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これを運命といいます  作者: 円寺える


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第14話

 聡里は小学生のころから幸雄が好きだ。

 そのきっかけはほんの些細なことだった。


 お世辞にも良い性格をしているとは言えない。思ったことはすぐに言い、それが相手を傷つけることだと分かっていても言わずにはいられなかった。

 そのせいでクラスの男子から「やっかいな女子」と思われていた。

 クラス委員長をしていると、男子にからかわれたりいじめられていた女子を徹底的に庇っていた。「なんてことをするの!」と毎回男子に突っかかっていた。


 そんなある日のことだ。

 クラスの男子がとある女子に水をかけたのだ。女子はえんえん泣いて、男子はそれを見て笑っていた。その男子が泣いている女子のことが好きだと知ったのは何日か後のことなのだが、このときはまだ知らなかった。「何やってるのよ!水びたしにさせて、これだから男子は嫌われるのよ!!この子だって当然、今あんたのこと嫌いになったわ!自覚しなさい、嫌われ者!」と、言ってしまった。真っ赤になって怒った男子は聡里を突き飛ばした。そのせいで壁に激突するかと思いきや、聡里の体は守られた。白井幸雄によって。


 初めてだった。男子に守られたのは。

 いつも悪さをされるだけだったのに、白井幸雄は怪我を負うはずだった聡里を守ってくれたのだ。

 今までこれといって目立っていなかったが、この瞬間その男子に心惹かれた。


「やりすぎだろ、怪我したらどうすんだ!」と、男子を怒ってくれた。これも初めての光景だった。男子は男子を庇うのが当然で、女子は女子を庇うのが当然だったからだ。

 そして聡里に「お前も、言い過ぎだ。周りをよく見ろ」と言った。冷静に男子からこう言われたのは初めてで、本当に、何もかもが初めてだった。


 そこから数年、幸雄に恋をしているのだ。



 だから、突然目の前に現れた城之内朱里という女に危機感を覚えた。

 高校生になり、頑張って告白をしようと意気込んでいた所へやってきた、とても可愛い女の子。聞くところによると、幸雄を助けたのだとか。何かしら運命的なものを感じたのは幸雄だけではない。聡里は焦った。

 しかし、こんな美少女が幸雄に惚れることはない。そう自分に言い聞かせたが、どうやら朱里も幸雄を狙っている様子だった。

 表には出さないが、あれはどう見ても狙っている。

 幸雄は気づいていないが、同じ女としてぴんとくるものがあった。


 確信を持ったのは幸雄と三人で朱里の家に行ったときだった。「聡里ちゃんって白井くんのことが好きなの?」と先手を打ってきた。絶対に確信犯だと思った。

 あの場で否定することしかできない。それを分かっていてあの女は言った。そうに決まっている。

 聡里が幸雄のことを好きじゃないと否定したとき、幸雄は安心した顔をした。

 悔しかった。告白をしてもいないのに、振られた気分だった。


 お前は俺の恋愛対象外なのだと。俺はお前に微塵も興味がないのだと。そう言われた気分だった。

 朱里のせいで、告白をする前に結果を知ってしまった。

 あの女は、絶対に確信犯だ。天然を装った悪魔だ。

 なのにあいつは朱里を好きだと言った。性格が悪い女だと注意したのに、それでもいいと言った。どうして。なんで。


 だから、幸雄がいない間に朱里と二人で話をしようと思い、校内の階段の踊り場に呼び出した。


「話って何かな?」


 きょとん、と首を傾げる。わざとらしい。


「あたし、あんたのこと嫌い」


 すると朱里は目を見開いて、その後悲しそうに眉を下げた。


「私、何かしたかな」


 これで何人の男を落としてきたのだろうか。何人の男をだましてきたのだろうか。

 自分が可愛いことを自覚し、容姿の使い道を知っている。


「白々しい!!」


 嘲笑っているくせに。蹴落とそうと必死なくせに。

 幸雄に近づくのに必死なくせに。


「あたしは、幸雄のことが好き。あんたはそれを分かっててあの時あたしに言ったでしょ」

「えっと、何を?」

「白井くんのこと好きなの?って!!聞いたでしょ!あたしがあの場で告白できないのを見計らって、幸雄に恋愛感情がないと見せつけて!!」


 この女は嵌めようとしているのだ。そうに違いない。


「あたしは幸雄が好き!あんたはどうなの!?」


 恐らく、今の自分は想像以上に醜い顔をしている。

 恋をすると人は変わるというが、自分も例外ではない。


 小学生の頃から好きだったのだ。今まで勇気がなくて告白なんてできなくて、素直になれなくて。でもどうしても一緒にいたくて、告白もしたくて、必死に勉強して同じ高校に入った。

 高校生になったら告白をしよう、そう思った。なのに、どうして。なんで。あんたがここで出てくるの。


 幸雄は可愛いなんて言わないのに。顔を赤くしないのに。なんで、ぽっと出の女に。


「わ、私は…」


 朱里が口を開くと同時に、廊下の角から人影が現れた。


「さ、聡里?」


 幸雄だった。



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