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うららちゃんはゲームをやらない  作者: ササガミ
2章 ソカレリル・カレイドスコォプ
38/75

虹色の花を君に捧ぐ

あー、あんまり道が良くない……。


ガタゴトと、馬車が進む。

荷物があるからそんなに中は広くはないけど、歩くよりははるかに楽だし早かった。


「……ね、うららちゃん」


アオイがこそこそっとアタシの耳に口を寄せてくる。


「ここの人たちってさ、めっちゃくちゃアタシたちと同じ人種って感じの顔なのに、名前だとか景色はファンタジーちっくなんだね」


そうなんだ。

ボールドウィンさんも、レリオも、アルマンさんも、ブレンダンも、王都にいるだろう美少女アラーナさんも、超絶美形アラステアさんも、みんな、みーーーーーんな!!!


日本人顔なの。

違和感がスゴイ。


「ボールドウィンさんの名前を聞いたとき、芸名みたいなものかなって思ってたけど、本当にみんな……ぷぷぷっ!」


アオイが笑いだした。しんちゃんも一緒になって笑ってる。


うん……笑えるよね、きっと。

残念なことにアタシは慣れちゃったし、最初の違和感を覚えてた頃は、そこまで余裕がなかったからなー……。


馬車の隣を歩いてたボールドウィンさんが、不思議そうにこっちを見てた。


ボールドウィンさんなんて、『伊集院です(キリッ)』とか『勅使河原てしがわらです』なんて言い出しそうな顔してるのに『ボールドウィン』。


「でもさ、だから、アタシたちの事を簡単に受け入れて、親切にしてくれるんじゃないかな?」


もしも、外国人顔ばっかりの中にいきなり、日本人顔のアタシ達がぽーんと入って、ここまでみんな親切にしてくれたかな?


……レリオは、アタシを旅に連れていってくれてたかな?


そう思うと、同じ日本人顔で良かったと思うの。


例え……ぷぷぷっ……!!!


今更ながらおかしくて、アタシも笑っちゃった。お腹痛い……!!!


「うららさん、いいですか?」


馬を休める為の休憩だ。馬車が止まる。

アタシはアルマンさんに呼ばれた。


「なんですか?」


アルマンさんはにこにこと笑いながら、馬車からどんどん離れていっちゃう。

モンスターの気配は感じないけど、みんなからこんなに離れて大丈夫なのかな?


「こっちです」


アルマンさんはもう、森に入るところだった。

森の中は見通しが良くないから、休憩してるみんなは森の入り口付近の草原のはしっこにいる感じ。


そう……レリオとの旅の時もそうしてたけど。

アルマンさんは森に入って、街道から逸れた小道に行っちゃった。


アタシはあわててアルマンさんをおいかける。


「あの、危なくないですか?」


「大丈夫ですよ。ここは何故か、昔からモンスターが出ないんです」


木漏れ日の下をしばらく歩いて進んで、もう後ろにあるはずの馬車が見えない。


気を付けないと。

アルマンさんは大丈夫だって言ってるけど、警戒しておこう、いつモンスターが出てきても対応できるように。


いきなり、視界が開ける。


「うわぁ……!」


そこは、花畑になってた。

しかも見た事が無い、虹色のお花。

硬そうな花びらをしてて、風が吹いた時にカラカラ、キャラキャラみたいな音が鳴る。


すごく、キレイ。


「この花を摘んで、プロポーズすると幸せになれるそうですよ」


「そうなんですか、ロマンチックですね」


うっとりと眺めてたから、つい、そうなんですか、お買い得ですね、って言いそうになった。

あぶないアブナイ。


だってアルマンさんて、ものすごくカリスマ店員さんぽいんだもん……!

うっかり何か買っちゃわないようにしないと、気がついたら怪しげな壺とか、買った事にされてそうで。


「うららさんが巫女様でさえなければ、プロポーズしたんですけどね……」


びっくり。


「え?」


この人はいきなり、何を言い出した!?

アルマンさんは素敵な笑顔をしてた。

花を一輪摘んでアタシに受け取らせる。

もんのすっごく、自然だ。


いや、毒のある笑顔だとかでされても困るけど……。

このお花をどう扱えば良いんだろう……困惑しかない。


「年齢が近くて、旅を一緒にすることが出来て、それだけかわいいんです。

出来ることなら妻になってほしかった」


え、と……あの……?


「ごめんなさい」


あぁあ!!!もしかしてこれからの旅、気まずい!?

アルマンさんは確かにイケメンだと思うけど、アタシまだ高校生だしプロポーズだなんだかんだだだだだだ……だ。

ヤバい、焦る。緊張してきた。


どうしよう。こんなこと人に言われたの、初めてかもしんない。


ちょっとレリオの顔を思い浮かべて、レリオはカウントに入らないって思った。

だってレリオだし。


ブレンダン……は、あれはきっとふざけてたんじゃないかな……アラステアさん……にはあれは、踊っただけだ。

うわ、あれはほんっと恥ずかしかった!

思い出したら顔が赤くなる。


「……おい、勝手に離れるな」


聞かれてた!?


バッ!て振り替えったら、アタシの背後にボールドウィンさん。


「随分親切だなと思ってたが、下心ありか。

コイツはアラステア王子と結婚させるつもりでいる。諦めろ」


「はぁ!?」


その発言も理解できない。

なんでアタシがアラステアさんと!?

アタシの頭は混乱しすぎて、もう考えが追い付けない。


脳ミソ溶けそうなんですけどぉ!?


「……うららさんはレリオさんと、結婚なり、なにかされるのかと思ってました」


ほら、アルマンさんも驚いてるよ!?……いやいやちょっと待って!


「アタシがレリオと!?それも無いです!」


ちょっと待って待って待って、どうなってるのこれ。

アタシはレリオと付き合ってるか、結婚すると思われてたの!?

そしてアルマンさんがアタシに!?

で、ボールドウィンさんはアタシをアラステアさんと結婚させようとしてる!?


「うわぁ……無いです。無い。あり得ない。

全部無かった事にしてください……」


「いえ、わたしは諦めるために、この話しをさせていただいただけなので、忘れてください」


アルマンさんはそう言ってくれた。

けど、


「気まずいのはイヤですよ……」


なんか、気持ち的に、一瞬で疲れた。

アルマンさんはまぁ、諦める為にこんなこと言ったのならまぁ、まぁ、まぁね?

諦めてくれるんだ?


で、ね、ボールドウィンさん。


「なんでアタシがこっちの世界の人と結婚しないといけないんですか。よりによって……」


あの、意地悪な人と。

そりゃ、キレイな顔してるけど、イケメンなら、なんでもいいって訳じゃないもん。


アタシにだって恋する権利はある!


金持ち医師だとか年収どうのこうのって、そんなわがままは言わない。

自営業でもいいし農家も楽しそうだしサラリーマンと結婚して共働きだっていい。


アタシは自分の世界で人並みに恋愛して、結婚したい。

……恋人、居ないけどさ。


「あれ?レリオさんとはそういう話しなかったんですか?」


「アルマンさん、アタシにとって、レリオはただの保護者です」


アタシはボールドウィンさんを睨む。

ボールドウィンさんは涼しい顔をしてた。


「アラステア王子と、異世界より召喚されし巫女。

素晴らしい婚姻じゃないか」


はぁぁぁぁ!?

ワケわかんない!!!


「あなたは……ううん、あんたはっ!

……ボールドウィンだなんて偉そうな名前しちゃって!そんな事言うなら、今からあんたは『ウィン』!!!

もう、今度からウィンて呼んでやるっ!!!」


だって、頭にきたんだ。

アルマンさんにも、ボールド……じゃない、ウィンにも。


勝手すぎるよ。

アタシもさ、『異世界より召喚されし巫女』だとかいう、なんかの役目があるのかわからない立場らしいアタシも勝手にしてるけどさ。

確かにみんなに甘えてばっかりだけどさ。

頼ってばっかりだけどさ。

でも、勝手すぎるよ。

アタシの未来を勝手に決めないでほしい。


レリオがここにいたら、ここまで頭に来なかったかも知れない。

ううん、レリオまでワケわかんないこと言い出しそう!


アタシは二人を置いてさっさと馬車に戻った。


「その花、珍しいな?……見てもいい?」


てしんちゃんが言うから、


「いらない。あげるっ!」


て言って、アタシはゴロンってふて寝した。

アオイに話を聞いてもらいたかったけど、他の人に聞かれるのは嫌だったから、夜まで待つことにした。




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