時の始まり
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命の時計
この時計は時間を止めることができる
使用した本人以外のすべての時が止まる
時の狭間、つまり一秒前と一秒後の間に入ることができる。その代償は止めた時の時間分自分の命の時が削られていく。
普通の時計とは違い反時計回りに周りいく。減っていくに連れて寿命が削られるというものだった。
とある男が自殺をした。
疲れ切った顔、くたびれたスーツにボサボサの髪と髭。
ふらふらと歩いて赤信号を渡り車にひかれ自分の命を終わらせた。
目が覚めたら真っ暗な世界にいた。
ここはどこだ?…………………ここが死後の世界?
なんの光もない。音もない。
ここは何なんだ?どうすればいいんだ?
誰かの声が頭の中に響いた
「まだ時が残りし若者よ
こちらに来るにはまだ早いぞ。自分の命の価値が分からんのか?
ふんっ…まあ価値が分からんから時を終わらせたのか。
一つの余興として貴様にチャンスをやろう
これは命の時計。貴様の寿命の分時を止められる。
貴様の寿命が終わるまで貸してやろう。どうせと終わる命なら止まった世界ではもがいてみせよ。」
ちょっと待てよ何言ってんのか訳分かんねえよ
「万物皆時が終わったらここに来る。その後どうなるかは何者にも分からん。貴様の時が終わりここに来るまで命を学んでこい」
気がついたら俺は交差点に立っていた。
頬を撫でる風、流れる雲、すれ違う人々、ついさっきまでいたはずの普通の世界。
でも何かが違う気がする。
何だ?何かが違う………
変なところに連れて行かれたからか?
死んだはずなのに生きてるからか?
そういやあの爺さんなんか貸してやるとか言ってたな。なんだっけ?
たしか…命の時計だ。時が止められる?
はっ何分けわかんねえこと言ってんだよ。
つーか止め方教えてねーじゃねーかよ。
疲れすぎて幻覚見てたのか?
まあいいや。もう帰ろう………
でも本当に時が止められるなら…どうなるんだろう。
一回だけやれるならやってみたい気もするな…
でもどうやるんだ?なんか昔みたまんがとかじゃ…こう
「止まれ!」
『カチッ…………………………………………』
とか言ってできたりするんだけどんなわけないよ………な
それはまるで写真の中に入って迷い込んでしまったような感覚だった。
空間を切り割いて凍結をさせた世界。
風に吹かれて宙を舞い、地に落ちず浮かんでいるままの木の葉。車から出ている消えることのない排気ガス。マネキンのように動かず語ることのない人間たち。山の頂に立ち、声を発すればどこまでも響き渡るような静けさ。
だが何も聞こえない。声すらでない……
理解するまでそう時間はかからなかった。
『時の狭間』…………
刻々と流れるときの中でその狭間の中に入り込むことだ。
1秒間と次の1秒間の間。
流れることのない止められた時の中。
昔の漫画やアニメとかじゃチート能力を持った勇者とか魔王が次元や空間を割いて入り込む世界なはずなのに…
「戻れ」
止まっていた水が流れるように世界が動き出す。止まっていたのが嘘のように、何事もなかったかかのように動き出す。
体に何か…違和感があるような…いや気のせいか。
多くの人が行き交う交差点…誰もが悩みや不安を抱えながら歩いている……
その真ん中に今俺が立っている
…なんだろうこの湧き上がる高揚感は、ワクワクが止まらないぜ。今の俺なら何でもできる、顔の緩みが収まらねえぜ。
何をしてやろうか…いや何でもできる。
まるで王様じゃねえか。
俺は顔の緩みを隠すようにうつむきながら人混みに紛れ消えていった。