8.嵐山へ 前編
特に寄るところも無いので来た道をそのまま戻って京都駅に到着した。嵐山に行くにはこれがまたややこしいところにある「嵯峨野線」に乘らなくてはならない。しかもホームが33番線となっていて、いかに京都駅に発着する電車が多いかを物語っている。京都タワー側の改札から入れば改札を入ってひたすら右に進むと嵯峨野線のホームにつく。あいにく俺は奈良線からの乗り換えなので少々遠い。かなり人が多いようで色んな人とすれ違った。
地元では確実に見ることの無い33番線という文字。都市なのだなと思わされる瞬間でもあるのは俺だけではないはずだ。
(なんか学生多い?)
なぜだか制服姿の若者が多い気がする。今の時刻は12時半くらい。下校には早いのではないか。短縮日課なのか、中間テストだったのか。知る術は無いので答え合わせはできない。
そんな若者を尻目に俺は電車を待つ列に並んだ。
「まもなく電車が到着します。離れてお待ちください」
音声がスピーカーから流れた。その後すぐに電車は到着して俺は乗り込んだ。少し変わった席の造りなのかもしれないと感じる。車両の前と後ろにボックス席が設けられている。山手線などでは有り得ない光景に少々興奮したのでさっそくボックス席へ着席した。1人ですけど。
(なんで車両前後にボックス席があるんだ)
不思議に思いながら、こちらも知る術は無いので答えは永久に謎のまま。ゲームだったらブチ切れてますけどね。疑問に思ったことが一生分からないゲームなんて嫌だ。折角の伏線回収が明かされないまま終える感覚に近いと言えばゲーマーはわかりやすいだろう。幸いにも俺はゲーマーだが現実脳とゲーム脳は切り替えて生きているので「ヤバいやつ」にはなっていない。
(ボックス席は景色が見えやすい。1人で乗るには実は結構いいのではないか)
嵯峨野線は京都の真ん中をひたすら北上して途中から西に曲がるので、京都の中心部を窓から拝めるのだ。所々登場するお寺などだけでなく、都市部としての騒々しくも活気がある姿が見事にマッチしている。お寺が街の一部として完全に溶け込んでいるのが伺える。
(ん〜素晴らしい)
電車の景色というものも見るのは面白いもので、スマホを見てデータ社会に没頭するのも楽しいけどもそれは通勤や通学にして、こういう所に来たら是非車窓から景色を眺めて欲しい。嵯峨嵐山までの約20分間ずっと景色を見てるわけではないけども。もちろん俺だってスマホも見るが普段電車に乗る時よりは何倍も景色は見ている。