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TUONI ~闇を被った死神~  作者: 穀潰之熊
At Doom's Gate

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2021年5月29日 永葉県大桑村


 永葉(ながは)大桑(おおくわ)村。

 小張県との県境に近く、かつては街道沿いということもあって宿場町として栄えていた。


 それも、遠い過去の話。

 当時の街道の名残である県道の利用者は地元住民ぐらいなもの。

 大多数は新たに建設された高速道路を通り、眼下に広がる村を一瞥すらせず通過するばかり。


 小高い丘に築かれた大桑小学校も、廃校となってからそれなりの年月が経っていた。


「えーちゃん、どうしたの?」


 少女、鬼武(オニタケ)(エイ)は気配を感じた。

 ほんの一瞬間だが大きく、そして邪悪な気配だった。


 近頃は、そんなことがよく起きる。

 これもいつも通り、思い過ごしに違いない。

 頭を振ると、瑩は同級生に視線をやった。


「ううん、なんでもない。多分気のせい」

「なにそれ。そう言われると気になるじゃーん」


 同級生の伊藤(イトウ)春香(ハルカ)とじゃれあいながら、ひび割れたアスファルトの坂を登る。


「ここの坂、持久走に向いてそう」

「えーっ。真夏にこんなとこで走ったら死んじゃうよぅ」


 彼女達は永葉南学園剣道部の生徒だ。

 そんな彼女達がなぜ、学園から離れたこの静かな村に訪れたのか。

 それは極めてシンプル。合宿の下見である。


 廃校となった大桑小学校。

 村の役場はこの広大なだけの土地と設備を、どうにか役立てないかと考えた。

 そこで思いついたのが、合宿施設としてのセカンドライフだった。


 外部への移動手段が自動車か週一回のバスのみというゴミみたいな交通の弁と、商業施設がコンビニしか存在しない貧弱経済、高齢化でセックスという娯楽さえ失った村というより限界集落。

 あるのは、農作業で身体と考えだけは頑丈な老人達と、不純物にすら目を向けられない事で維持される無計画に豊かな自然。

 この見放された土地は、外界から隔絶した空間を要する合宿や研修の舞台としてピッタリだったのだ。


「ねぇ、やっぱり車が直るまで待とうよぉ」

日本車両連盟(JVF)の人、夕方になるかもしれないって言ってたでしょ?」


 JVFの人間は暇ではない。

 いつもどこかで事故がある。

 人の少ない田舎となれば、なおのことである。


 支部のない過疎地への出張ともなれば、到着も遅れる。

 不幸にも、彼女達は下見に来たタイミングで車の不調に遭遇してしまったのだ。


「ほらついた。大したことないでしょ?」

「ぐへー、部活辞めよっかなぁ」


 坂を登り切った先。

 大桑小学校の正門は開いたまま、来訪者の到着を待ち構えていた。

◆平和で閑静な村───ここで何が起こる?!

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