良く聞こえます。
次の方、お入りください。
はい、今日はどうなさいましたか?
「どうもしないのですが・・・。」
はて?どうもしないとは??
「耳が良いのです。それもすごく。」
良いのであればそれで問題無いじゃないですか。
ここは耳鼻科、病院ですよ。
「いや、違うのです。とてつもなく良いのです。」
だから、それで問題無いじゃないですか。
「私のことを誰かが話すと聞こえるのです。」
・・・。皆、自分の名前は雑音の中、小さな声で呼ばれても聞こえますよ。
何故なんでしょうねあれは、しかし。
「いや、違うのです、50km圏内なら聞こえます。」
は?
「50kmくらい離れていても聞こえるということです。」
???はぁ。
「悪口に限らず、私のことについて誰かが話していると、
くっきりはっきりとその会話が聞こえます。」
はぁ・・・。なるほど、なるほど。
「どうすれば聞こえなくなりますか!??」
えっ?いや・・・。
「耳を塞げば良いというものでは無いようなのです。
何というのか伝わってくるのです、言葉が。」
うーん。なるほど。
「やっと分かって頂けましたね。で?」
で?・・・。
「どうすれば?」
・・・。私の専門外でして。
「ここは耳鼻科では?」
まぁそうなのですが。稀なケースなので。
「専門外ですか?」
はい。しかし、治療法が無いわけでは無いです。
「本当ですか!!」
野本先生を紹介いたしますね。
「専門家ですか?」
はい、権威ある先生です。
「よかった。」
すぐにでも行かれた方が良いでしょう。
「ありがとうございます。助かります!」
いえ、いえ。ではお大事に。
バタン。
テクテクテク。
・・・。
彼はかなり、参ってますね、先生。
そうだな何か辛いことでもあったのだろう。
しかし、野本先生なら大丈夫だ。
素晴らしいカウンセリングをされる方だ。
スタスタスタ!!!
バタン!
「だから!聞こえるのですって!!」
・・・。
・・・。