表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/39

14.二尊院

 二尊院までの道は来た道を戻ればいいので簡単だ。傾斜を下がりきって歩いていると少し古めの純喫茶らしき建物が出てくる。普通は入らないだろうが、俺は前回なぜかここで昼食をとった記憶がある。物凄く地域感が漂う雰囲気ではあったものの、一応観光客用に運営しているのだろう。そこではカレーを食べた。カレーは普通に美味しかったが、カレーを食べてまずいと思ったことはないので食レポとしての正当性はなさそう。気になったら来てみるといい。おばちゃんが出迎えてくれる。さっきは通り過ぎたが、今度はちゃんと開けた場所で曲がって、二尊院の入口へと向かう。

 

 二尊院の入り口である総門に来たが、どうやら修学旅行生がいるのだろう。引率の先生らしき人物が2人いた。修学旅行のしおりらしきものを持っているのでそう判断したが、大方間違ってはいないはずだ。

 

「あいつらまだ見てんすかね」

「そろそろ出てくると思いますよ」

「集合時間に遅れたら俺らが怒られますからね」

「その時は走りましょう」

 

(ほう、修学旅行中の先生ってのはこんな会話もしてんのか)

 

 どうやら班行動に着いてきたらしく、集合時間があるらしい。俺の想像するに、集合場所は京福電鉄の駅だろう。最後竹林を巡って駅に到着するルートか。駅までは遠いし少々道は厄介なので気を付けてほしいが大丈夫なはず。最後は先生が道を調べてくれる。

 

(時間があれば天龍寺にも行くのではないかな)

 

 そんなことを考えながら俺は総門から入っていった。早速拝観料500円を支払い、中に入り込んだ。

 

(二尊院といえばこの参道だな)

 

 総門を抜けるとまず目にするこの参道。どうやら100メートルほどあるらしいが、真っすぐ一直線に伸びているのである。両脇には木々が植えられているので、さながら木のトンネルとでも表しておこうか。紅葉の名所として知られているので両脇は秋になると赤く染まる。木々と参道を魅せるために余計なものは何も置かれていない。ただただ幅が広くて長さの長い砂利道が続いているのだ。言い方が悪かったかもしれないがしっかりと褒めている。「静寂」を生み出しているのだ。聞こえてくるのは葉っぱの擦れる音や風の音、そして俺が歩いている砂利の音。それ以外に聞こえてくるものは何もない。この視界良好な広々とした参道でその音しか聞こえないなんてある意味作られた奇跡だろう。

 

(心地よい)

 

 これぞ本来のお寺だと言わんばかりに静寂を作っている。

 ここはとても写真を撮るのが難しい。広すぎてどこを写せばいいのかわからない。参道の最初か最後から道全体を撮るくらいしかいい方法は思いつかないしこれ以上の方法は知らない。だからこそ写真で素晴らしさを表現するのは難しい。

 

「そろそろ出ようぜ。先生待ってるし」

 

(お、先ほどの先生達のところの生徒さんか。先生達が首を長くして待ってたぞ)

 

 俺はその生徒達とすれ違う形で先に進んだ。この参道の先が二尊院なのでまだ二尊院にお参りしたとは言えない。なんせこの道は長いのでどうしても来るとこの道の印象が残ってしまう。それでお参りするの忘れることの無いように注意。お賽銭入れずに帰るのはなんか罰当たりな気が俺はするので。

 

 無事に参道を渡り切って二尊院に足を踏み入れた。

 

(ここは敷地が広いので探索したくなるが右奥はお墓がほとんどなので行かない方がいい。とりあえず参道と二尊院に訪れればいいだろう)

 

 俺はお賽銭を入れて二尊院へのお参りを完了した。二尊院は上がることができるので入口で靴を脱いで中に入った。小さいながら魅力ある庭があるのでここで腰掛けたりしているだけでも心地よい。

 

「カコンッ」

 

 鹿威しがあるようで竹と石がコンタクトした音が響き渡る。中々鹿威しの音を聞く機会なんてないので物珍しさを感じている。ちなみに、御朱印が欲しい人は靴を脱いで直ぐのところにお守りなどが売っているところがあるのでそこで頼めば貰える。もちろん俺は持っているので今回は見送りさせて頂く。

 

「カコンッ」

 

「カコンッ」

 

「カコンッ」

 

(神聖な場所でこんなことは言ってはいけないが言いたい。うるさい)

 

 鹿威しの頻度が高いので何回も「カコンッ」という音を聞いている。数回聞く分には心地よい音だが何回も聞いていると飽きてくる。罰当たりなのはわかっているが、邪念として頭に「うるさい」という言葉が浮かんでしまったということにしておこう。

 

(まだまだ修行不足)

 

 こう思っておけば罪悪感なくなるだろう。これは邪念だと思っておけばいかにも自分の非を認めて改善しようとしているかがわかるので。うるさいと思った時点で失礼極まりないので反省はする。休ませてもらっている身なので贅沢は言ってはいけない。ましてやお寺ですので。

 

 一応見れるところは全部見た。ここでも一眼レフを持った人が写真を撮っていた。やはり写真家からすると京都はいい撮影スポットなのだ。俺の趣味が写真であれば1つのお寺にかなり長居するのだろう。

 

(写真が趣味の友達にオススメしておこう)

 

 そう思いながら靴を履いて二尊院を出た。参道をまた歩くのだがこの参道は少し坂になっている。なので坂の上であるこちらから参道を見下ろすというのも綺麗だ。坂の下と上で違った顔を見せるのもやはり写真を撮る際にオススメしたい理由。2種類撮るのも面白いかもしれない。秋には沢山の人が訪れて人でごった返してしまうので、ゆっくり見れないだろうが一度は見てみたいなと思う。どれだけ真っ赤に染まるのか気になる自分がいる。雪が降っても面白そうだ。参道が雪化粧で真っ白になればそれもまた美しい。真っ白の絨毯を歩いて二尊院へとお参りするなんておとぎ話の世界みたいではないか。雪の日はこれなさそうだが、動画とかで見れるならば確認したい。

 

「ありがとうございました」

 

 そう受付から言われて総門から出た。もう先ほどの先生2人はいなかった。生徒達と合流して集合場所へ向かったのだろう。


何故かこの後急に疲れが出てくる俺氏

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ