表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うららちゃんはゲームをやらない  作者: ササガミ
1章 うららちゃんはゲームをやらない
27/75

戦って、戦って、そしてよく寝る (2)

膠着している。

イザボーは手を止めて、戦場を見た。

酷い怪我人は数名だけだ。 大部分の者は疲労が原因で戦場に戻れないでいる。

状況は膠着しているように見える。賢者の顔つきが厳しいものになっている。


新しい怪我人は来ていない。手が空いたイザボーは戦闘を眺めていた。

目を引くのは白い衣装を身に付けた少女だ。


あれは、さっきサボっていた少女ではないだろうか。


今、戦闘に参加しているのは20名かそこら。

その中で彼女は目を見張る程の大きな戦力になっていた。


「彼女、凄いですよね」


先程治療したばかりの男性、ユークがイザボーと同じ方向を見ていた。


「俺、あの子と一緒に旅した事があるんすよ。

あのときも強かったけどここまでだとは思わなかったなあ……」


そう言うユークは立つのがやっとな程、疲弊していた。

イザボーの視線の先で少女がよろめいたような気がした。


長い戦闘。

進んでいるように見えない賢者の術。

前の巫女様の力が宿る聖水はもうない。


あと、どのくらい彼らは持つのだろう。

モンスターが居なくなれば、『柵』の設置は終わるのだろうか。


××××××××


戦闘に参加できる人数が減ってしまい、俺がいる所からでも、うららの姿がよく見えるようになった。

うららが持つ武器、『ハナチラシミナモ』のうち、『花散らし』つまり鞘は俺が預かっている。


最近のうららの戦闘スタイルは、剣で攻撃を受け流した後に鞘で殴るというか……ちょっと俺の常識ではあり得ないんだけど、とにかく打撃中心のもの。

それなのに鞘を俺に預けるなんて、心配すぎる。


でも今は見守るしかない。

集中して、魔力の展開を維持していく。


俺には賢者の仕事がある。


状況は、思っていたよりまぁ良いほうだ。

ただ、あと1、2回、モンスターが居なくなる瞬間があってほしい。


柵はほぼ、両端とも繋ぎ終えた。

今は弱いが街の人間の祈りで、これは強化していってもらうしかない。


魔法陣を使って後ろから流れ込んできていた、支援の魔力は弱すぎてもうあてにならない。

あとは俺の力でこの柵に近いこの荒れ地が『吹きだまり』にならないようにどれだけなだめられるか……。

あと1回でいい。

できれば、2回。

モンスターが居ない一瞬が欲しい。


××××××××


「……っと!」


落っこってた槍につまづいた。


最初の頃より、出てくるモンスターは弱くなってきてる。

でもアタシ達も疲れてる。

横目で見たブレンダンの動きはキレが悪くなってきてた。


「うららさん、おつかれかーぁ?」


軽い調子で声をかけてきたのはジェフロワさんだった。

彼もまだ、頑張ってた。

頑張ってたけど、やっぱり怪我してた。


「うららちゃん、1回下がろう」


ブレンダンが険しい顔になってた。

確かに、ちょっと柵から離れすぎてるかも。


あんまり遠くまで出てく必要なんて無いんだ。アタシ達はあの柵を守る事が役目らしいんだから。


「おぅい!もう少し、柵寄りに下がるぞぉ!!」


辺りに響く大声を張り上げながら、ブレンダンはアタシを乱暴に柵の近くまで引っ張った。

アタシの足がもつれて、また転びそうになる。


「ちょっと!」


文句を言ったけど、聞いて貰えなかった。

軽く放り投げられるみたいにして、柵の内側に放り込まれた。


「……ぅ!!」


「ごめんなさいっ!!」


アタシの下敷きになったのは、なんて偶然!知り合いだった。フランツさんのところのユークさん。


「いや……大丈夫……」


あ……かなり大丈夫じゃなさそう。ごめん。

でも、アタシはまだ大丈夫!

みんなと違ってちょっとしか怪我してない!


けっっっこう疲れてるけど!!


見回したら、聖水が入った樽が見えた。

そこに行って、汚れてしまった手と顔を洗う。

ついでにアタシの剣、ミナモも。


ほんの少しだけだけど、疲れが消えた気がする。

そして、最期の聖水を飲んだ。


助走をつけて、ハードル走の感じで柵を飛び越えた。


これだけ長い間、レリオの魔力に晒されてたらさ。

ひとつふたつ、アタシにもわかることってあるんだよね。


戦闘はもう少しで終わる。

でも、もう少しかかる。


今戦える人たちは疲れきってる。

今控えてる人たちが戦えるようになるまでは、もう少し休憩が必要。


今、アタシの足元に落っこってる剣の持ち主は、どこだろう。

良い剣じゃないのか、扱いが悪いのか、魂が感じられなかった。


刃に触れたら、切れ味が悪い。

仕方ないからミナモを使った。


さすがミナモ。指の腹をちょっと切っただけだとぜんっぜん痛くない。

血を1滴、拾い物の剣に垂らした。

それだけでその剣は気持ち悪いくらいに真っ赤に染まる。


ミナモを宙に投げる。飛んでけっ!

これでミナモはきちんと鞘に収まるはず。

アタシは真っ赤な剣の腹を、両手で挟んだ。

剣が砕け散る。戦場に散らばっていく。


アタシの意識はぐんぐん広がっていった。


××××××××


「うらら……?」


ミナモが、鞘であるハナチラシにスッと収まった。


俺は集中力を乱さないように顔を動かすと、うららが真っ赤な剣を砕いていた。


きらきらと破片が風に乗って広がる。


持ち主に忘れられたらしい、戦場に落ちていた武器。


それらが一斉に、モンスターに襲いかかった。


今だ!


何が起きているのかはわからないが、うららが作ったチャンスを逃してはいけない。

俺は魔法を強める。

魔力を操り、荒れるモンスター達の気配を収めていく。


××××××××


イザボーには何が起きているのかわからなかった。


ただ、使いきった筈の、巫女様の力が宿る聖水がもう一樽、どこかから出て来た。それは治療や疲弊していた戦士達の回復に大いに役立った。


何人かはそれで戦場に戻っていった。


ちらりと戦場を見たとき、誰の魔法だろう、大量の武器がモンスターを倒しにかかっていた。柵からまばゆい光が放たれ、新たにわくモンスターが塵となって消え去り、誰かれともなく喚声が辺りを包んだ。


膠着しているとばかりイザボーが思っていた戦いは、一気に収束に向かっていた。


あの武器を操る魔法……まるでここに、巫女様がいるかのようだ。


××××××××


ぐらりと視界が揺れた。

俺はなんとか踏みとどまる。


やりきった。


これから3日は寝たきりになるんだろう。

それから灯台の修理だ。


うららは大丈夫だろうか。


「ありがとうございます、賢者様!」


役人の声に片手を挙げて応えるのも億劫だった。


「あああわわわわわわーばばばばっ!!」


緊張感など皆無の、間の抜けた悲鳴が聞こえる。

スライムなら、その辺の誰かに倒してもらえ。


××××××××


「あああわわわわわわーばばばば!!」


あまりに緊張感の無い声に、イザボーは顔をしかめた。

辺りから失笑が漏れている。


先程大活躍していた少女だ。


もう、ふざけているなんて。

万歳の格好でスライムから逃げている様は滑稽だった。


スライムなど、子供が石を投げてでも倒せるモンスター。


……あれに抗えない人を何人か、イザボーは知っていた。

全員華奢で繊細で、顔が青ざめたような、儚い方達だった。


あの少女、あの平凡な顔立ちの、あんなに強い少女にはとても当てはまらない。


イザボーの目の前で少女が転んだ。


いつの間にこんなに湧いていたんだろう、というほど大量のスライムが少女のもとに集まってきていた。


見る間に少女を取り込んでいく。

息が出来ないのだろう、少女は悲壮な顔をしてイザボーに片腕を伸ばしてきた。


だって、さっきまであんなに強かったじゃない。


……この少女はスライムと戦えないらしかった。


××××××××


終わった!らしい!!


だって、柵が光りだした。モンスターが一斉に消えていく。


ハナチラシミナモじゃない、他の武器を操るのは、不思議な感覚だった。

自分が広がる感じだった。


「つかれたぁ……」


アタシは寝転ぶ。

土の冷たさが気持ち良かった。


「……ごめんね」


武器達を操るために、ひと振り剣をダメにした。

今アタシが操った武器達にも印がついてちゃってるかもしんない。


仕方ない。持ち主には諦めてもらおう!

犠牲になった剣だって魂が無かったんだから、許して!


さて、早く柵の内側に入ろ。

アタシがこれをやったんだもん。

『スライム』がいつ出て来てもおかしくない。


「よっこ……」


ぐんにゃり。


うわぁ……。スライムだ……。

スライムにさわっちゃったぁぁぁ……!


「あああわわわわわわーばばばば!!」


スライム、スライムスライムはムリ!!

ぐんにゃりぶにぐにしてて、とてもじゃないけどムリ!!


「ごぉふっ!!」


コケた。

足がもつれた。


ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ助けて誰か!!

あーーーれーーーーっ!!

オータースーケー!!


ひんやりとした感触が。

アタシ、

ついに、

捕まった。(ヤバイ助けて)


全身から力が抜けて、

必死に手を伸ばしたけど、

息は出来ないし視界が暗くなってきたしでもぅ!!


これで死んじゃうとか、死んだのに元の世界に戻れないとかだったらマジ運命を呪うわ。


……あと!夢オチでオネショはもっと無しの方向で!!神様!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ