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これを運命といいます  作者: 円寺える


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第25話

「城之内さん、今日は何か用事があるの?」

「ううん、ないよ。どうして?」


放課後、帰ろうと席を立った朱里に声をかけた。

聡里は昼頃に親が迎えに来たようで、教室には一度も戻ってこなかった。


「いや、何もないなら一緒に帰らないかな、と思って」

「うん、一緒に帰ろう」


通りすがる生徒たちが羨ましそうに幸雄の方へ視線を向ける。

少しの優越感を味わいながら、楽しそうに話しかけてくれる朱里を盗み見る。


「そういえば白井くん、聡里ちゃんとは何を話したの?」

「え?」


校門を出た当たりで朱里が不意に尋ねた。

朱里には言えないような内容なので、「あー」「えー」と返答に詰まらせる。


「私の事、言ってたと思うんだけど」

「ど、どうして?朝は詮索しないでほしい、って言ってたのに」

「あれは、聡里ちゃんとのやり取りを詮索しないでっていう意味で言ったの。でももし、聡里ちゃんが私のせいで傷ついているなら、謝らないと…」


聡里に対し、申し訳なさそうに眉を下げる朱里。


「でも、城之内さんは聞かない方がいいかも…」

「大丈夫よ、私、意外と強いから!何を言われようがへこたれないわ」


うふふ、と笑う朱里は幸雄から見て確かに精神的に強そうだ。

芯をしっかり持っていそうなイメージがある。

「だめかな?」と上目遣いでお願いしてきた朱里に負けて、「実は」と朝のことを話した。


気を悪くするかも、と思いチラチラ顔色を伺いながら喋っていたが、どうやら本当に気にしない性格のようで、無言で終始聞いていた。


「そうだったの、聡里ちゃんはそんなことを….」

「聡里も多分、混乱しているだけだと思うけど」

「ふふ、聡里ちゃんのこと大事なのね」

「い、いや、そういうわけじゃないけど。まあ一応幼馴染だし」

「幼馴染じゃなかったら?」

「えっ?」

「聡里ちゃんが幼馴染じゃなかったら、どうしたの?」

「ど、どうって….」


まさかそんなことを聞かれるとは思っていなかった。

聡里は幼馴染であり、情もある。

しかしどのくらい好きかと言われると、聡里の友人である木村よりは好き。という程度だった。

幸雄は元々、他人に対して淡泊だった。寄るもの拒まず去る者追わず、そのスタンスを貫いていた。聡里だって、向こうから寄ってきたので拒まず一緒にいる。

我ながら酷い奴だと思うが、こればかりは性格故どうしようもない。


「ふふ、ごめん。意地悪な質問しちゃったね」

「い、いや、いいよ」


ニヤっと可愛らしく笑う朱里を見てドキっとする。

どんな表情でも可愛いらしい。


だらしなく顔が緩んでいるのを隠そうと片手で顔を覆う。

すると朱里が「あっ」と声を上げた。

何かあるのかと朱里の視線を追うと、横断歩道の向こう側に石でできた階段があった。


「城之内さん、どうかした?」

「もしかしてあの階段、神社に繋がっているのかな?」

「あぁ、うん、そうだよ。あっちは確か、城之内さんの家とは逆方向だからね。行ってみる?」

「いいの?」

「俺は今日予定ないし、城之内さんが良いなら俺も行きたいな」

「じゃあ行こう!」


家とは逆方向の道を指さし、横断歩道の信号が青になると朱里は楽しそうに渡った。


「でもどうして神社に行きたいの?」

「こっちに来て、家やお店ばかりで少し田舎が懐かしくなったの」

「なるほど。学校の周りは結構うるさいからな」

「都会にも神社はあるのね」

「ここが都会っていうのが、変な感じだけど」

「都会じゃないの?」

「うーん、都会なのか?微妙だなぁ、田舎ではないと思うけど」

「なら都会よ。田舎じゃなかったら都会しかないよ!」


想像する都会は高層ビルがたくさん並んで、排気ガスで空気は汚い所だ。

ここの空気は汚くないし、かといってその辺りに田んぼがあるわけでもない。

どちらかといえば、都会寄りになるのか。


石の階段を上り、風が涼しく感じてくると建物が見えた。


「神社だ」


朱里はそう言うと、神社の端に腰を下ろした。


「神社は見なくていいの?」

「いいの。神社は涼む所なんだから」


苦笑して朱里の隣に座った。とても静かな時間だ。


そしてふと、なんだか以前にもこんなことがあったなと思った。

いつだったか、昔、田舎の祖母の家に遊びにいったとき、女の子とこうやって話した記憶がある。もう昔のことで、あまり覚えてはいないが。





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