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28.永観堂

(さて、入るとするか)

 

 永観堂禅林寺は総門を入ってから観光バス用の駐車場などを経て入口へと繋がる。この入口は少々驚かされる。

 

(小さっ。えっ?)

 

 受付がもちろん設置され、そこで拝観料を支払うわけなのだがその受付がめっちゃ小さい。広めの電話ボックスかと思うくらい小さい。小屋くらいあれば快適だろうが、本当に狭そうなので中の人はどう思ってるのか気になる。

 

「拝観お疲れ様です。600円です」

「はい」

 

 なんでもっと広いもの用意しなかったんだろう。その電話ボックス型受付を過ぎて俺は永観堂の観光を開始した。

 

(広ーい)

 

 確かここも紅葉になると赤化粧して美しくなる場所だったはず。それは秋にならないと見頃にならないので今はどうでもいい。

 

(浴室…)

 

 入ってから左に目を向けると「浴室」がある。世にも珍しく、浴室が観光スポットになってるお寺だ。浴室だから見たら「覗き」になってしまうのかと男達はビクビクするかもしれないが、今は使われていないので合法的に風呂を覗ける。多分男風呂だろうが。

 

(風呂…というかサウナ?)

 

 我々が思い浮かぶような風呂はそこには無い。石の部屋に座るところとかがあるので一見サウナ部屋に見える。水をかけ流したりする場所はあるので、シャワーの無い時代からすればここが体を洗う場所なのだろう。湯船は見落としがなければ多分ない。説明の書いてある看板があるが「うんちく」を読むのがあまり好きでは無いので読まない。こういう所の説明はとにかく長い。

 

(読んでもよく分からない)

 

 ちゃんと知りたいなら読むべきなのだろうが、めんどくさい気持ちが勝ってしまう。なので、このまま浴室を後にして観光を進める。

 大玄関に行くとそこで内部を見学出来る。この内部がまた迷路みたいで面白い。順路が書いてあるので迷うことはないが、順路が書いてなかったら迷うこと間違いない。

 俺はここで靴を脱ぎ、内部の見学を開始した。ちなみに帰りもここだ。

 

(あ、これあれだ。言葉で伝えるの難しいやつだ)

 

 内部に入ると最初に庭園を見ることができる。枯山水ではなく、木々からなる庭園だ。ここまではいいが、ここから先は廊下や橋を渡ってお堂を移動する。際立った特徴のあるものがあまりないので言葉で表現するのは至難の業。

 

(めっちゃ綺麗なんだよな)

 

 永観堂は何が綺麗なのと友達に聞かれて「行けばわかる」と答えたことがある。魅力はとても高い。お堂が3つあり、それを順に巡るのがこのお寺の拝観順路。それぞれのお堂には仏像や煌びやかな装飾を施された銅像などがあり、仏教らしさを強く感じることができる。

 最初に訪れているのは「釈迦堂」。庭園や襖などが見られるらしい。

 

(庭が1番気になる)

 

 これまで枯山水庭園を多く見ているので木々や池からなる庭園を見ることは物珍しさを感じる。入ってすぐにあり、360度全方位から観察できるのでそこも魅力が高い。その後襖などを見て次に御影堂へ。

 

(狭っ。でかっ)

 

 お堂とお堂を繋ぐ橋を渡って御影堂に来たが、この御影堂はやけに大きい。建物としてもかなり大きいのでメインのお堂なのだろうが通路が狭い。通路というよりも廊下という言葉の方が近いかもしれない。お堂には扉が設置されており、入室するには決められた扉から入る必要がある。お堂にはそこそこ人がいたのでお賽銭だけして次のお堂阿弥陀堂へと向かった。

 

(あぁここめっちゃいいわ)

 

 御影堂から観音堂へと向かう際に規則的に並べられた石垣と木が絶妙にマッチしている景色がある。絵として二次元で見るにはもったいない立体感。影、奥行き、日差し、水の反射など多くの要素が詰まっているのではなかろうか。こういった細かなところに気付けるのもまた1人旅の楽しさ。ここを抜けるとエレベーターが現れる。

 

(これまた珍しい)

 

 散々言っているので慣れてしまっているだろうが、このお寺もまた斜面に作られている。山の麓なのだろう。ここからは急な斜面に沿って移動するので、急な階段を上ることが必須となる。誰でも登れるようにエレベーターが作られているのだ。もちろん俺は階段だ。

 この階段には2つ道がある。左に行くルートと右に行くルート。右が阿弥陀堂へと続く道で左は開山堂へと続く行き止まりの道。普通に右に行って正規ルートに乗るのも面白くないので一度左にいくことにする。

 

(不思議なくらい曲がってるな)

 

 直線的な階段ではなく、かなり曲線を描いている階段。なぜこのような階段にしたのかは不明。登りきると狭い廊下を進み開山堂があるが開いていない。しかもこれだけしかない。

 

(え、これだけ?)

 

 仕方なく戻ることにしたがいい発見をした。先ほど上ったこのうねっている階段。上から見るととても日本建築を賞賛したくなるような滑らかな曲線美だ。木材でここまでの滑らかさを見る人に思わせるのは素晴らしい。これは写真を撮るだけの価値を俺は感じる。

 

(いいものを見た)

 

 満足して阿弥陀堂へと向かった。

 阿弥陀堂も仏像などが置かれているのでお賽銭をして少し休憩したのち、先ほどの大玄関へと戻っていった。

 

(あれぇ。今日は今のところほとんど言葉発してなくね。)

 

 大玄関に戻って靴を履いている時に俺はふと思った。1日目も大して言葉を発した記憶はないものの、特に今日は喋っていない気がする。1人旅なんてこんなものだが、1か月くらい1人旅をすると喋り方を忘れるのではないだろうか。特にご時世的にマスクをしているので表情筋も使わない。いやはや、喋らなくなるのは怖いものだ。

 

(境内見るか)

 

 出口を出て左へ進んだ。進むと「多宝塔はこちら」という看板はある。所要時間は5分らしい。

 

(長くね)

 

 5分かからないだろうが平均すると5分なのだろう。興味はあるので行くとする。

 裏道のような道を抜け、御影堂を渡った際の橋の下をくぐった。男の子としてはこういう裏道は好奇心をかきたてる。そして、すぐに階段が現れた。

 

(うわ、階段長くね)

 

 見た目はかなり階段は長そうだが上るしかない。意を決して階段を上り始めた。

 そこそこ急ではあるものの上れない程ではなさそう。そして誰もいない。まぁ仕方ないものかな。

 

(あ、さっきの開山堂だ)

 

 先ほど内部を回ったところの外を這うような作りだ。面白い。

 このまま上り続けると多宝塔が出てきた。階段を上ったかいがあり、景色は素晴らしい。京都を一望できる。なぜ多宝塔と言うのか不思議だとは思うが、多分お宝に関係あるのだろう。考えてもわからないので満喫して下ることにする。参拝をして階段を下り、多宝塔の看板まで戻った。

 

(ここを左か)

 

(いや、ここ迷路か)

 

 境内には整備された美しい自然美が私たちを出迎えてくれるが、なんせ道が多い。真っすぐに進むと幼稚園があることが伺える。お寺に隣接している幼稚園はたまに見るので珍しいとはあまり感じないが、厳かな雰囲気のお寺で急に可愛らしい装飾の幼稚園が出てくるとなんか面白い。

 

(お寺っぽさがない)

 

 幼稚園なのだから当たり前だな。出口を目指すために極楽橋と呼ばれる池にかかっている橋を渡った。このまま出口へ向かうために進んでいるが本当に道が多い気もする。

 

(方向音痴には厳しいか)

 

 順路があるから問題はないでしょうが、この広さの場所が紅葉で赤く染まった時どうなるのか是非見てみたい。

 

「お疲れ様でした」

 

 境内を抜けて出口に戻り永観堂を後にした。

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