眠り姫
『眠り』
人は夜になれば勝手に眠れるのだろうか。
よし、寝ようと思って床につくのか、それとも携帯やら読書やら、ドラマを観ながら自然と眠るのだろうか。
おかえり、今日も無事に戻ってきたな。
透明な悪魔が私の元にやってくる。
留守の時もある、それは私には予期せぬ出来事である。
暗闇が押し寄せると、心臓が張り裂けそうだ。
胃は膨張して腸が激しく波打つ。
船での長旅をしているような目眩と耳鳴り。
これは序の口であり彼の影響は世界を染める。
私は白い賢者に助けを求めている。
白い賢者は秘薬を調合してくれるのだ。
薬が効くか効かないかではない。
白い賢者達は決まってこう言う。
私達に出来ることはここまで、後は
自然に身を任せるしかない。
秘薬は時にして危険を招く。
後は神に祈ろう。
過去に秘薬を大量に処方されていた時期に
私は我を失った。
透明な悪魔に蝕まれていたのだ。
眠りについて間もなく叫びながら目覚めた。
漫画やドラマのワンシーンのように。
ひい、ひい、ぎゃーーーっという雄叫びをあげたことに寝ながらでも勘づいたのです。
これは透明の悪魔の悪戯にすぎない。
そして、黒いケルベロスが指先に噛み付いていた。私は更に悲鳴をあげた。
ケルベロスは白目を向き私の小指に穴が開くほど
噛み付いていた。
指先からは真っ赤な血が流れていた。
傷はブラックホールのように深く飲み込まれてしまいそうな気さえした。
消毒しなければいけないと思いすぐさま手当をしていると黒いケルベロスがこう言った。
相棒、すまんな。あちらの世界に引きずり込まれそうだったから少々荒い方法だったけどこれしか策が無かったんだよ。わかってくれ。
ナイトメアから救うにはこれしか無かったんだよ。
そう言いながら黒いケルベロスの大きな瞳は輝きを失い申し訳無さそうに下を向いていた。
止まらない赤い血を見ながら2人で身を寄せあった。
どうやら黒いケルベロスも透明な悪魔と同居しているのだ。
先程も述べた通り、黒いケルベロスの噛み付いている表情を一瞬見ることが出来た。
白目を剥き、歯を剥き出しにまさに地獄の番犬のような唸り声をあげていたのだ。
私達は何かに取り憑かれている。
そう透明な悪魔だ。