表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TUONI ~闇を被った死神~  作者: 穀潰之熊
Thou shalt not commit adultery

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/214

35

 幹線道路から離れた位置にある小さな花屋。

 恐らく個人経営の店舗で、店先ではそこそこ高齢と見える女性が商品の手入れをしていた。


「ちょっといいですか」

「はい、なんでしょう」

「実はこの辺りでスマホ、落としたみたいで……」

「ああ、あれ! ちょっと待ってね」


 曲がった腰で、足早に奥へと向かっていく。

 当然、これは知樹が仕組んだ策だ。


 警察は事態が落ち着けば犯人グループが持つスマホを押収したがるだろう。

 知樹とて、警察に拘束されず事態を収められるとは思っていない。

 尋問した犯人から奪ったスマホも、調べればすぐに見つかる。


 そこで慶太のいる廃工場へ向かうまでの間に、閉店間際だったこの花屋の前で奪ったスマホを落として(・・・・)おいたのだ。

 当然、店員しか気付けないような場所を狙って。


 犯人が通ったのならこの店も調べられたかもしれないが、はっきりと通ったのは知樹だけだ。

 事件の中で浮いた存在である自分ならば、警察の捜査も遅れると踏んだのだ。


「あった! あったよ! いやー、よかったね。ここで落としちゃってさ」

「ありがとうございます」

「ああ、でもね……」


 受け取ろうとする知樹に対して、店主は条件をつけた。


「一応、ロックの解除くらいしてくれる? 疑ってるわけじゃないんだけど」

「もちろん……」


 想定の範囲内だ。

 元の持ち主にロックを解除させた際に、パスキーは盗み見ている。

 店主の目の前で『01−10−24』。生年月日を入力する。


 ホーム画面では野球選手がバットを振りかぶっていた。


「確かに。ごめんね、疑うようなことして」

「世の中には、ろくでもない輩がいるんで。当然っすよ」


 彼女を騙すような真似をするのは、知樹としても心苦しかった。

 しかし、警察がまともに動けない現状で指を咥えて待てるほど、彼は大人しくなかった。


───本当に申し訳ないけど、これも正しいことのため。いいじゃないか、人は傷つかないんだし。


 非常に困ったことに、彼を動かしているのは曇り多き義憤なのだ。


「それじゃ、ありがとうございました。なんか……いいことあったら、花、お願いします」

「あはは、ありがとねぇ」


 頭を下げると、自宅に向けて歩き出す。

 知樹の目当てはスマホにある地図アプリだ。


 テレグラムの履歴は確認するまでもなく、肝心な部分は削除済みだ。

 知樹はもちろん、警察でも削除されたデータを復元するのは難しいだろう。


 しかし、少し考えてみよう。

 犯人達(彼ら)は、目的地を暗記出来たのだろうか?

 スマホのパスキーを生年月日にするような人間に?


 どこかに横着()がある。

 知樹はほぼ確信していた。


 地図アプリ。これはスマホに標準搭載されている代物だ。

 施設名や住所を打ち込めば、大体の場所へ案内するナビ機能もある。

 そして何より、過去検索した履歴も記録されるのだ。


 知樹の読みは当たった。

 過去の履歴にある大半は施設名(・・・)での検索にも関わらず、最新の記録は名気屋市西部、海部(かいふ)町の住所(・・)を検索していた。


 詳しく調べると、そこはかつての部品工場。

 現在は廃業し、建物だけが貸し倉庫として残るばかり。


「見つけた」


 ここが単なる受け渡し場所で、ハンナはいない可能性がある。

 徒労に終わり、警察から睨まれる結果に終わることも十分あり得る。

 しかし、実態の見えない相手を追うというのはそういうことだ。


 ついに見つけた一本の糸。

 糸を切らないよう、切られないように。

 なにより、ハンナを傷付けさせないため。


 最善を尽くすため、知樹は一度帰路に着くことにした。

◆目標捕捉───

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ