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うららちゃんはゲームをやらない  作者: ササガミ
1章 うららちゃんはゲームをやらない
29/75

解放、そして旅立ち

アラステア様の指が、再びテーブルをトン、と叩いた。


「それなら、このアラーナにでもその確認をさせてもらいましょう」


「それは困りますわ」


ボフェティはおかしな事を言うなとでも言いたげな余裕の笑みだった。

対して神官長の顔は青い。


「巫女様は安全な場所におられます。下手に人を入れてその安全を脅かすだなんて」


アラステア様も、俺にしてみたら背筋の冷える笑顔だ。

この、ボフェティって人の神経の図太さ、凄いな……。


××××××××


「……っし!」


アタシは小さくガッツポーズ。

思ってたより屋根が低かったし、ちょうど良いカンジに足をひっかけられるところもあったから、お庭から屋根の上にのぼることができた。


でも、誰かに見つかる前に、元の部屋に戻らないとなー……。


屋根の上から見たら、ここはけっこう大きな建物だった。

足を踏み外さないように気を付けて……。


ふわっときた。


そう、屋根の上をお散歩してたアタシは華麗に足を滑らせて、見事にすっころんだのだ。


「……ぅあああああ!?」


目を閉じて、体を丸めるのがやっとで……。


どんがらがっしゃーん!て音、本当にありえるんだねーーーーー(現実逃避)。

ちょっと痛かったけど、ケガはして無いっぽい。

アタシはおそるおそる目を開けた。


どこかの部屋。

レリオの顔がまず目に入った。


レリオはすっごく驚いてた。

そりゃそうだよね……。あはは……。笑ってごまかすしかない。


アタシはテーブルの上に落ちてた。


部屋の中には知らない人がふたり、ボフェティさん、アラステアさん、アラーナさん、ブレンダン、そして、


「レリオ……」


レリオは元気そうだったし、ハナチラシミナモもそこにあった。

うん、これでひとまずは安心できる。


あれ?でも、


なんか、これってもしかしたらヤバい?脱走したみたいに見えない?


アタシ、脱走するつもりはないの。

ただ、ちょぉーっとだけ部屋の外が見てみたかっただけで……さ。


ていうか、これだけの人の目の前で、足を踏み外して天井から落っこちました!て。


今気がついたけど、もっのすっごく恥ずかしくない?


自然に……自然を装うの!アタシ!!

テーブルからおりて、普通に部屋を出ていこうとしたアタシ。


そうだ。アタシの剣。

ドア近くで振り返って『花散らし水面』を手元に呼び寄せた。


「それじゃぁ、アタシは部屋に戻っておとなしくしてますので、ごしんぱいなぁぁ!?」


なんということでしょう。

手首をガッシリ捕まれたよ?……まさかのアラステアさんに!!


なんでここで、アラステアさんなんだろう?


ぐいっと引き寄せられて、アタシはふんわりと腕の中に抱き抱えられる感じになっちゃった。

例えるなら、そう、社交ダンスのイメージだ。


……はっずかし!


なんで、こんな人前で社交ダンスみたいなコトを?

顔を上げたら予想以上に顔が近い。


「久しぶりだね」


キラーン。歯が光った気がした。


……そう、だった。

アラーナさんに聞いてた気がする。

アラステアさんは女好きだって。


アタシを女の子扱いしてくれてありがとう!

でもこっぱずかしいです!


恥ずかしくて、アタシはいたたまれない。


確かにアラステアさんクラスのイケメンなら、こんなことしても絵になるよ?

でも巻き込まれたこっちは恥ずかしいったら!!


そっと空いてた手でアラステアさんの胸を押した。

顔は全力で反らす。


早く……早くここから逃げさせてひとりにさせて!


「あの……離して……」


「照れないでいいんだよ?」


照れてんじゃなくてこのやらかした感にたえられないの!!

ブレンダンといい、アラステアさんといい、王家の人間の強引さって血筋!?ねぇ、血筋なの??


「ホントに……」


ムリ。恥ずかしくて顔が赤くなってきたのがわかった。


この人、意地悪でこんなことしてるんじゃない?

やっっっと手首を掴む力がゆるんだ。


「あ……うん」


なんだろう、今の。

アラステアさんらしくなかったような……?

いや、アタシはアラステアさんのことをよく知らない。知りたくもない。

そんなことより、さっさとこの場から逃げ出そーう!


あーーーーー!!屋根から落ちただけでも恥ずかしいのに!!


アタシはさっさとアラステアさんの腕の中からすり抜けて、部屋を出ていく。


さっき屋根の上から見てたもん。戻るべき部屋のだいたいの位置はわかってる。

部屋に入ろうとして……無情にも、ドアノブが動かない。


そうだった、入り口には鍵がかかってたんだった。


だぁぁぁぁぁぁまたしてもぉぉぉぉ……。


さっきの部屋に戻らないとダメ?

それで、『鍵開けてくださーい』とか言わないとダメ?

それはそれで恥ずかしいんだけど!


失敗の連続でちょっとヘコむ。


いいもん、どっかからまた屋根ルートで行くから。


「おい」


えっらそうな、低い声がした。さっきの部屋にいた、知らない人が後から着いてきてた。

細身の長身、黒髪、目付きが悪い人。


「本当に戻るつもりだったのか」


「……まぁ。ここがアタシの部屋らしいんで」


まだ体調が良くないし。あのノートを参考にするなら、アタシは休んでるべきだと思った。


……さっき、レリオに会えた時にいくつかの事に気がついたんだ。その辺のこと、あのノートにあとで書き足させて貰おっかな。考えまとめたいし。後で紙とペンをもらおう。


その人は鍵を持ってきてくれてた。

少し錆の浮かんだドアは、アンティーク調と言えなくもなかった。


お礼を言ってアタシは中に入る。

贅沢にたっぷり用意されてる聖水の小川。早速それに足をいれた。あー癒される……。


「うららとか言ったか?」


背中に声がかけられた。


「うららちゃん、です」


ぐりん!といい勢いで振り返ったから、言い返すみたいな感じになっちゃった。


ホントにこの人目付きわるっ!

こっわーーーー……。

そんなににらまないでよ、こわいから。


「明日、色々聞かせて貰うぞ」


「……はぁ」


いろいろ、って言われても、アタシにもわかんないことだらけなんだけどなぁ。


××××××××


アタシはあのあとすぐ、ハナチラシミナモを抱きしめたまんま寝てたみたい。


「巫女様、起きてください」


目を開けたら、アタシを揺すって起こそうとするボフェティさんがいた。


「あれからまた2日もお目覚めになりませんでした。心配いたしました」


2日も寝てた?そんな実感ないんだけどなー……。


あ、めまいがひどい。充電、5パーセントくらい……て気分かな?

もっと、レリオに魔力を分けてもらうべきだったのかも。

ここにいれば大丈夫なのかと思ってたんだけどな……。


今から分けてもらうのでもまだ大丈夫なのかな?

もう間に合わないかな?

なんか、ねむたい。


着替えとかは手伝ってもらった。

お庭の小屋で待つように言われた。


……ねむ。


水の流れる音が気持ちいい。

日差しがあったかい。


がくん、と力が抜けて、アタシは寝落ちしかけてたんだと気がついた。


「まだ寝るつもりか?」


あきれたような声は、こないだの目付きが悪い人。


「レリオを……」


レリオを呼んで。


もし、このまま寝たら、起きられなかったら、アタシはどうなるんだろう?


××××××××


アタシは、近道をしたかったんだ。

アオイと買い物に行く約束をしてて、待ち合わせ場所の駅前広場……の少し前で転んだ。


正確には、マンホールにつまづいた。


そして、なぜか穴に落っこちて、この世界に呼ばれた。


普通に落っこちたんなら、怪我のひとつもしてたんだろうけど、その穴は深くて深くて、段々感覚が鈍くなってきて……(まさか落っこちながら寝てたとか言いにくい)……気が着いたらあの森にいた。


そして運よくレリオに会うことができた。


「……ら、うらら!」


レリオの声がした。


アラステアさん、アラーナさん、ブレンダンと、あのいまだに名前を聞いてない目付きの悪い人もいた。

せいぞろいってやつ?


「うらら……!」


感きわまったっぽいレリオに抱きしめられた。


「うららちゃん、でしょ?」


回復魔法をかけられたんだと、魔力の感じでわかる。

今まで感じてた眠気が消えてる。


なんでかな?ボフェティさんは泣いてた。


「今まで……こうなった巫女様で再びお目覚めになられた方は、うらら様が初めてでございます……!」


ていうかね?


「レリオ、そろそろ離れて」


アタシは女の子なの、そんな気軽に抱きつかないでもらいたい。

なんとかレリオを押し退けて、離れてもらう。


そりゃ……レリオが近くにいた方が都合はいいんだけど。

でも隣にいるとか同じ部屋くらいの距離で足りるんです!


「お前と今までの巫女の違いを教えて貰おうか」


だからさ。

その目付きの悪いあなたはどなた様でしょう……!?


まぁ、そんなことより、帰ろう!!


たぶん、ここにはまた来られる。

せっかく帰り道が見えてきたんだし、いろいろめんどくさい空気になってきてるし。


またあとで、ゆっくりレリオと話せばいい。


「ね、レリオ。人に聞かれないで話をする方法ってある?」


レリオは不思議そうだった。


「あるけど……」


「どうしても、人に聞かれたくないことがあるの」


レリオが魔法を作動させたのを感じる。

辺りの音が聞こえなくなった。


アタシはレリオの目をじっと見つめた。


「アタシ、帰る」


「え?」


アタシはハナチラシミナモをレリオに渡した。


「鞘の名前は『花散はなちらし』、剣の名前は『水面みなも』。アタシの事は絶対に『うららちゃん』て呼んでね」


一回帰って、また絆を結ぼう。今を逃したら、次がいつになるのかわからない。


「アタシ、本当はね、うららって名前じゃないの」


うららって、アオイがつけたニックネーム。

本当は浦浪麗うらなみれいって言うんだけど、アオイが名前を読み間違えて以来、アタシは『うららちゃん』て呼ばれるようになってた。


「ぜったい、誰にも教えないでね」


レリオが、アタシの本当の名前を呼んだ。


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