レルアン・ブリタ13世、呼び出した異世界人のスペックに唖然とする
"青き竜"、ブリタ王国が建国以前から生きており、ブリタ王国周辺諸島を縄張りとするドラゴン、幻獣と呼ばれる存在、圧倒的な存在
巨体と力、そして魔力が全てが圧倒的であり、到底、ただの人が太刀打ち出来るような存在ではない
とは言え、ドラゴンという種族は、人に危害を及ぼすような、無秩序な存在ではない。むしろ、ブリタ王国は建国時から友好関係である
ドラゴンと呼ばれる種族が望むのは闘争…勇者たる、強者との戦うことが彼らの存在意義、彼らの種族の生きがいである
「つまり、あのドラゴンは、カズヤを強者と認めた…いや、見抜いたということ?」
「そういうことになるが…少なくともドラゴン族についての伝承の文献によるものだ、少なくとも青き竜がブリタ王国の人間や騎士を、強者と認めたことはないから、彼が戦いを挑むなんて始めた」
ユリに、青き竜とドラゴン族について説明をしたが…改めて、青き竜の存在が強大であることを目の前の光景を見て思い知られ…同時に、カズヤの強さも思い知らされる
青き竜のブレスは、何もかも凍てつく冷気の魔力、周囲の森林が凍り付く…そう、魔力なのだ。カズヤには通用しない、金属を纏っている…否、体の一部が金属である彼には
なら、肉弾戦はどうか…驚くことに二人とも互角の戦いを繰り広げていた、巨体なドラゴンの背丈を余裕に越えるジャンプし、顔や腹に拳や蹴りを叩き込む、その威力は青き竜がよろめくほどである
ドラゴンと互角の力を持つ人間とドラゴンの戦いは、周囲の森林をなぎ倒し、所々凍り付いていた
激しい戦い繰り広げている、青き竜、カズヤも、どちらも息があがっていた
この二人の間に、割って入れないが、ユリとルナと衛兵たちと一緒に離れた場所で彼らの戦いを見守っていた
「…ユリ、君に弟は一体に何者なんだ!?ドラゴンと互角に戦える身体能力なんて…君たちの世界の人間はみんなあんなのか!?」
「いーや、私達が特殊なのよ、相当ね…カズヤはさらに特殊な部類かもね。カズヤは、サイボーグなの」
「…サイ、ボーグ?」
「まあ、改造人間って言えばいいかしらね…あの子の左腕と両足は義手と義足で、脊髄と背骨の一部が機械…金属的な機械で構成されている。普段はリミッターをかけてるけど、外せばあんな戦いは可能ちゃ、可能になる」
やけに冷静というか、慌てていなかったのは、カズヤの強さを誰よりも理解していたからだのか?
「そんな呑気なことを言ってる場合か!?なぜ奴は魔術を使わない!?」
先程まで気絶していたルナは、ユリとカズヤの事情は知らないから、魔術を使えるものだと思っているようだ
「そんなもん使える訳ないじゃない。私達は魔術や魔法なんて無縁な人生を送ってきたんだから」
「はぁ!?貴様ら"不能者"なのか!?」
「ルナ!!」
ルナが、彼女達に対して侮辱と差別する単語を吐いたことで咄嗟に…反射的に彼女を睨みつける
「も、申し訳ございません!!レルアン様!!つい…」
不能者という言葉は、最大の侮辱行為に当たるが…そもそも魔術と魔法の概念のない異世界の人間であるユリは、不能者という意味を、よくわかっていない反応であった
一方、青き竜とカズヤの戦いは、お互いに息を整えながら対峙し、様子を伺っていたが…青き竜はここで臨戦態勢を解き、カズヤも構えを解く
〈なるほど…見事だカズヤ。我の見立ては間違いなかったようだ〉
「そりゃどうも、ドラゴンさん。満足したのかい?」
〈ふふふ…ここで殺してしまっては惜しい面白い勇者だ。魔術も魔法に頼らずに、己の力と人の知恵で作り上げたモノがここまで…レルアン王子よ!!〉
「は、はい!?」
急にこちらを会話に巻き込んできたことで、間抜けな反応をしてしまう
〈この者ら、カズヤとユリは丁重に扱い、守ることを誓え。蔑ろな扱いと、彼らを殺害したら…このブリタ王国を、リィサースの地図から消えることになる〉
割と冗談になってないこと言う、青き竜…その凄みと迫力に、頷くことで返事をするしかなかった。言葉が出なかった
国王である父上や決定権、大臣達の意見より、この青き竜の機嫌のほうが最優先なのだ
〈無論、ただと言わんさ。貴様らにとっては我が一族、幻獣の体は喉から手が出るほどの価値があるようだな?〉
青き竜は、自らの鱗と皮の一部を剥がし、口から折れた牙を数本吐き出す
〈ほとんどは、カズヤに折られたモノと、ダメージを受けた部分だがな…貴様らの魔導マシンはそれを加工して素材にするのであろう?せいぜい役立てるがいい〉
青き竜は翼を広げ、大空に羽ばたき出す
〈カズヤ!いずれまた死合しようぞ!さらば!!〉
青き竜は大空の彼方へ、飛んで行った…残ったのは災害が起きたかのような、なぎ倒されり凍り付いた森林と、青き竜が手向けた、ドラゴンの素材であった
「な、なんとかなったのか…?」
とりあえずは、生きているようだ…あの青き竜の力を振る舞った地で
「レ、レルアン様…い、いかがしましょうか?」
衛兵たちは、こちらの指示待ちである。こちらも色々ありすぎて、頭の整理が追いつかないが…何とか整理がついたので指示を与える
風の魔術による、城への伝達、素材の確保と回収を衛兵たち任せるように指示を出した…その間、ユリは、カズヤの金属の手足の様子を見ていた
「どう姉さん?問題はないと思うけど?」
「まあ、無理はしたからバラしてみないと…が、特殊合金製なのに、生命体相手に少し凹んでいるわね。ほら、拳と指の部分」
「あー…ホントだ。やたら硬かったからな…あのドラゴンの体」
「多分、皮膚というか、あの鱗がやたら強固なのね…興味深いわね」
ユリの興味は、青き竜の素材に目を輝かせていた…ホント、この異世界人は一体なんだな…魔法と魔術という概念にないのにも関わらず、単純な身体能力と彼らの有する技術…異なるとは言え、あちらの方が技術が進歩しているというのか?
「レルアン様…先ほどは…」
ルナは、申し訳ないような感じでこちらに伺ってくる…おそらく、先ほどのユリ達に対する暴言についてだろう
「…先ほどの発言は不問に処する。2度と私の前で、不能者という言葉は使うな…そして彼らは丁重に、食客として扱う、いいな?」
「…かしこまりました」
やや不服か、複雑な感情であるような表情をするルナだが…青き竜の言う事となれば、無視できないというのも理解しているはずだ
再び、サィルバインとつないだトレーラーで城へ向かう…さてはて、父上と大臣達にどう説明したものか…頭を抱えながら