始まりのメッセージ
ドゴオォォォォ
ズシャアアァァァ
地を揺るがすほどの鈍い音が鳴り響く。
一人のパンツ一丁の青年が木の棒を片手に如何にも強そうな暗黒の騎士と戦っている。
『これで、最後だぁぁぁ!!』
暗黒の騎士は渾身の力を込めて剣を振り上げる。
「甘い」
パンツ一丁の青年は木の棒で胴を振り抜く。
パキンと言う音と共に振り抜かれた胴はエグリ取られる。
『ヴァァァァ!!…許さぬ!!許さぬぞぉぉぉ!』
叫び声と共に、暗黒の騎士の体が流動する。
暗黒の騎士の体は見る間に膨れ上がり、巨大な竜へと変化した。
『ヴガァァァ。ユルサヌ。死ヲモッテ償ウガイイ!!』
「少しは楽しませてくれよ。」
漆黒の竜は咆哮を上げて飛びかかってくる。
その刹那。
『ヴォォォォ…ナゼダ…ナゼダァァァァ!!!!』
通りすぎると共に、断末魔と共に漆黒で巨大な姿が光の粒となり少しずつ消えていく。
リンッと軽い鈴の音と共にアイコンがポンッと出てくる。
『経験値とアイテムを入手しました』
アイコンをタッチして入手した経験値を確認する。
『獲得経験値:28551
NEXT:0
アイテム:失われし誓い』
「ちっ…」
舌打ちと共に木の棒を捨て、慣れた手付きで人指し指をスライドすると鈴の音と共にウィンドウが出現した。
装備画面を開き、ステータス画面を見てため息をはいた。
「…裸で最弱装備でもこれか。」
完全に成長がストップしたステータスを眺めてぼやいた。
手慣れた動きで装備を整えて決定ボタンを指で叩くと共に装備が変わる。
裸から漆黒のコートに。 腕にはシンプルに装飾された腕輪、ブーツは運動性を持たせた鞣し革の漆黒のロングブーツに。そして腰には、しなやかな刀が現れた。
解放感は消え失せ、先程までなかったほどよい重量感が体にのし掛かる。
メニューウインドウのログアウトアイコンをタッチする間際、ピコン!というSEと共にメッセージマークがウィンドウに現れた。
『アップデート完了…』
ログアウトボタンを押そうとしていた指を止め、すぐさまニュースボックスを開く。
“New”のマークのついた便箋が新しく追加されていた。
すぐさまタップすると淡い光と共に便箋が構築される。
手にとって封を開けると1つの手紙が出てきた。
『我が王国は魔物の進撃によって民や兵達は酷く疲弊し衰退の道を進んでおります。
勇者様、どうか私たちをお助けください。
メメント王国 パーラ姫』
手紙を読み終わるとアイコンが出てきた。
『Yes/No』
「新しいクエストか?丁度良い…」
そのまま指をスライドさせて『Yes』を押すと共に足元に魔方陣が描かれる。
魔方陣から溢れ出る光に包まれながらボソリと呟いた。
「今度は俺を楽しませてくれよ。」
魔方陣の光が消えると共に、青年の姿は消え去っていった。