あの日をオレは忘れない
目の前に女神さまがいる。
口説き文句や例えじゃなくて、本物の。
背中に翼が生えた綺麗な女性が口を開く。
「何ジロジロ見てんのよ!」
女神さまのイメージ一瞬で崩壊。
「すみません、あまりにも綺麗な方
だったので」
この女神顔を真っ赤にして照れている。
ちょろい奴だ。
「そんな事はどうでも良いの!
もっと、ここは何処で私は誰なのかを聞きなさい!」
この女神面倒なやつである。
「ここは...オレは死にましたか?」
辺りを見回すと見渡す限り真っ白な空間の中に
オレと女神さまだけがいた。
「えらく落ち着いてるわね。
ええ、そうよ。トラックに轢かれそうな子供を
助けて、死んだなんてもんじゃ無いわもっとすごい
死に方よ。」
女神が目を伏せて、肩を震わせる。
(どんな死に方をした思い出せオレ!女神が泣くくらいだ
きっとそれはそれは高潔な死を迎えたのだろう)
思い起こせば生を受け19年。
温泉を掘り当て一攫千金
キャトルミューティレーションされ肉体改造
黒魔術を行使して魔王召喚
現代に復活した魔王を退治し世界を救ったり
等など
いろんな事があったなぁ。
あれ涙が止まらない。
「アタシは女神!ここは死後の世界よ!
アンタの人生は見させて貰ったわ。
壮絶ね、それに加えて最後の死に方が
あんな事になるなんて。ププッ」
違う!
この女神笑ってやがる!どんな死に方をしたオレ!
「で...普通は地獄に行くか天国に行くか
選ばせてあげるんだけど、アンタだけ
特別に異世界に飛ばしてあげる!」
なんて迷惑な女神だ!
「そ、その選択権は..」
「無いわよそんなもの!」
なんて屈託の無い笑顔
殴りたくなっちゃう!
「その代わり、異世界に行くにあたって
特典をあげるわ!一つなんでも望みを叶えてあげる!」
「なんでもですか?」
「なんでもよ!」
「ホントのほんとに?」
「ホントのほんとよ!しつこいわね!
女神に二言は無いわ!」
テンプレでいくと最強の力
最強の武器を求める事だろう...
だがオレは
「女神さまが欲しいです!」
愛の告白をしていた。
これは不幸にも女神に惚れてしまった
オトコの悲しい...
楽しい冒険譚である。