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うららちゃんはゲームをやらない  作者: ササガミ
2章 ソカレリル・カレイドスコォプ
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寝起きの悪さは相変わらずです(2)


甘い匂いがした。暖かいし、布が顔に触れてる。きっとここはアタシの部屋のお布団の中だ。


枕に顔をすりすりしたら、すごく肌触りがいい。

目を開けたら、


「げ」


「起きたか」


白い布があった。

ただ、その白い布はシャツで、そのシャツはウィンが着てる物で、あわあわあわあわあわあわあわあわあわああああ!?


なんでこうなったの!?


あわてて離れる。


うわぁ……。


「ごめんなさい」


いちおう、謝っておいた。

うわぁ……。寝ぼけて男の人に抱きつくとか……うわぁあああああああああ!!


「……別に」


いろんな意味で恥ずかしくて、顔をあげられない。

ウィンが動いた音がした。


「おま……うららちゃん、もう平気なのか?」


もう平気?


「平気だけど……」


顔を上げたら、そこはどこかの宿屋さんの一室だった。

ちょっと待ってよ。

これ、どういう状況?え、もしかして、アタシ記憶無いけど大人なアレコレな感じ?え?いやまさかね、でもひとつの布団に入ってたってうわぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!


「えっと……これは……いったい?」


「言っておくが、俺は何もしてないぞ。

お前が抱きついてきて離さなかったんだ」


くらりとした。


「……寝てろ。まだ顔色が悪い」


「うん」


ベッドの端にウィンは座った。じぃっと見られて、なんか、気まずい。


「コルベリと旅している時も、こうだったのか?」


ですよね、あきれますよねー。

うーん、どうだったかな。違うと思うんだけど。

誤解があるといけない。あんまりアタシの話を細かくしたくなかったけど、しょうがない。


「あのさ」


アタシは布団にもぐって、顔をウィンに向けた。


「アタシたち、えっと『異世界より来たりし巫女』だっけ?アタシ達には必要な物がふたつあるの」


今は何時くらいなんだろうって、頭のすみっこでぼんやり考えた。

怪我人、出たかな。出ただろうな。

ウィンはアタシの話の続きを待ってくれてた。


「アタシの場合だと、『花散らし水面』っていう剣と、その剣の持ち主のレリオがそれ。

……今は、なんでかわかんないけど、ウィンもハナチラシミナモの持ち主ってことになってる。

道具と、巫女と、持ち主は、離れちゃダメなの。巫女に力がいかなくなるから」


確認したこと無いけど、持ち主にだって何かの恩恵があるはず。


「『物理的な距離と、絆の強さは比例する』」


魔力が強いレリオよりも今、すぐ隣にいるウィンからアタシに流れ込んでくる力の方が多い。

たぶん、貰ってるのは魔力じゃないんだ。魔力の方が変換効率が良いけど、それじゃ今のこの状況に説明がつかない。


「アタシ達は自力じゃ生きてけない。閉ざされて、力を使い果たしたら、死んじゃう」


神殿にいたときの事を思い出す。

聖水がたくさんあって居心地よかったけど、結界のせいで新しい力が入ってこなかった。

だから、弱った。


「さっきはかなり力を使ったから……」


本能的にくっついて、力を補充しようとしたんだろうなぁ……。


「レリオと旅してたときは……レリオって無駄に魔力が多いし、いつもペンダントと指輪で魔力を貰ってたからこういう事は無かったと思うんだけど……。だからその……」


いきなりおっきな手がアタシの頭をグシャグシャに撫でてきた。


「ここにいてやるから、寝てろ」


髪の毛……痛まないといいなぁ。

それにしても、ウィンて、目付きやっぱり悪いなぁ……。


××××××××


そのままアタシはすぐに寝ちゃって、次に起きたとき、部屋にウィンはいなくて、かわりにアオイとしんちゃんが居た。


「心配したよー!!」


「顔色、良くなったな!」


二人の距離がやたら近い。

アタシが寝てる間に何かあったんだろうなぁ……。お幸せに!!!


「心配かけてごめんね?」


めまいはもう無い。聞いたら、ジェフロワさんたち護衛にも怪我人が出てたんだって。

やっぱり、あの人数で吹きだまりを渡るのは厳しいって……。


「でも、うららちゃんがなんかやったあと、吹きだまり?とかいうモンスターの大発生はちゃんと収まってたよ」


良かった。出来てませんでした!じゃお話にならないもん。

安心してたらアオイがニヤッて笑った。


「記憶が無いときのうららちゃん、ヤバかった」


「え?」


ヤバかった……て?

何となく想像はつく。聞きたくないけど知っておかないともっとヤバイ事になりそう。


「ずーっと、ウィンさんにひっついててね、はがそうとしても『うにゅう~(はぁと)』て」


「うわぁ……」


サーって血が引いていくのがわかった。

それは……いくらなんでもやっちゃダメでしょアタシ……家族でも何でも無いのに……。


「あれは……さすがに俺も同情した……」


しんちゃんが何か遠くの物を見てた。

何を見てるの?夢と希望?それとも虚無と悪夢かな?


「え、まさか着替えは……?」


アタシが着てるのは清潔そうなパジャマ。

まさか、


「着替えとか身体拭くのはアタシがやったから、安心して!」


アオイは良い顔で親指をつきだした。ありがとう!親友!!


「ウィンさんにはちゃんと目を瞑るように言っておいたから!」


「それダメなやつぅぅぅ!!」


「詳しい実況付きで!」


「アオイ??あなた何がしたかったのぉ!?なんて事してくれたのぉ!?」


アオイの肩をつかんでゆさぶった。アオイはイタズラが成功して満足したらしい。かなり笑ってた。


「ま、俺だったら折角だし、見るな」


しんちゃんはよっぽど枕を顔面にくらいたいらしいね。


「ごっふ」


「眠たい時のうららちゃんは甘えんぼさんだもんねぇ、きっとウィンさん、誤解しただろうねぇ」


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ……」


アタシは頭を抱えた。だって、記憶に無いもん!

ホントに無いもん!


「寝起きのうららちゃん、女のアタシでも何かに目覚めそうになるからねー?」


アオイ……親友じゃなかったの……?

なぜそんな追い打ちを……。


「よし、幼馴染みとして寝起きのうららちゃんは俺が守ごっふ!」


「しんちゃん、それはいいからウィンが誤解してるかどうか確認して……。そして誤解があれば解いてきて……。幼馴染みとして!」


アタシのメンタルはもうずたぼろだ。

え……まさか……誤解……えっと例えば、アタシがウィンを好きだとかいう勘違いなんてなんてなんてされてないよね?よね?

てかどういう誤解てナニ?どんな誤解を受けた可能性があるんだろ!?


「ん?」


ぴぃん、と髪の毛が引っ張られる感じがした。


「うららちゃん、どうかした?」


「ん……なんだろう?」


ふざけてたアオイが、ちょっと心配そうに聞いてくる。


なんだろう。この……引っ張られる感じ。


アタシはベッドの上に立った。

しんちゃんもふざけるのやめて、アタシを見上げてた。


「うららちゃん、マジでどうした?」


「なんか……呼ばれてる気がして……」


アタシの意思じゃなく、外からの力で無理やり意識がぐわっ!て広がっていく。

この部屋の外、宿屋の向こう、この村の端っこ……この村と、次の村だか街だかを繋ぐ、街道。


「レリオ?」


『繋がり』を確認する。

ひとつはウィン、もうひとつは……あ、やっぱり。


レリオが近い!


アタシは駆け出した。壁をすり抜けて、まっすぐレリオに向かって走った。



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