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うららちゃんはゲームをやらない  作者: ササガミ
2章 ソカレリル・カレイドスコォプ
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旅は道連れ世は情け

なんてことない午後の街道を、アタシ達は歩いてる。


ボールドウィンさんには、『アタシ達は旅になれてないから、普通の人たちの三倍は時間かかるよ』って出発前に伝えておいた。


普通なら、朝出発して夕方には次の村や街に着くっていうのがこの世界の定番なんだろうけど、きっとアタシ達、その辺で二回も野宿することになる……。


アタシだって野宿なんてしたくないけど!

しょうがないじゃん、毎朝ジョギングしてこういう時のために鍛えてたアタシはともかく、アオイとしんちゃんみたいな普通の高校生にはムリ!


アタシだって前ならぜったいムリだったし。


昼間限定で移動するだけなら、モンスターは出てきても弱いやつばっかりだ。


たまに、ものすっごくたまに、強いのが出てくる。その時はボールドウィンさんに倒してもらう事になる。けど、今のところ、基本的にしんちゃんがモンスターを倒してる。


「ゾルカメだ!」


ソカレリル・カレィドスコォプで見たことがあったようななかったような気がするモンスターの名前を叫んで、しんちゃんは半透明のカメっぽいモンスターと戦い始めた。


あれは確か弱いし、しんちゃんだけでもなんとかなるハズ……アタシは他にモンスターがいないかどうか、周りに注意して見回す。


そしたらブドウを見つけた。


けっこうたくさんなってる。

ブドウがなるような季節とは違うと思うんだけど、関係無いのかな?この世界では一年中ブドウがなるものなのかな?


ダーじゃない食べ物だ、アオイが喜ぶかもしれない!


……でも、手が届きそうにない高さ。


木登りまではできないしなぁ。


なぁんて思ってたら、ボールドウィンさんがひょいって手を伸ばして取ってくれた。


たくさんなってる房を取ってはアタシに渡し、取ってはアタシに渡し……を何回か繰り返して、最後のひと房はもぐもぐと普通に食べてた。


ちょっと、びっくり。


だって、初めて会った時のレリオだって、イチゴを食べるのには抵抗があったみたいだった。

ブレンダンもアラーナさんも、ポテチとかクッキーを見て、驚いてる風だった事もある。


「アラステアは小さいときからこういうのが好きでな。一緒にいるうちに慣れた」


……なんか、色々と意外。


アラステアさんて、フルーツ好きなのかな?

ダー以外が好きなのかはわからないけど。アラステアさんの事だから特に知りたいとも思わないけど。


ブドウ狩りが終わっても、しんちゃんはまだ『ゾルカメ』とかいうモンスターと戦ってた。


いくらモンスターが弱くったって、しんちゃんの攻撃力が低ければ時間かかるよね。


でもまぁ……なんで、あんなに嬉しそうに戦えるのかな。


「呑気そうで羨ましいか?」


「そういうのじゃないよ」


アタシはあんなに不安で、泣きたくて早く帰りたくて仕方なかった。それなのに、しんちゃんもアオイもこの異世界を楽しんでる。


やっぱり、帰れるって最初からわかってるのは、大きいんだろうなぁ。


アタシだって……。


アタシは名前もわからない、魂の無い剣に軽く触れる。


そうだ。アタシだって、ツイてるんだよ。


レリオに会えたし、今はボールドウィンさんが居てくれてる。


ブドウを一粒食べたら、それはとても甘かった。甘くて、ちょっと酸っぱくて、すごくおいしかった。


いつ、帰れるのか。

そもそも帰れるのか。

帰れたとして、向こうの時間はどのくらいたっているのか。


『レリオに会えれば、ここでどれだけ時間が過ぎていても、向こうから飛んできた瞬間に帰ることができる』


これがわかってるだけで、この世界は楽しめるんだ。

キラキラしてる、いろいろな物にゆっくり目を向けられる。


暗くなりはじめて、野宿をする時はなんだか、キャンプ気分だった。


星空は相変わらずすごい大迫力で、いつまでも見ていられた。


……だって、眠くならなかったんだもん。


歩いて疲れるって感じがあんまりしない。


体力作り、頑張って良かった!

でも、やっぱり隣で寝てるアオイとしんちゃんは疲れてるみたいに見えた。

野宿は……確かにキツいかもなぁ……。


もそもそと朝仕度。

朝日で眩しい街道の先に、馬車と、護衛の人達が見える。あの人達もどこかで野宿したのかな?


前にフランツさん達と旅した時みたいに、馬車とかあればアタシたちも楽できるのに……。


ん?


見た事のある人がいた。


「ジェフロワさん!?」


いきなり大きな声を出したから、アオイとしんちゃん、ボールドウィンさんは不思議そうにアタシを見た。


先を行ってた馬車が停まる。アタシは駆け寄る。近づいたらやっぱり、ジェフロワさんだった。ユークさんもいる。


「うららさん、こんなところでどうしたんですか?」


馬車を操っていたのは、アルマンさんだった。

本日のお買得は……とか言い出しそうな、感じの良い笑顔が懐かしくて、うれしい。


アルマンさんはアタシの後から来た3人を見た。


「……レリオさんがいないようですが」


「はぐれちゃって。それで、レリオの所に向かってる途中なんです。

えっと……クラリッサは?フランツさんも居ない見たいですけど」


そうなんですか、と呟いて、アルマンさんはユークさんと何か相談を始めた。


おーい、クラリッサはー?て思うけど、話の途中で立ち去る訳にもいかない。いちおう待ってみてる。


「もしよかったら、馬車に乗っていきますか?お仲間も」


「いいんですか!?やった!」


なんてラッキー!!!

あ、でも、アルマンさんはどこに向かってる途中だったんだろう。


「……おい、うらら」


ボールドウィンさんが勝手に決めるなって顔してる。

でも、歩かなくて済むなら、アオイやしんちゃんはとっても楽になるハズ。


結局、アルマンさんの馬車に乗って王都まで行くことになった。

ボールドウィンさんは少し渋ってたけど、アタシにしてみたら、前にもお世話になった人達だし。


アルマンさん、フランツさん達とは今、別行動してるんだって。なんでもフランツさんたちは神殿の近くにお店を構えることになったみたい。


行ってみたいな。



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