レルアン・ブリタ13世、異界人召喚に成功してしまう
ついに、ついにこの日が来たかと…ブリタ王国の外れの小さいな…ホントに小さな島の洞窟の祭壇上
期待を胸に抱いてこの場に、僕と彼女は来た
「いよいよですね!レルアン王子」
「ああ、後は、君をこの儀式で相応しいフォーミュラナイトしてみせるよ、ルナ・マリナ」
とんがり耳と、綺麗な白髪のハーフエルフの騎士…ルナに"魂継ぎ"の儀式を受けて貰うためにここに来たのだ
異界の世界から、フォーミュラナイトとして高い能力を持つ魂を呼び出し、対象にその魂が持つ技量を受け継ぐ
この僕、キャスタメット帝国の諸国、ブリタ王国第一王子、レルアン・ブリタ13世は子供の頃からの夢がある
かつて幼少期は、フォーミュラマドマシンのリィサースグランプリレースの華やかな栄光を飾っていたが、現在は衰退してしまったブリタ王国を、もう一度リィサースグランプリレースで栄光を手にする為に
生憎、僕は運動能力には恵まれず、フォーミュラナイトとして力不足であったが、魔術を操る魔力には恵まれ、そして知識をつけてきたのだ…幼少期からの夢と、この国の王子としての使命としてでも
ルナを儀式の祭壇に立たせ、魂継ぎの儀式が始まる
魔術陣が輝きだし、周囲の大気中に漂うマナも美しく緑の光を放ち始める…順調であった
ルナも、目をつぶりながら、僕を信頼するかのようにその身を委ねるように祭壇に立ち続ける
実に順調そのもの…後は、儀式者が望むイメージを思い浮かべる
(このフォーミュラマドマシンを操るのに卓越した者の魂、このブリタ王国を再び栄光と革命を起こすような者を)
その時、異変は起きた。魂継ぎの儀式は何度も見たことはあるし、手順も間違えいないのは断言できるのだが、魔術陣が異様に輝き始めた
「レ、レルアン様!?これは!?」
流石のルナも驚ろく、周囲が緑色に輝くマナと魔術陣が、黄金のような強い光を放ち始め…そして、強い光と共に、その二人は現れた
『痛ったぁ…な、なにが…』
視界が開くと、祭壇上に、ルナ以外の人物が二人いた…一人は女性で、痛がってる素振り
そしてもう一人は、ルナに覆いかぶさるように…というより、ガッツリ、ルナの胸に、顔をうずくまっていた
「きゃぁぁぁぁ!?」
事態に気付いたルナは、その男を突き飛ばした
『痛たたた…なんか、物凄く心地が良かったような…って、ここどこだ?なんで、こんな洞窟に?』
『和也、アンタ大丈夫?』
『ああ、大丈夫だけど…アレ?なんで姉さんがここに?オレは学校で、姉さんは引きこもって、家にいたはずじゃ?』
『ええ、薄暗い部屋でゲームをしていたはずなんだけどね…』
二人の男女は、こっちに気付いていないのか、そっちのけで会話をしだす…しかもこの国とは異なる言語で…これは、極東の大陸の、アマテラス帝国に似ているような…
「き、貴様ら!一体何者だ!どうやってこの魂継ぎの儀式の洞窟に入ってこれた!?ここはブリタ王家とその関係者以外は立ち入れないはずだ!」
顔真っ赤に、ルナは男の方に聖剣を抜いて、その刃を彼に向ける
『な、なんだ!?女騎士!?コ、コスプレ…?』
「ふざけているのか!わけのわからない言葉で、私を愚弄するか!?」
激昂して、頭に血が上っているルナは、彼に切りかかろうとしてた
「やめるんだルナ!!」
静止も虚しく、ルナはブリタ王家の代々伝わる、フォルブリタを彼に振るう
そう、王家に代々、最も強い騎士に継承される聖剣フォルブリタだ。最高の硬度と切れ味をもつ剣だ
彼は、振り降ろされる聖剣の刃を驚きはしても、臆することなく、左拳でへし折ったのだ…王家の聖剣を意図も容易く
虚しく、折れた音と、刃が地面に落ちる
『あ…つい、反射的に…』
ルナも勿論だが、この僕もその信じられない光景で唖然としていた…だって聖剣だよ、それが容易く、人のワンパンでへし折られるのだから
「き、貴様!!よくも!!」
ルナは、炎の魔術を放ち、彼を燃やそうとした
『う、嘘だろオイ!?』
咄嗟に両腕で防ぐが、火炎が彼に襲い掛かった…のだが、彼の腕の服装が少し燃えた後、魔術の炎は打ち消された
「な、バカな!?私の魔術が!?」
そして、彼の腕は露わになる…右腕は肌色だったが、左腕は鈍く、ややグレー寄りの銀色をしていた…光沢のある人の腕ではない何か
「「き、金属の腕だと!?」」
ルナと、思わず口を揃えて彼の金属の腕に驚く…なぜ炎の魔術を打ち消したのはその金属の腕が原因だ、金属は、魔術と魔法を弾き、打ち消してしまう…
驚いて、再び唖然としていると、彼女は動き出した。それも騎士であるルナが反応出来ない速度で
『私の弟に、何すんのよ!!』
ルナの腕を掴むと、そのまま魔術陣の床に叩きつけるように投げ飛ばしたのだ、一切容赦なく
激しい衝撃とも、魔術陣の書かれた床が亀裂が走り、祭壇に叩きつけられたルナは白目を剥いて失神した
「る、ルナ!?」
すぐさまルナの元に向かおうとしたが、彼女はこちらを睨む睨む…体が動かなかった、その気迫と彼女の凄みに押され…だが、ルナを助けなければならないと考え、拘束魔術を彼女に放つ
『な、なにこれ!?』
光の複数の輪っかが、拘束するが…
『姉さん!!』
『うんぐぐぐ…こんなものを!!!』
彼女は、歯を食いしばり、体中に力を入れると…その力に光の輪っかが耐えきれずに弾ける
そして、すぐさまこちらに飛んできて、彼女にマウントポジションを取られ、そして彼女の拳が振り下ろされる
顔の横を掠め、その拳は洞窟の床を陥没させていた、本気で血の気が引いた…この時は本気で生きた心地がしなかった…魔術を使ってるような反応も素振りも無しで、生身でこんなことを出来るのは、人間ではない…
「あ…あ…」
『…もしかして、英語かしら?』
彼女は何か気付いたようで
「これで、言葉を通じるかしら?」
彼女は、僕らの国の言語で喋り始めた。彼女は返事待ちだったようなので、うんうんと頷く
「よかった…さて、アンタは一体何者よ?それにここは?なんで私達に襲い掛かってきたのよ?」
「ここはブリタ王国、魂継ぎの儀式場…僕はブリタ王国第一王子、レルアン・ブリタ13世…」
「お、王子?ブリタ?儀式場?…なんか、わからないことばかりね…」
彼女の顔をよく見れば…いや、自然に視線が顔というより、その美しい瞳に惹かれた…宝石のような二つの左右異なるオッドアイの瞳、黄金と青色の宝石のような瞳
「な、なんて美しい瞳なんだ…」
美しいモノは数々見てきた、芸術品も、宝石も…だが、彼女の瞳はそれ以上の美しさを感じ、思わず口に出さずにはいられなかった
その言葉、彼女も冷静になったのか、こわばっていた表情を緩める
「…どうやら、お互いに事情を話し合うべきかしらね?こっちも整理しないと、頭が追いつかない」
「わかった…美しい瞳を持つ貴女の名前は?」
「ヤギュウユリ、あっちは弟のヤギュウカズヤ」
後々思い知ることになる、これは僕が望んだ最高のフォーミュラナイトの二人の出会いであり、この世界、リィサースの前代未聞の異世界人の召喚をしてしまったのだ