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うららちゃんはゲームをやらない  作者: ササガミ
2章 ソカレリル・カレイドスコォプ
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魔法の指輪(1)

ざっぷーんって、アタシを水の中から引っ張りあげてくれたのは、レリオだった。


「あー、もう、全身ずぶ濡れだぁ……」


今。まさに今、アタシ、池の中にいる。どうなってたのかわかんないけど、池は笑っちゃうくらいに浅かった。


ちょっと、やらかしたような空気が漂っちゃってる。

アタシは浅い池の中で座ってるし、レリオはすっごく驚いた顔をしてて、ウィンは気が抜けたみたいに地面にへたり込んでる。

なんか、これって、あんまり見ない光景……って、ヤツ?


うーんと……あっと……心配、かけちゃった、かな?


「うららさん」


……げ。この声はっ!


ちょっと遠くから声がした。高い所だ。

そっちを見たら、いたのはアラステアさん。


今日も美しいお顔ですねっと思わなくもないけど、アタシはアラステアさんの顔がまっすぐ見られない。

つい、なんとなく、目を逸らした。


「……あっ!アタシ、着替えなきゃっ!レリオ、ウィン、ありがとっ!

アラステアさん、失礼しますねっ!!」


だって、アタシ、アラステアさんが苦手なんだもん。

ずぶ濡れなのを理由に、アタシはその場から逃げた。


ずぶ濡れだったから、部屋に戻ったら、アオイとしんちゃんにもすっごいびっくりされた。


しょうがないじゃん!!

……でも、未来のアタシ、よくやった!


レリオに会えたし、アラステアさんからはさくっと逃げられた。

ナイスアタシ!!アタシ、ナイス!!でもできたらずぶ濡れはご勘弁!

……ブーツの中がペッシャペッシャなって気持ち悪い。


すぐにお風呂に入って出て、着替える頃には晩ごはんの時間にちょうどいいくらいかもしれない。


けど、ここも、基本のご飯はダーだけなんだよねぇ……。

なんでメニューがあんなデロデロだけなんだろ。みんなもっと他の物を食べたくならないのかな?

ここはお城ってだけあって、メイドさんに言ってみたら、そのあとからフルーツとかサラダがちょっと、オマケみたいにつくようになったからすっごいマシだけど。


温かくて美味しいのも、食べたい!

……そんな事を思いながら、お風呂から出たアタシはメイドさんに用意してもらった着替えを手に取った。


……ん?


これ、普段借りてる服より、なんか、ゴージャス。

ポスッとかぶって、ウエストをリボンで結ぶ感じだからひとりでも着られると思うんだけど……なんで、ドレス?


リボンを上手く縛れなくて、アタシはリボンを片手に浴室の隣の部屋から出た。廊下を歩いて、アオイがいるハズの応接室のドアを開けた。


「ねー、アオイ、リボンしばってーぇー……」


おうっふ。


まわれー、右!!


アラステアさんがあらわれた!!


なんっかあの人、後光がさす、っていうみたいな、キラッキラの笑顔浮かべてるし。

はっきり申し上げて関わりたくないし。ていうかレリオはいったい、どこだろ。


アタシはくるっと回れ右。

浴室の前室まで引っ込んだ。


なにあの人?何しに来たの?

レリオとか、ウィンとか、アラーナさんとかはなんで一緒に居ないの?


ねぇねぇ、アオイとしんちゃんはどこに行っちゃったの!?


「うららさん、リボンは私が結んであげよう。だから、出てきなさい」


出てきなさい……て……。

行きたくないなぁ。


ドアに鍵をかけて、うーん、と部屋を見回したけど逃げられそうな所も隠れられそうな場所もない。詰んだ。


はぁ。しょうがない。


アラステアさんにリボンを結んでもらうの、もっのすごく屈辱を感じるのは、なんでかなっ!?

本来なら、メイドさんを呼ぶべきじゃないのかなっ!?


「えっと……ありがとう、ございます」


「うん」


にっこにっこにっこにっこにっこにっこ

にっこにっこにっこにっこにっこにっこ

ああ……素敵な笑顔……。キラッキラの笑顔……。

うっわ……関わりたくないよぉ……。


にっこにっこにっこにっこにっこにっこ

にっこにっこにっこにっこにっこにっこ

スルリ、と腕が回されて、腰にリボンが結ばれる。

頼むんじゃなかった。なんか近いし。ああもぅ最悪だっ。


「えっと……アオイと、しんちゃんは?」


天井の模様みたいな升目をじっと見て、アタシはアタシの意識を必死で逸らす。

ムリ。ホントにやめて欲しい、こういうの。


「二人には別の部屋で食事をしてもらっているよ」


にっこにっこにっこにっこにっこにっこ

にっこにっこにっこにっこにっこにっこ

アラステアさんクラスのイケメンだと、爽やか笑顔でもダメージおっきいわぁ……。


「えっと……レリオ、は?」


「彼ならまだ仕事中。話があるから今夜は二人で食事をしよう」


おいで、と言ったアラステアさんが、アタシの肩に手を置いた。


ゾワァっ!!


今、トリハダ立った、絶対、アタシ、今、全身、トリハダ立ってる。トリハダ立ってる!めっちゃ立ってる、すっごいトリハダ!立ってる!


……前に二人でお話したときよりも、やたらと距離、近くない?


お願い、やめて、ホントムリ。離れて。


「えっと……ちょっと近すぎるから、ちょっと離れませんか?……ね?」


ね?とアラステアさんを見上げたら、なんだかすっごく驚かれた。

そんな驚いてる顔も整ってるから、スゴいと思う。

嫌味か。


「わかった。では、着いてきなさい」


廊下を進んで、階段を登って、渡り廊下を抜けて、ごちゃごちゃと進んで、いままでよりももっと、ずっと、ずぅっと、高そうで緊張しちゃうような、豪華なエリアに出た。


アラステアさんが先に部屋に入る。

その部屋からは、街の夜景がよく見えた。


センスが良いってすごくわかる部屋。


部屋の中央に大きな丸いテーブルと、椅子が二個。

テーブルの上には、お料理が用意してあった。


パン、サラダ、スープ、鶏肉を焼いたのに何かのソースがかかったの……コースじゃないけど、これ、ちゃんと、お料理だ。


「ダーじゃない……!」


うわ、ご飯、ダーじゃないご飯、こっちの世界じゃ久しぶりっ!!


そっと肩を押されるみたいに誘導されて、アタシはウキウキしながら着席する。


にっこにっこ笑顔で目の前に座るのは……そうだった。

アラステアさんだった。

アラステアさんとこれ、食べるのか……アラステアさん、綺麗なんだけどさ……なんっかやっぱり……苦手なんだよね……。


ほら、アラーナさんも気を付けろって言ってたし!

実の妹に気を付けろって、なっかなか言われないよ!?


「喜んで貰えたみたいでよかったよ。

……こういったものを、うららさんたちの世界では日常で口にしているそうだね?」


「はい。こっちだと、お祭りの時だけなんですよね?」


でも、ごはんに罪はない。

いただきますって手を合わせて、サラダから食べる。

んーっ!おいしいっ!


「うん……そうだね、ダーに慣れきっていると、この食事はコストも手間も余計にかかっているような気がするよ」


「アタシはダーが簡単すぎる気がしてます」


おいしいご飯、窓から見える綺麗な風景、目の前にはイケメン。アラステアさん、見た目だけならイケメンなんだもん。……ここは置物と思おう。そう、そうしよう。

風景の一部っ!気にしない、気にしない!


カチリ。


アラステアさんがカトラリーを置いた。

穏やかで、優しい笑顔を浮かべて、アタシを見る。


「結婚しようか」


「え、ムリ」



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