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うららちゃんはゲームをやらない  作者: ササガミ
異世界より召喚されし巫女
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帰国、そして、(1)

ふう、とアタシは目を開いた。

まぶたを持ち上げると、木で出来てて、白く塗ってある天井が見える。やっぱり全身が重くてダルい。


「うらら様……起きた、のですか?」


ボフェティさんの声だ。ずっと寝てたせいでちょっとだけギシギシきしむ首を動かして、そちらの方に顔を向けた。

前より、また霊格が上がったみたい。ぼんやりとだけど、前よりもわかることが増えてる。


船の中で眠りについちゃったって、感じ?

船に乗った記憶まではある。水面をもたせるためにあっちを終わらせて……えっと……。


「アタシが何日寝てたのかってわかりますか?」


ボフェティさんに手伝って貰いながら、起きて、着替えて、簡単に食事をとった。この神殿じゃあ、もうダーじゃないごはんが勝手に出てくる。ポテトサラダがおいしかったです。


「わたくしが知る限りですと、二日間です」


大した時間じゃなくて、ほっとする。二日なら、船の中で寝て、起きないままだけどとりあえずここまで運ばれた……くらいの感覚かもしれない。


「それで、その……」


ボフェティさんがなにか、言いにくそうにうつむいた。部屋がシン、と静かになる。

隣の部屋から、プールの水の、ちゃぷちゃぷって音が聞こえてくる。


アタシは意識をスッと広げて、プールに貯まった水に流していく。この神殿はそこらじゅうに水路がある。水路の水を通して、アタシはざっくりと神殿の様子を知ることができた。


ネェッロに居たときは難しいことが、こんなに簡単にできる。


レリオがここから一番近い客室にいる。暗い、真面目な顔をしてアラーナさんと何か話合ってる。

違う部屋にウィン……ボールドウィンがいる。ブレンダンと、紙に何か書きながら話をしてる。神官、神官、巫女、アラステアさんは、お告げの部屋にいた。


「申し上げ難いのですが、うらら様からお預かりしていた『ハナチラシミナモ』の剣の部分が錆びてしまいまして……その……形が崩れてしまったのです」


「知ってる」


「ご存知だったのですか!!?」


「うん」


レリオとの繋がりから、元気のもとが入ってきてる。今までに話した人、会った人との繋がりが、うっすらと再現されてるのが感じられる。


アタシの契約者はレリオだけど、アタシとの繋がりはこの王国そのものともできてるんだ。


今の充電量なら……きっと、できるはず。

アラステアさんの望み通り、レリオとの『繋がり』を切る。そして、この王国そのものを契約者にするんだ。アラステアさんは王様なんだから、アラステアさんが契約者って言えなくもない、ハズ。


「賢者で製作者のレリオ様でも修復できなかったのですが……」


「大丈夫。……それでね、ボフェティさん。お願いがあるんだけど」


××××××××


アタシが目覚めたのを知ってるのは、まだボフェティさんだけだ。


ボフェティさんにアタシが起きたことを黙ってて欲しい、そして今日から一週間、だれもこの部屋に入ってこないようにして欲しいってお願いした。

食事と着替えはどうするのかって言われたけど、そういうときの、『ダー』でしょ?


「よいっしょっ!」


一応、鍵を閉めた扉の前に家具を集めて、絶対

誰も入ってこられないようにした。

邪魔されたら困る。


アタシは、大真面目だ。


いち、レリオとの繋がりを切る。

に、アタシに残ったレリオの力を抜く。

さん、水面に『この国そのもの』を取り込む。


よっし。かんぺきな作戦!!


「問題は、痛いってことだけだよね……」


何回も契約者を変えたハズのピニーに聞いてみたけど、そんなに苦しんだことはないっぽかった。


それを聞いたとき、アタシが完全じゃないからかもしれないって思った。アタシには水面に入れるべき、対になる魂を選べなかった。


一応、ブレンダンには聞いたことあるけどさ……断られたしぃ……。


ふぅぅぅぅぅぅ。

すぅぅぅぅぅぅぅ。

ふぅぅぅぅぅぅ。


ああ、やだなぁ。


すっごく痛いってこと、わかってるから、どうしても怖じ気づく。


「なら、やめなよ」


「うわっ」


いきなりかけられた声にびっくりした。

こんなところにひょいひょい出てこられるのなんて、未来から来たアタシしかいない。


未来のアタシ、困った顔をしてる。


「そのまま、レリオを『水面』にしちゃえばイイじゃん」


アタシは首を振る。


「レリオじゃ、ダメ」


「じゃ、いいかどうかなんていちいち確認してないで、霊格の高いブレンダンかアラステアを『水面』にしちゃえば?」


「……それも、できないよ」


邪魔、しないでよね。

そう思いながら、アタシは『花散らし水面』を手元に呼ぶ。空間を飛び越えて、花散らし水面はアタシの手に収まった。ぱしん、と手になじむ。手に触れる感覚が気持ちいい。刃の所が崩れてるとは聞いてたけど、鞘と柄はまだ痛んでなさそうだった。


「ねぇ」


しつこいってば。


どうせ相手はアタシ自身だ。思ったまんまの文句を投げつけてやる。


「うっさい。もう決めたの。だからじゃましないでよね」


「それじゃアタシが困るの!」


悲鳴っぽい声に驚いた。そっちを見たら、ちょっと離れた所に立ってた未来のアタシが、アタシと同じ剣を鞘から抜くところだった。


スラリ、と抜かれた剣にはアタシが見たことのない、不思議な模様が書き込まれてた。


アタシの『花散らし水面』と同じもののハズなのに、未来のアタシが持ってるのは目が離せなくなるくらい、綺麗な剣だ。


「見て」


このアタシは、誰かを『水面』に受け入れた後のアタシだ。


「こんな風にあなたも誰かを選んでよ。じゃないと、アタシは消えることになるかもしれないんだから」


かもしれない、じゃなくて、消えるよね、ぜったい。


わかりきった事じゃん、と言おうとしたけど、それって結局、この未来のアタシと今のアタシが違う人だってことになっちゃう。

すっごく混乱する。


混乱しつつも、アタシは『花散らし』を開く。

未来のアタシに邪魔させないためだ。


剣を抜いたってことは、いつ切りかかってきてもおかしくない。するするとツタが伸びるみたいに、鞘の形が変わって小ぶりな盾が腕の近くに現れる。


アタシは自分から伸びる『繋がり』を切ろうとする、未来のアタシはそれを邪魔をしようとする……奇妙な戦いだ。


アタシはアタシの一部を切ろうとしてるんだ。

今のアタシの方が断然有利なのに、未来のアタシの方が強いらしかった。全然うまくいかない。


「アラステアを水面にしなよ」


ピンポイントの指名。剣に入った模様。

……この人は、アラステアさんを水面に選んだ、未来のアタシっぽい。


でも、でもね、そんな事したら、アラステアさんはこの国の王様でいられる権利を無くすんだよ!?


「そんなの、できるわけないじゃん」


「他の誰かでも、もういいよっ!」


ガギン、と剣同士がぶつかる。当て身、蹴り……ああなんで切れないんだっ!


「誰でもいい、誰かを選んでさえくれたら、アタシは消えないで済むのッ!」


スルリと未来のアタシが生んだ盾が宙を移動して、アタシの剣の軌道を反らした。


「この時代のアタシが消えたら、アタシはアラステアと一緒にいられなくなる」


「そんなの、知らないっ!」


アタシにとって大切なのは『今』だもん。

未来のアタシは消えるかもしれない。でも、この選択を選べば、アラステアさんの望みは叶う。

アラステアさんは、王様として国を導く事ができる。


未来のアタシが一瞬だけ 、視線をアタシから外した。


今しかない。


アタシは盾を鞘の形に戻して投げる。「ガッ」ってヤバそうな音が聞こえた。目一杯投げつけた鞘は綺麗に顎に当たった。ちょっとだけ頭がぐらってなったところを。蹴り飛ばす。


「アタシは今のアラステアさんが大事なの」


今しかない。ためらってなんていられない。

スパン、とレリオとの『繋がり』を切り落とす。

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