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これを運命といいます  作者: 円寺える


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第18話

 あれから大丈夫だったかと、ハラハラしながら翌日の教室で彼女が登校するのを待った。

聡里ももう高校生だ。暴力はしないと思う。今まで女子に対して暴力行為を行ったことはないが、胸倉を掴んだりすることはあった。今までが今までだったから、今回も心配になる。


 時計を見ると既に八時は過ぎており、生徒も少しずつ登校してきた。その中に朱里はいない。いつもならそろそろ教室に来る時間だ。

 やはり昨日聡里に何かされたのだろうか。

 そんな不安が拭えない。


「おはよう」


聞き慣れた声で挨拶をされた。


「おはよう、聡里」


 聡里だ。

 制服を着て、鞄を持ち、登校してきた。

 まさかこのタイミングで学校へ来るなんて思ってもいなかったので少し動揺した。


 聡里の顔色は明らかに悪かった。その原因が自分だと思うと罪悪感で胸が痛む。

 青白い顔に覇気のない声。きっと今日の聡里を見た聡里の友人は「何をやったんだ」と問い詰めてくるかもしれない。


「ちょっと話があるんだけど、いい?」


 机に片手を置く聡里。拒否権はなかった。


「分かった、ここでいいのか?」

「向こうに行きましょう」


 背を向けて教室を出ようとするので、席を立って後を追う。

 途中で聡里の友人と目が合ったが、読めない表情でこちらを見ていた。


 教室を出ると迷うことなく聡里は階段裏を目指した。


「で、話って何だ?」

「あんた、城之内さんが好きって言ったわね」

「あぁ、言った」

「....やめておきなさい」


 意味が分からなかった。

 何故今、聡里にそんなことを言われているのか。

 誰を好きだろうと自由だし、聡里にそんなことを言われる筋合いはない。


 偶然だったとはいえ、聡里に好かれているということを知った。

 聡里も、それを知っている。

 今の聡里の台詞は、好きな人が惚れてる女は自分が元々嫌いな女だから、好きにならないでほしいという己の願望を晒しているように思う。

 その思いを読み取ったのか、聡里は慌てて訂正する。


「別に幸雄が誰を好きだろうがいいわよ」

「あぁ」

「あたしが城之内さんを嫌っているから、好きになるなと言ってるわけじゃないわ」

「だったら、何だよ」


 不機嫌さが声に出てしまった。

 しかし聡里は気にせず続ける。


「昨日、城之内さんと話したの」

「知ってる」

「….そう、城之内さんが言ったんだ」

「俺が心配だったから、聞いただけだ」

「….何で、そうやって庇うのよ」


 苦しそうに聡里は顔を歪めた。

 しかしここ最近、目の前の女の子より、今ここにいない女の子を大事に思っていることが判明した。

 聡里はただ小学校から一緒にいるだけの存在だと気づいた。


「でも、城之内さんだけはやめて」

「だから、何でお前にそんなことを言われなきゃいけないんだよ」

「あの女は!!!」


 眉を吊り上げて「あの女」呼ばわりし、声を荒げる。

 聡里は普段から感情的な人間だが、ここまで怒りを露わにしたのはいつぶりだろうか。

 聡里は良くも悪くもはっきり物を言うタイプだ。嫌いな人間がいたら「あたしはあいつが嫌い」と言い、それを本人に言ったりすることもあった。


 その聡里が、別人のように顔を崩し、まさに鬼の形相で話をする。


「あの女は、あたしが築き上げたものを崩しやがった!あたしがここまで頑張ってきて、やっと、やっと...!」

「さ、聡里?」

「運命なんて目に見えないものを信じる馬鹿だと、あたしを罵りやがった!!」

「えっ?」

「ぽっと出のくせに幸雄をあたしから奪いやがって!!ずっとずっとずっとずっとずっと一緒にいたのに!!」


 どうやら感情の制御ができないようで、狂ったように怒鳴り散らす。

 聡里が言っていることは耳に入ってくるのだが、冷静じゃない上に普通じゃない。


「ちょ、聡里、落ち着けって」

「うるさい!!あたしが今までどんな思いでいたか知らないくせに!あの女に騙されてるんだよ!!」


 こんな聡里は見たことがなかったため、急いで携帯を取り出し、聡里の友人に電話をかけた。


「あたしは頑張ってきたのに、何でだよ!!!」


 きっと聡里の友人も、久しぶりに聡里が登校したことで心配しているはずだ。

 顔色も悪かったし、何より教室から出て行くのを不安そうに見ていたような気がする。

 だから、聡里からもしかしたら連絡があるかもしれないと携帯を気にしているはずだ。


コール音の後に「はい?」と返事があった。


「も、もしもし白井だ!聡里がおかしい、今すぐ階段裏に来てくれ!」


 焦ったような声に唯事ではないと察したらしく「すぐ行く」と言った後に通話は切れた。

 携帯をポケットの中に入れ、目の前でブツブツ何かを呟いている聡里を宥めにかかる。


「聡里、落ち着け」

「あたしのはずだったのに、何で、どうして」

「さ、聡里?」

「あんな性格の悪い女が好きなの、あれは悪魔よ、性格がドブネズミのように汚い女よ」


悪口を散々言っている聡里に、幸雄はふと朱理が今どうしているか不安になった。今日登校していないのはもしかして、聡里に何かされたからなのでは。今の状態の聡里を目にすると、人でも殺しそうな勢いだ。狂った人間。明らかに普通じゃない。

 もしかしたら教室にはいるかもしれない、でもどこかで動けずにいるのかもしれない。

 幸雄は一刻も早く安否を確かめるべく教室へ向かいたかった。



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