから線が延びている。
その先には電信柱。もちろん、途切れてはいない。
恐らく線に問題はない。ならば、原因はここよりも上流にある。
「大丈夫よ。そのうちどうにかなるから」
弥生は生徒を安心させたかったのか、あるいは本心からか、能天気なことを言い出した。
常識的に考えて、彼女がそんなことを言える状況ではない。
「先生……電波が届かないのに、どうやってJVFから連絡受けるつもり?」
「……あっ」
自分の車が壊れていることは、完全に頭から抜けていたようだ。
「じゃ、下まで様子見に行ってくるので、待ってて下さい」
さすがにここは動かないと、クレームが入って自分の職が危うくなる。
こういう時に機転が効く獄介は駆け足でホールを飛び出した。
倉庫の備品には、用途がよくわからないが木刀が含まれていた。
何やらへこみや欠けが見受けられるそれを手に取る。
瑩はそれを片手に、ホールを飛び出した。
「えーちゃん!?」
その形相は尋常ではなく。
友達の春香や、指導する立場であるはずの弥生ですら、彼女を呼び止めることは出来なかった。
◆一体なぜ木刀を───?




