9.嵐山へ 後編
「次は二条、二条」
どうやら二条についたようだ。京都の中心部に近いので数多くの人が乗ってきた。乗り換えの駅なのだろうか。それともただ利用者が多い駅なのかは不明ではあるが繁盛しているのは確かだ。席も埋まってきたようで普通は団体席であるボックス席にも着席する人が現れた。果たしてどんな人なのだろうか。
(お、)
まさかの大学生くらいと思われる女性2人組でしかもかわいいと来た。彼女もいない悲しい男子大学生ではあっても一応男子大学生。可愛い人がいれば流石に意識します。気持ち悪いなんて思わないでください。健全な男子大学生なんです勘弁してください。
ですが、もちろんそれで声をかけるような人ではないのでご安心を。そんな超陽キャなわけないし度胸もない。自己肯定感の低さは自覚している。そういう人間なのだ俺は。
ナンパなんてしている奴の神経がわからないし、なんでそこまで自信があるのだろうか。本当に不思議に思うが、友達曰く頑張って強く見せれば強く見えるらしい。そんなものなのだろう。私には到底理解できない。
(目を合わせると気持ち悪がられそうだから音楽聞いて外見てよう)
改めて言おう。俺はこういう男だ。俺自身をあちらが意識するわけないのはわかってても俺が意識してしまい、その状況から逃避する。世の中の陽キャではない男子はわかってくれるのではなかろうか俺の気持ちや考えが。人は自分が思ってるよりも環境に溶け込んでいる。自分では気になることでも他人からすれば「気付かなかった」の一言で終わるのが当たり前の世界。変に意識しても相手は何も感じない。無意識の場合と何ら変わりがないのだ。本当にワンチャンス狙っているのならば受動的になるのではなく自分から声をかけるなり努力した方がいい。俺には関係ない話だが。
(さてと何の曲聞こうかな。旅だし。ゆるキャンの曲がいとおかしかな。やはり一期の曲の方がいい。とりあえずそれ聞くか)
自問自答の結果、亜咲花さんの「SHINY DAYS」に決定。これはアニメゆるキャン第一期の主題歌なのだが、ゆるキャンとは登場人物たちが「キャンプ」をする話で、よく旅をしている。なので、この状況ではベストマッチな選曲なのではなかろうか。俺の中では旅に1番合う曲だ。とりあえず俺はイヤホンを装着して音楽を聞きながら電車に揺られることにした。
「嵯峨嵐山~嵯峨嵐山」
(お、そろそろか)
危うく寝かけていて音楽を聞き始めて太秦あたりまで記憶が曖昧だ。
(結局曲聞けてないし)
この状況にベストマッチな曲を選んだにも関わらず意味がなかった。もうそれはどうでもいい。とりあえずこの電車から降りた。
俺何してんだ一体




