万事休す
行商人は、いつの間にか逃げていた。
そして、次に狙われたのは当然カエデだった。回復役は狙われる。非常に頭がいい魔物ということはわかった。
その事を見越して私は火の矢で、カエデに向かう糸を阻止した。
「カエデ逃げて!」
私は叫んだ。
カエデは逃げる。そして、私は追撃の糸を火の矢で阻止する。
しかし、ふとした瞬間阿修羅蜘蛛の位置がカエデが逃げる方向に移動していた。回り込まれていた。
早すぎてわからなかった。
当然、間に合わずカエデは糸でやられる。
そして、次は私の番だ。当然だ。こんなにも邪魔をしたのだから。
しかし、糸は全然違う方向へ飛ばされた。
そう。ハヤテの居る所だ。戦闘中は姿を見せないハヤテだが完全に居場所を特定されていた。
もう、私の一人になった。あとは全員動けない。
このパーティーになって初めての任務で死ぬことになるなんて思わなかった。
私がもっと強ければ……こんな糸直ぐに焼き払えて……こんな蜘蛛も一瞬で燃やすことができれば……
そう思い私は弓を引いたーー
ーーそれからの記憶がないーー
ーー気づいたら、阿修羅蜘蛛は居なくなっていて全員に絡まっている糸は無くなっていた。そして、全員気を失っていた。
私も満身創痍だった。
「おい!君たち大丈夫か?」
そこに現れたのが、キモリ町冒険者ギルド隊長のタカシさんだ。
「はい……」
私はなんとか声を出した
「何と闘ったかわからないが凄い傷だ。この地面の炭の痕は火属性の魔物……しかもかなりの……」
私は気絶した
そして、気づいたらベッドの中だった。
「やっと、アズミ目を覚ました!」
目の前にはノリがいた
「あれっ? わたし……」
「あのあと阿修羅蜘蛛にみんなやられたんだけど、タカシさんが助けてくれたんだよ。なんか、目の青い阿修羅蜘蛛は突然変異らしく、ランクはAランク扱いの強さらしい。」
「そうだったんだ」
「でも、タカシさん曰くあの地面の炭から見るに阿修羅蜘蛛はSランクレベルの強さの火を使ったんじゃないか? って言ってた。」
「そんな火の技は見たことないよ」
「そこなんだよな。あと、タカシさんが来た時には阿修羅蜘蛛が居なくなっててアズミだけが意識があったって……何か覚えてないか?」
「ごめん。私も何も覚えてないの。」
「そっかー。わかったーー タカシさーん!!! アズミが目を覚ましましたー!!」
「本当かい!?」
タカシさんがやってきた。
天然パーマで顎髭が少しボサボサあり高身長だ。
こんな人に運んでもらったのかと思うと少しだけドキドキする。
タカシは、マオと闘ったアツシのパーティーの魔道師です。