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うららちゃんはゲームをやらない  作者: ササガミ
2章 ソカレリル・カレイドスコォプ
44/75

王都に行ってみよう……その前に

うららの機嫌がすこぶる悪い。


怪我人は俺が治療したので、翌朝には王都へ向かうことになった。


うららはずっと、何かの歌を口ずさんでいて、誰とも口をきいてくれない。

いや、アオイとだけは話をしているらしい。


「フクザツな乙女心なの」


アオイは少し困ったような顔でそう言った。


「イライラしてるだけじゃなくて本当に具合悪いのかも……めまいが少しあるみたい」


ボールドウィン様が俺を軽くつついた。


「剣の所有者と、巫女は物理的に距離が近いほうが良いらしい。コルベリ、側に行ってやれ」


俺……フラれたばっかりなんだけどな……。


馬車が止まって、休憩時間に俺はうららのすぐ近くに寄ってみる。

うららは馬車から降りようとしないから、俺が乗り込むしかない。


「……何か用?」


すっごく冷たい目でにらまれましたぁ!


「えっと……具合悪いって聞いたから……大丈夫?」


「ものすごーくイライラしてる」


うららちゃんは木箱に寄りかかって、少し辛そうだった。


「イライラするし、なんかモヤモヤしてるし、頭は痛いしめまいがするし耳鳴りもするし、サイアク」


「大丈夫じゃないじゃないか」


俺は急いでうららちゃんの側に寄っていき、回復魔法をかけた。


今までなら、これで治ってた。

でもうららは首を振った。


「たぶん、そういう事じゃないんだよ。

だからほっといて、お願い」


そう言われたら、余計気になるじゃないか。


俺はうららのすぐ近くに腰を下ろした。


「どういう感じなの?

その……気分とか、体調とか、もっと詳しく教えて」


うららは目を閉じながら、長くて大きなため息をついた。


そういえば、顔色もあまり良くない。


「昨日よりは大分マシだし、しばらく放っておいてよ。ホントに」


それっきり、うららは黙ってしまった。


××××××××


ダルい。ダルいっていうか頭いたい。耳鳴りがすごい。しんどい。


まるで、多い日みたいだ。


気をまぎらわしたくて、思い出した歌をテキトーに口ずさんでたら、アオイが一緒に歌ってくれた。

それはそれでけっこう楽しかったし、ホントに気が紛れてちょっぴり楽になったのに、アオイは変な感じにしんみりした顔してた。


あ、この曲、なんかの映画のタイアップ曲だったかもしんない。


曲自体は春が来てうれしいな、夏はきっともっとたのしいよねっ?て感じなんだけど、映画のストーリーは女の子が彼氏と別れる系の、けっこう泣けるやつだったはず。

予告ムービーだと、しんみりした映像とのギャップがよけいに涙を誘う感じだった。


あの映画見たかったのに、バイトをいきなりやめた子がいたから忙しくって見に行けなくなっちゃったんだった……あとでレンタル探そ。


ん?アオイ、なんか、変なかんちがいしてる?


アタシが今の曲歌ってたのに、本気で理由なんて無いんだけど!?


××××××××


あたしが地味に苦しみながら、ぼんやり馬車の外を見てたら、レリオとウィンとブレンダンとアルマンさんが何か話し合ってるのが見えた。

アルマンさんと目が合った。アルマンさんはにっこり笑って、アタシの近くに来た。


「うららさん、今夜はブレンダンさんのお知り合いのお宅に泊まるそうですよ」


え?5000万円もする巨匠の絵画がいまなら5万円?

買うかう……じゃなかった。

何も売りつけられてなかった。

うさんくさい笑顔が悪い。

アタシ、悪くない。


馬車は街道をそれて、小道に入る。

坂道を登った丘みたいな所にある、お洒落な洋館って感じのお家だった。


「ちょっと挨拶してこないといけないから、待ってて」


そう言ってブレンダンが屋敷に入ってった。


「うららちゃん、こっちに来い」


ウィンがくいっとあごで林を示す。

何かあるのかな? ひとりで休んでたいんだけど。


木立の向こうに、キラキラ光る何かが見えた。


「あ?」


木をかき分けて、そのキラキラ光る何かの方に行ってみる。


……湖?


鮮やかなピンクが見える。シバザクラだと、思う。


林だか、森だかの中にある。大きな湖。

湖の周りにはシバザクラが満開で、


アタシ、

ここ、

知ってる。


記憶の中の景色よりも、森が深い。

何かの花をつけた木がたくさんある。

木の足元にも花がたくさんだ。


あの、色とりどりの花びらはあそこから来たんだ……。


湖はキラキラと空の青を映して輝いてる。


イライラも、モヤモヤも、耳鳴りも、消えてく。


「キレイ……」


ずっとここでこの湖を見てたい。

昔話とかにあるよね?何かを待ってて石になったとか、花になったとか。

アタシ、ここでずーーーーーーっとこの湖を見てたい。

ずっと見てられる。


すいこまれそうってこういうときに使うのかな。

綺麗すぎて少しコワイ感じまでしてきた。


「湖の近くに、行ってみないか?」


びっくりしたぁ!!


なんか、ボーッとしてた。


「どうした?」


ウィンはちょっと不思議そうな顔をしてる。


「……ううん」


ちょっとの間、アタシはまわりに誰かいるかとか、なんにもわからなくなってた。


「近くに行ってみるか?」


ウィンはそう言って、アタシの顔をのぞきこんで来た。


アタシは首を横に振る。


だって、あの湖、キレイすぎて。

近寄らないほうがいいと、本能がそう言ってる気がした。


××××××××


そのままそのお家に泊めて貰った。

アタシの部屋は1階だったけど、よく湖が見える。


アタシはカーテンを引いて、湖が見えないようにした。


……そわそわするみたいな気持ちになって、カーテンを開けてみたのは夜になってから。


月が明るくて、水面がキラキラしてて、どきどきする。


地面は柔らかい草だった。

湖に、近寄ってみたくなった。

やっぱり怖いけどっ!


……この感じ、聖水だ。なんで昼間は気づかなかったんだろ。


柔らかく風が吹いて、いろんな花の混じったみたいな匂いがした。


湖のふちから、ちゃぷ、ちゃぷ、って波の音がする。


足が、冷たい水に浸かる。


やっぱり、聖水だ。

昼間見たときよりもキレイな景色にうっとりする。


湖の中にもお花が咲いてる。


「なんだ、やっぱり来たのか」


ウィンの低い声がして、肩を軽く叩かれた。


「うん。ここ、素敵な場所だね」


アタシは夜空と、キラキラ光る水面と、たくさんのお花が咲いてるこの景色から目を離さないまんま、答えた。


「ずっとここにいられたらいいのに……」


学校やバイトをほったらかしのまんま、この世界にずっとはいられない。

『花散らし水面』の持ち主のレリオから、アタシはあんまり離れていられない。


でも、この湖のあるこの場所はものすっごく、魅力的だ。


「……そうか」


ウィンがそれきり黙ったから、アタシはまた景色を楽しむ。


××××××××


寝ようと思いながらふと窓の外を見たら、うららがふらふらと湖に向かって歩いていくのが見えた。


そしてその少し後をボールドウィン様が着いていくのも。


……なんだ?


俺も気になって、こっそり着いていく事にした。

二人が何か話している。


うららはうっとりとした表情で景色を見ていて、ボールドウィン様は見たこともない程、優しい顔をしてうららの横顔を見ている。


……て、まさか!?


あわてて二人の方に行こうとしたら、腕を捕まれて木の陰に引き込まれた。


「ダメですよ、二人の邪魔なんてしては」


にこやかに微笑むアルマンを俺は睨みつける。

コイツ、いつも俺の邪魔をするな?


うららはただ突っ立っていて、ボールドウィン様はやっぱりじっとそれを眺めているだけだ。


会話が無い。


「……面白くないですね。何か起きるかと期待したんですけど」


アルマンはしばらく俺と一緒に二人の様子を見ていた。

けど、あんまりあの二人が動かないから、寝ると言って帰ってしまった。


もしかしてうらら、ボールドウィン様がすぐ近くにいることを忘れてないか?


……結局、空が白んで来ても二人の間に会話は無かった。

ただ、ボールドウィン様がじっとうららを見つめる視線が気になった。


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