影から現れるもの。
薄暗い広間に一筋の光が降り立つ。
「来たわね」
床に魔方陣が広がると同時に光が溢れ出す。
「たまらへんわ〜。ウチには眩しすぎるわ。」
目を細めると同時に光が広間を埋め尽くすと、次第に光が弱まっていった。
「成功した…のか…?」
光が消滅すると同時に魔方陣も効力を失い、徐々に消失していった。
「…」
「…」
魔方陣が完璧に消滅したが、部屋には何者かが召喚された気配がない。
「…」
「…おい。」
痺れを切らし、活発そうな少女が毛を逆立てて言った。
「失っっっ敗してるじゃねぇかよ!」
「そんなことはない!私の召喚は完璧だったはずよ!!」
魔導師のローブを羽織った少女がムスッとしながら言い返す。
「誰にでも失敗はあるんやから、しょうがないって。」
妖艶な女性はなだめるように言うが、少女はより一層頬を膨らます。
「違うもん…本当に成功してるもん…」
少女は目に涙をため、こぼれ落ちないように必死に耐えていた。が、
「また次がんばろなー」
妖艶な女性のなでなでによって、ダムが決壊した。
「ぢがうもん!ぜっだいのぜっだいにぜいごうしてるんだもん!!!」
「うるせえ!!」
魔方陣があったであろう暗闇の中からゆっくりと漆黒の衣装を纏った青年がゆっくりと姿をあらわした。
泣きじゃくっていた少女も、活発そうな少女も、淫靡な女性も、突如現れた青年を見るや否や、まるで世界が止まったかのように一時停止していた。