入学式前
もうすぐ入学式が始まる。
華の高校生活が始まるのだ。
俺が通う学校は『雛菊高校』
全国でも上位に入る有名校で偏差値もかなり高く、政治家や社長の子供などが入ってくる。
それにより身分の様なものがある面倒くさそうな学校である。
しかし俺の幼馴染がこの学校を選んだので俺もここに行く事に決めた。
ピンポーン
『はーい』
下から母の声が聞こえる
『あら、いつもありがとう』
『いいえ、好きでやってる事ですから』
誰かの話し声が聞こえる。
ドドドド
誰かが階段を駆け上がって来る。
バン!
扉が開いた。
そして、
「起きろーーーーーーー!」
現在の時刻8時ちょうど
入学式開始9時
ここから学校まで30分
結構ピンチなのだ。
「だから起きろー!」
だがしかし俺は昔から起きるのが苦手だ。
だからこそ時間をある程度自由に使える株で稼ごうと子供ながらに考えたのだ。
「いい加減起きなさい!」
こんな俺だから起こしにきてもらわないと遅刻、サボりが増えるのも当然である。
まぁ、そこは成績でカバーしていたからあまり小言は言われなかった。
「もういい、ここにあるフィギュア、DVD、BD、漫画、小説全部捨てるから」
俺の部屋にビニール袋の音が響く。
「それはやめろ!」
慌てて飛び起きた俺の前には手にビニール袋を握って音を立てている可憐な女の子がいた。
ロシア人のお父さんから受け継いだ銀髪に青い目をしているが日本人好みの美しい顔の女の子、彼女は俺の幼馴染の雛罌粟 花純
である。
このテストのたびに恨みそうになる苗字はロシア人のお父さんが婿入りしたからこうなったのだと聞いた。
彼女は俺の家の横に住んでいて、ほぼ同棲状態になっている。
彼女の家は世界有数の大企業を運営していてこの学校もその企業を継ぐために決めたそうだ。
「聞こえてたなら早く起きなさいよ!もう朝ご飯食べる時間もないわよ!」
「いいよ、朝そんなに食べるタイプじゃないし」
「はぁ、なんでいつも頭が良くて強いのに朝だけはこんなにダメダメなのかしらね」
「おい、ダメダメとか言うなよ」
「もういいから早く起きて着替えちゃって」
「はいはい」
そして俺は服を脱いだ。
「あのさ、さすがにそんなに見ないでくれる」
「別に今更恥ずかしがるような事じゃないでしょ」
「いや、まぁそうなんだけどさ」
この会話から分かるように俺たちは付き合っているし、やる事はやっている。
俺はハーレムに憧れて最初にした事は幼稚園でいきなり花純に『俺と永遠に一緒にいてください』とみんなの前で告白したのだ。
そして花純に『何言ってるの?当たり前だよ』と言われ俺たちは幼稚園生にして付き合い始めもう10年以上付き合っている。
中学時代は思春期特有の気まずさなども一緒に過ごしすぎて全く感じず、距離が離れるどころか性に目覚めた事でより近くなっていった。
雛罌粟家とも家族ぐるみで仲良くしていて、2人の関係はみんなに認めてもらった。
花純の家を継ぐことも俺が億り人になった事で認めてもらった。
だが俺がハーレムを諦める事はなかった。
花純もその事は昔から分かっていたし、花純もアニメが好きでみんな楽しそうだねと言っていたしハーレムに対する嫌悪感などは無いようだ。
俺の親も花純の親も俺が未だにハーレムを目指している事に驚いていて、両家の父は冗談だと思い、母は女の子を大切にして、幸せに出来るなら当人の自由と許してもらった。
そして花純の口癖は『正妻の座を譲る事は有り得ないからね』である。
でも俺は序列みたいにするのは嫌だから正妻とかは決めないと言ったがこれに関して彼女は一歩も譲らず俺が折れた。
「よし着替えたし行くか」
「こらっ、歯を磨いて、顔を洗いなさい。綺麗にしないと新しい子との出会いがないわよ」
「それはまずい」
俺は走って下に降りた。
「はぁ、どうしてあぁなったのかしらね。まぁ、一緒に居られるからいいけど」
8時20分
「行ってらっしゃい。入学式に間に合うようにね。私も後で行くから。それから花純ちゃんは神次の夜ご飯よろしくね私とお父さんは今日帰ってこないから泊まってもいいわよ」
そういう母さんに見送られながら俺たちは家を出て学校に向かった。
「これからはこの道を通るんだね」
「そうだな、中学と反対方向だから変な気分になる」
「慣れないとね」
「だな。それにしても見られてるなー」
「そう?」
「いや、なんで分からん?ほぼ全ての人が花純のこと見てるだろ」
周りに視線を向けると俺たちと同じ制服を着た生徒や仕事へ向かうサラリーマン、主婦の方々がこっちを見ている。
「私は神次にしか興味ないし」
「嬉しいこと言ってくれるな。俺も愛してるぞ」
「ちょっ、恥ずかしい///」
「うわっ、可愛いかよ」
周りからの視線に妬み嫉みの視線が増えた。
「おっ、見えてきたな。体育館に直接行けばいいのか?」
「先にクラスを確認して教室に行くみたいよ」
「同じクラスだといいな」
「そうね」
話しながら歩いて行くと人だかりができていた。
「これじゃクラスを確認するのに時間がかかりそうね」
「じゃあ俺が見てくるから待っててよ」
「そう?ありがとう」
俺は人混みをかき分けてクラスを確認する。
「えーと、あった三組か。おっ、花純も同じかラッキー」
そして花純の元に戻るとそこにも人混みが出来ていた。
「めっちゃ可愛い」
「白い髪が綺麗」
「あの蒼い瞳も美しい」
ナンパだ、俺の彼女がナンパされてる。
女子達に。
花純が女子に囲まれていた、男子でなく女子だ。
男子達は女子に追いやられて花純を囲む人の円の外から花純を眺めていた。
「これクラスを見に行くよりも行きたくない人混みだな。ん?」
人混みの一部が割れた。
そこをイケメンが歩いてくる。
(なんだろう生理的に無理な感じがする。あいつと友達にはなれなそうだな)
「名前聞いてもいいかな」
「雛罌粟花純と言います」
「花純か、僕は鳳 嶺二
よろしくね花純」
「あ、名前呼び捨てで呼ばないでください。そう呼んで良いのは1人だけなんで」
「彼氏かい?なら気にする事はないよ。僕より良い男がいるわけないからね」
(うわー、鳥肌が立ったよ。入学式前にこんな奴がいたら学校始まったらどうなんの。そろそろ助けるか)
花純に近づくと女子達の目線がこっちに来た。
「誰だろう。カッコいいね」
「今のイケメン君に負けないんじゃない」
(恥ずかしいななんか)
「おや?誰だい君は?」
(明らかに馬鹿にしたような見下した視線。うん、無視しよう)
「花純、俺ら三組だって行こうぜ」
「うん、では皆さんまた」
「待ちたまえ何を無視してるんだい?花純をどこに連れて行くんだ」
「花純に呼ぶなっていわれただろ。それに教室に来いって指示があったから教室に行くだけだよ」
「なら俺が送ろう」
「いえ、遠慮します」
「恥ずかしがる事はない。黙って俺についてくるんだ」
そう言って歩き出した、まるで後ろから付いてきてるものと思っているようだ。
「別の道から行こう」
「そうね、なんか鳥肌が立ったわ」
周りの女子まで少し引いていた。
「あれは無いよね」
「恥ずかしい」
「顔はいいけど性格がね」
可哀想だが自業自得だな。
そして俺たちが三組の教室に入ると男子、女子共に花純を見て呆けていた。
「誰あの子」
「めっちゃ可愛いな」
「あんな天使初めて見た」
「校内美人ランキング1位はあの子に変更だな」
(なに?もうそんな順位があるのかまだ入学式すらやってないぞ。
しかしハーレムを目指す身として知らない訳には行かない。……聞きに行くか)
「ここで私を置いて行くのは許さないわよ」
びくっ!
「そ、そんなわけないだろ」
(なんで考えてること読めるんだよ)
「おいお前たちなんで扉の前で固まってやがる」
「「え?」」
振り向くとそこにはヤーさん顔負けの強面の男が立っていた。
「えーと何処の組の人?」
「ん?三組だが?」
「ツッコミ入ります?」
「ボケてないわ!このクラスの担任だ!顔が怖いのはコンプレックスなんだから触れるな!」
「あ!担任の先生か!いや、強面のスーツの男が睨んできたから組の人かと」
「お前初対面で失礼すぎだろ」
「そうよ神次。いくら怖くても、ヤクザでも心はあるのよ」
「お前も可愛い顔してひでぇな!早く席に着け!入学式の説明をするから!」
そう言われ俺たちは席に着いた。
まだ席は決まっておらず自由で良かったので花純と隣同士で座った。
「なんか男子多くない?」
「?そんな事ないわよ。ちゃんと半数は女子でバランス取れてるよ」
「いや、周りが囲まれてるから」
「なんでかしら、この辺の席ってそんなに人気なのかしらね」
「いや、まぁいいか」
きっと花純の周りに座り仲良くなろうとしているのだろう。
「俺の名前は柏木 薫
お前らの担任だ。
えーと、全員いるか?ん?一つ席が空いてるな」
ガラガラ
「遅れて申し訳ない。この僕に免じて許してくれ」
(あのナルシスト同じクラスだったのかよ。花純に付き纏ってきそうだな)
「いや、お前が誰かは関係ない。もう話すから早く座れ」
「はい。ん?花純じゃないか!どうして付いて来てくれなかったんだ」
「誰かもよく知らない人について行くほど尻軽じゃない」
(ん!?尻軽なんて言葉が花純から出るなんて!これが成長というやつか!)
「その目線ムカつく。なに考えてるの」
「な、なにも」
(怖っ、なんで分かんの!もしかして愛の力で心が通じ合ってるのか)
「な、なんか恥ずかしい」
(なに!これも分かるだと!やはり俺たちが愛し合っているからか!)
「全部声に出てるから///」
顔を赤らめ恥ずかしそうに言って来た。
「え?出てた?」
「うん」
(はっず!やばい顔見れない。最後のセリフ恥ずかしすぎる)
「愛し合ってる?何を言っているんだい?花純と愛し合っているのは僕だよ」
(は?こいつが花純と愛し合ってる?)
「あぁ?てめぇなんつった?」
「君に関係あるかい?僕は花純と話したいんだ」
「おい、お前ら、座れって言ったよな?」
『びくっ!』
クラス中の温度が下がった。
「分かったら座れ」
『はい』
「花純、あれが本物だよ」
「珍しいもの見れたわ」
「俺は珍獣じゃねぇ。黙って話聞けよ、頼むからさぁ」
そしてようやく先生の話が始まった。