寝起きの悪さは相変わらずです(1)
アタシが宿屋にお風呂を借りにに行って、帰って来て、ダーとその他にちょっとつまめるくだものなんかの準備をして、みんなに配るころには、アルマンさんとウィンは村長さんと話が終わったみたいだった。
この村じゃ旅人はそんなに来ないから、とりあえず安全が確認できるまではこの村からの道は通行止め。
アルマンさんの馬車(つまりアタシ達)は街道を進んで、先の村に警告するってことになったらしい。
んー、よくわかんないけど、進むってことだよね?
「問題は、今度出来た『吹きだまり』がどのくらいの距離かわからないところだな」
当たり前のように、ウィンはアタシを馬車の荷台に乗せようとした。
ちょっと、待ってよ。
「馬の事を考えてよ。アタシは馬車の隣を走る」
「ダメだ」
「馬が潰れたらどうするつもり?ゆっくり進んでたら、それこそ護衛をしてるみんなが危ないんだよ?」
「お前はっ」
「お前って言わないでよ。
ちゃんと『うららちゃん』て呼んで」
「話をすり替えるな!」
「すり替えてなんかないよ。とにかく、アタシなら走れる」
馬を借りて、馬車は4頭に増えてる。
それでも、馬車は軽い方がいいと思う。ううん、ここまで警戒してるのなら、尚更アタシは馬の周りを守る側に行った方がいい。
「遅れるようなら、馬車に放り込むからな」
アタシはそれに、頷いた。
門を一歩出たら、やっぱりぞわっとした。
空気が変わるって、こういう事なんだ。
湿度が高い気がする。何かがまとわりついて、動きにくい。
うじゃうじゃとって程じゃなかった。
それでもかなりの数のモンスターだ。それを蹴散してアタシたちは走る。
アタシが握る名前の無い剣も、さっきからかなりの数のモンスターを消してる。
今のところ怪我してる人はいないからいいけど、これが次の村まで続くなら、かなり、キツい。
「俺も参戦するぞ!」
バカ!!
しんちゃんが、馬車から飛び降りた。
そこにモンスター……名前はわかんない。うさぎに似てた。
耳が刃物みたいになってて、しっぽが角みたいで、大きさは大型犬位あるやつに、しんちゃんは切りかかった。
……一回で倒せなくて、馬車から離され始める。
その横から狼型のモンスターが飛びかかろうとした。
ユークさんが、モンスター二体を一閃した。
そこに三体目が。
それはアタシが飛び蹴りで防いだ。
「しんちゃん、馬車に戻って」
しんちゃんの顔が強張ってた。きっと、い今までのモンスターよりも強いし、やりにくいってことを理解したからだ。
そんなことやってる間にも、アタシは何体かのモンスターを消してる。数えてなんかいられない。
「お願い。馬車の上から、飛びかかってくるモンスターを退治できる人が必要なの」
「……っ!わかった」
馬車を止めるわけにはいかない。ユークさんが手伝って、しんちゃんは馬車に戻った。
その間にだって、モンスターはいっぱい来る。
アタシが引き受けるしかなかった。名前の無い剣は、頑張ってくれてる。
でも、折れないように使うのには体力とは違う何かがばんばん減ってく感じがした。
息が上がる。
意識を広げてみた。終わりは近い。街道全部がこうじゃないみたいでちょっとだけ安心した。
「あ!」
今、街道と外との境界線が壊れてた!
もしかして、そのせいでこうなったのかもしれない。
「しんちゃん!馬車の中に、なんでもいいから棒、ある!?」
「え!?待ってろ!」
何に使う予定だったんだろ。1メートル位の長さの棒が出てきた。
アタシはそれを受け取って、さっきの所に戻った。
馬車が遠ざかってく。
「おい!?うららちゃん!?おい!!」
「うららちゃん!!!」
アオイとしんちゃんがアタシを呼んでるのは、聞こえてる。
でも、やらなきゃって思った。
ハナチラシミナモじゃないから、怖い。
気合いを入れて、名前の無い剣を振り回した。
近くのモンスターが消えてく。この数秒の間にやるしかない。
一瞬、アタシの周りが静かになる。
剣で腕をちょっと傷付けて、血を、棒に擦り付ける。
ミナモなら、こんなに痛くなかったのに。
祈りを込めて、境界線が壊れてる所に棒を差す。
「おい、うらら!何をやってる!うららちゃん!!」
ウィンの声を無視する。集中する。
ぐんぐん力が抜けてく。充電がヤバい。
意識が広がる。
境界線を、繋げる。
アタシなら、やれるって思ったんだもん。
ここにレリオがいたら、きっと同じ事をしてたよ?
上手くいったとわかったのは、新しくモンスターが出てこなくなったから。
「おい……おい!!うららちゃん!!」
見事な剣さばきだ。
モンスターが消えていくのをアタシはぼんやり眺めてた。
力を使いすぎたアタシは、そのまま、ウィンの腕の中に倒れた所で気を失った。




