表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TUONI ~闇を被った死神~  作者: 穀潰之熊
At Doom's Gate

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/214

2

 正門をくぐると、左手にはかつて体育館だった多目的ホール。

 正面には、宿舎兼会議室となる旧校舎があった。


「へー、意外とオシャレだったっぽいね」

「うん。昭和に建てられたって言うから、アニメとかに出てくるやつだと思ってた」


 ところどころ色の落ちた黒い外壁に、赤茶色の瓦屋根。

 木造といえば木造ではあるが、“いかにも”といった風体ではない。

 残された塗料は、立地の割にそこそこ洒落た外観をしていた時代を想起させた。


「管理人室どこー?」

「職員室を使ってるって話だから、入ってすぐでしょ」


 まずは管理人に挨拶し、宿舎とホールの下見をしなくてはならない。

 昇降口でスリッパを借りると、管理人室はすぐ隣だ。


「えーちゃん。あれ見てみ」


 春香の指す看板を見上げる。

 元は職員室と書かれていたであろう看板。

 管理人室とあるが、見るからにシールを上から貼っただけのものだ。


「雑じゃない?」

「重箱の隅突かないの」


 合宿に乗り気でない春香を宥めつつ、瑩は戸を叩いた。

 トントン。少し待つが、反応はない。


「いないのかなぁ?」

「まさか。先生が昨日連絡したって……」


 宿舎にするにあたって、校舎では多少改築が行われていた。

 その最たる例が、廊下と教室の間にある窓を壁にした点だろう。


 プライバシーの保護と耐震強度補強を理由とした措置だが、これは管理人室も例外ではない。

 廊下から部屋の様子を伺うことが出来ない。

 さてどうしようか。瑩は何気なく引き手に指を掛けた。


 すると、思いの外簡単に戸が動いた。


「開いてる……」


 このまま立ち往生するのも癪だ。

 ふたりは視線を交わすと、管理人室の戸を開いた。


 そこは管理人室というより、一個人の居室だった。

 ベッドに机や椅子、電子レンジと冷蔵庫。それにエアコン。

 生活に必要な家具が一通り揃っている。


「ふぎぃっ……」


 そして、男が一人。

 机のラップトップパソコンと向かい合い、唸りながらキーボードを打ち込んでいた。

 耳にはヘッドホン。なるほど、娯楽も揃っているというわけだ。


「はぁー……」


 呆れた様子を隠さない瑩はずかずかと男に歩み寄り、ロックの旋律が漏れるヘッドホンを取り払った。


「わっ、あっ?!」

「あの! 今日見学に来た永葉南学園の者ですけど!」


 覗くつもりはなかったが、PCの画面はツリッターだった。

 それに興味はない。彼女はすぐに管理人へ視線を戻した。


「ああ、申し訳ない。少し議論が……白熱してて」

「遅れてすみません。車が故障してしまって」


 互いに過ぎたことは仕方がないと、瑩は謝罪した。

 そもそもの話、車のトラブルでパニックを起こし、連絡を怠った彼女達にも非はあるのだ。


「僕はここの管理人をさせてもらってる、腹谷(ハラタニ)獄介(ゴクスケ)。よろしくね」

「永葉南二年の鬼武瑩です。それでこっちが……」

「伊藤春香でーす……」


 なにやら、さらにテンションが低くなった春香。

 違和感を覚えたが、それで話の腰を折るわけにもいかない。

 瑩は髪の薄い中年に頭を下げた。


「えっと、車が壊れたんだって? 大変だったねぇ、JVFには連絡した?」

「はい。夕方になるかも、とか」

「実はこの村、小さいけど修理工場があるんだ。もしかしたら、何か出来るかも」


 実にありがたい話だ。

 春香はもちろん、瑩も現代人。

 この時代から見捨てられた土地に、意味もなく長居などしたくはない。


「本当ですか? 先生の車だから何とも言えないんですけど……」

「先生は車にいらっしゃるのかな。このまま待つのもアレだから、先に下見済ませておくかい?」


 獄介は明らかに不慣れな笑みを浮かべてみせた。

◆怪しいおやぢ───

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ