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うららちゃんはゲームをやらない  作者: ササガミ
2章 ソカレリル・カレイドスコォプ
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うららとレリオ(2)

ちょっと、くっつきすぎじゃないですかね、お二人さん。


うらら達が泊まっているという宿屋に俺達も部屋を取った。


シャワーを浴びて、身だしなみを整え、うららがいると言ってた部屋に入る。


そこには、


「しんやです。うららちゃんの幼馴染みです」


という男と、


「どうも、アオイでーす。

うららちゃんの親友です!……やだっうららちゃん、凄いイケメンじゃんっ!」


という女と、


「お久しぶりです」


アルマンと、


「遅かったな」


ボールドウィン様が居た。

うららはベッドに横になっていた。軽く握った人差し指を鼻の下に当てて、何か考え事をしているみたいだった。


いや、だから、近すぎませんか。


ボールドウィン様は、うららが横になっているベッドに腰かけていた。椅子が余ってるんだからそこに座る必要ありませんよね?ボールドウィン様。


モゾモゾと、うららは身を起こした。

その背中にボールドウィン様がクッションを挟む。


……なんだこれ。


「そっかなー……アオイにはイケメンに見えるんだ?

ふーん……じゃ、アタシ、『ピニー』以外はイケメンに見えないのかもしんない」


「『ピニー』を基本にしたらこの世にイケメンなんていなくなっちゃうじゃん!」


アオイって子と、うららはそこで仲良く笑った。


『ピニー』て誰!?


俺はため息を必死で我慢する。


「あ、ね、レリオ」


花が咲きほころぶような笑顔で、うららが俺の名前を呼んだ。


「アタシの剣、持ってきてくれてるよね?」


俺が『ハナチラシミナモ』を渡すと、うららは鞘から剣を抜き、丹念にチェックし始めた。


それから剣の方をボールドウィン様に、鞘の方を俺に持つように言った。


「じゃあ、ウィン、その剣をレリオに返して。

……心の底から、ちゃんと返すって念じてよね」


そろそろ気になって仕方ないんだけど、なんでうららちゃんはそんなに親しげに『ウィン』なんてボールドウィン様の事を呼んでるんだ?


ボールドウィン様は、うららちゃんと剣を交互にしばらく見ていた。

それから、俺を睨み付けながら剣を俺に差し出してくる。


「コルベリ。この剣、返すぞ」


よくわからないまま、俺は剣を受け取って、鞘にしまう。


「……ありがとうございます」


ボールドウィン様が息をのんだような気がした。

……いや、きっと気のせいだ。


「良かった。これで持ち主問題解決!」


うららはこの時まではにこにこしていた。


俺には今ので何が解決したんだか、さっぱりわからない。


××××××××


アタシ、やっぱりこの世界では人間じゃないのかも。

所有権が、ウィンから無くなったこと。

アタシの剣『花散らし水面』の所有者がレリオだけになったこと。

ウィンがレリオに剣を渡した時にはっきりとわかった。

なんでわかったのかはわからないけど、でも感覚でわかっちゃうことってあるよね?


それにしてもさ!

ウィン、もう少し残念そうにしてくれてもいいんじゃない!?


っていう気持ちと、

ウィンは、ウィンだけはアタシがウィンのことを好きだとかって勘違いしてなさそうで良かった!!

って気持ちと、ごっちゃになっててもやもやする。


『所有者と剣と巫女は物理的に近くにいた方がいい』って知ったウィンは、さっきまでけっこう近くに居てくれた。

ベッドに寝かしつける時にはなんか妙に優しかった

だから、ちょっとヤバイかなー?て思っちゃったけど。お願い、ウィンだけはそういう思考にならないで……っ!

ほら、ウィンに寝ぼけて抱きついちゃったみたいだしね?


アタシ、自分ではそこそこかわいい顔だと思うんだけど、今までかいめつ的にモテなかったからなぁ。


あっさりとウィンはアタシを手離して、部屋の隅 っこの椅子に移動した。


レリオからまた回収したアタシの剣を見る。

やっぱり、ウィンにとってはただの品物でしかないんだろうなぁ。

誰もが、この剣をただの物としか見てない。


「レリオが来てくれたし、多分もう、あっちに帰れるよ。どうする?」


アタシは気持ちを切り替えるつもりで、アオイとしんちゃんを見た。


「あ、そんなにあっさり帰れるんだ!?」


アオイはうれしそう。


「もう少し……もう少しだけ、この世界にいることできないかな?」


しんちゃんは不満そう。もう少しって。

まだゲームごっこしたいの?


「この世界の、大きな街ってのを見てみたい」


アタシはレリオを見た。

だって、ここから先はレリオに連れていってもらうことになるんだもんね?


「構わないけど……」


さすがのレリオも、この状況に追い付ききれてないっぽかった。でも良いって言ってくれる。

やっぱりレリオは優しい。


「うちの護衛達の回復を待っていただけるのでしたら、引き続き王都まで馬車を使ってくださっても、構いませんよ?」


アルマンさん。その壺……おいくらかしら?幸運、ホントに授かる?……じゃなかった。

何も売り付けられてなかった。

素敵な笑顔でアルマンさんがそう言ってくれたから、お言葉に甘えさせてもらうことになった。


それにしても、さぁ。

やっぱり、モヤモヤする。

むしろムカつく。なんとなーく気に入らない。


××××××××


「あ」


うららの友人だとかいうアオイって子と、


「あ」


うららの幼なじみだとかっていうひょろい男、しんやと、


「……あ」


俺が、それに気づいたのはだいたい同じくらいだった。


俺はあわてて部屋を見回す。


俺、なんかした?それとも全員?

うららの友人ふたりはこそこそと壁際に移動し始めた。

下手に逃げないほうがいいと俺は思う。


「レリオ、どうした?」


ブレンダンが俺の様子に違和感を持ったらしい。

俺は小さく、うららの方向を示した。


「……あっ」


「……なによ」


そう。


何故か急にうららの機嫌が悪くなってる。

本当についさっきまでご機嫌だったじゃないか!?

何がきっかけでここまで不機嫌になってるんだ!?


バシュッ!!と、うららの背中に置いてあった枕が真っ直ぐに飛んだ。


「ごぅふっ!!」


しんやってヤツの顔面に綺麗に当たった。そいつはそのまま壁に頭をぶつけてしまう。

気を失う程ではなかったらしい。

イタタと言いながら片手を頭にやって、こすっていた。


パァン!と軽い音がして、ぱっと俺の頬が熱くなる。

驚いて視線をしんやから正面に向けたら、うららが俺を睨んでいた。


え!?俺!?


うららの両手が俺の両肩に乗せられ……俺は身体をふたつに折り曲げた。


今日の膝蹴りはそんなに痛くなかった。とだけ言っておく。


「っぶ!」


俺が床とこんにちはしている間に、うららはターゲットをボールドウィン様に替えたらしい。

俺は、あわててうららを止めようとした。


後ろからうららを抱きしめる。

正確には羽交い締めだ。


「うららちゃん、落ち着いて。止めろ、な?」


小柄で柔らかな身体は、すっぽり俺の腕に収まる。

ものすごく不満そうに俺を見上げたうららは、それでも一応ボールドウィン様に最後の一蹴りをお見舞いして止めてくれた。


「出てって!」


俺を振りほどいたうららは荒々しく、ベッドに腰かけた。俺たちに背を向けて。



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