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うららちゃんはゲームをやらない  作者: ササガミ
1章 うららちゃんはゲームをやらない
21/75

うららちゃんと『料理』

「こんにちわー!」


お隣さんに行くには、けっこう歩かないといけない。

やっとついた可愛らしいお家。のぞいたら、おばあちゃんが出迎えてくれた。


「いらっしゃい」


にこにこと優しい笑顔でテーブルに案内される。

アタシはカゴから聖水と、クッキーを出した。


「ジーナおばあちゃん、クッキー持ってきたの。食べようよ」


ダーが主食でほぼダーしか食べない人達。その台所になんでオーブンが普通にあるのか、すっごく気になってる。

それはもう南米アマゾンに調査隊ハケンしたいくらいに。


「あら、うららちゃん?来てくれたのー?」


裏庭からマリアさんの声がした。


「マリアさん、こんにちは」


ここのお家にはジーナおばあちゃん、その息子さんのリチニオさん、リチニオさんの奥さんのマリアさんが住んでる。

マリアさんとリチニオさんの年齢はアタシの両親くらい、かな?


「うちの放蕩息子なんかよりも、うららちゃんみたいなかわいい子供が欲しかったわ」


マリアさんたちには息子さんがいるみたい。

写真や絵が飾ってあるわけじゃないから、どんな人かは知らないけど。でもきっと、優しくてイイ人。


「マリアさん、クッキー持ってきたんです。食べませんか?」


マリアさんは顔を輝かせた。

そうだよね。クッキーて高級で珍しいっぽいもんね。


「そう言えばうららちゃん」


マリアさんが紅茶を出してくれる。

楽しい事を我慢できないって顔。はらりと垂れた髪を片手ではらった。


「グラタンをね、久しぶりに作ってみたのよ」


すっごく嬉しそうに出してくれた。

ただ、

どう見ても、


冷めてる。


家に入ったときに匂いとかしなかったもんね。

冷めてて当たり前かも。


「うわぁ……!」


でも、ダーじゃない食べ物!

うれしい気持ちは変わらない。


「うららちゃんはダーじゃない食事が好きって聞いたから」


ジーナおばあちゃんが言ったのかな?

おばあちゃんはにこにこ笑ってる。


「グラタンとか、普通にあるんですね。知らなかった」


「こういうお料理は、祝い事の時に作られる事が多いかしら」


マリアさんがグラタンをカゴに入れてくれた。


「晩御飯にでも食べてね」


畑仕事が一段落ついたのか、リチニオさんもやってきて、3人でゆっくりお話をしながらお茶を楽しんだ。


××××××××


「レリオ、おばあちゃんのところに遊びに行ったらね、マリアさんがグラタンをくれたんだよ」


遊びに行ってくる、と言って出掛けていたうららが嬉しそうに帰って来た。


「なにやってるの?」


俺の手元を見て、不思議そうに首をかしげる。


「昨日のこれの調査」


俺は広間に大量に置かれた昨日の『金属の棒のなれの果て』を指差した。

結論としてはただの金属。

ドラゴンの鱗や牙が混じっていたり、ユニコーンの牙の成分もあったりと、ところどころやたら質が良いものが混じってる。


もしも再利用できるなら、かなり良い武器ができそうだ。


「ふうん……」


うららは無造作に金属の山へ片手を突っ込む。

ガチャガチャと金属同士がぶつかる音がした。


うららの手に、比較的無事だと俺が判断していたのと同じような金属の棒が数本握られている。


調査しているときに気付いたけど、何本かが真っ赤な色をしていた。

その数本だ。


「この赤いのと、黒いのを混ぜたりしたら、質が上がってみんな喜んだりする?」


「あー……混ぜたほうが質が上がるだろうな……」


昨日のように暴走しないのなら、客が喜ぶだろう。

暴走させないようにする作業については俺の腕次第。


武器を作り出す腕前はこの国一番だっていう自信が、ある。

ぜんぜん問題ないな……やってみよう。


「そういえばね、マリアさんが言ってたんだけど。

街にダーじゃない、普通のお料理を出してくれるレストランがあるんだって」


どこかぎこちないしぐさで、金属をカチャカチャと弄っている。

これでも、さりげなさを装おっているつもりらしい。

これは……連れていって欲しいんだろうか……?


俺は小さくため息をついた。かわいい。

金を支払うのが俺だから、はっきり『連れていけ』と言えなかったんだろう。

これはこれで良し!


「じゃあ、明日にでも行ってみようか」


うららの顔が輝いた。小さくガッツポーズまでしている。

俺は片手で自分の口元を覆い隠した。

おいおいそのくらいのことでここまで喜んじゃうのか!?

にやけるな、俺。頑張れ俺。


「あ、そうだ」


うららが突然、声を潜めて俺に顔を近づけてきた。

俺は必死に顔を引き締める。


「ブレンダンは……まだいるの?」


どうやら、うららはブレンダンに対して苦手意識があるらしい。やった。俺は苦手意識持たれて無いもんね!


「アラーナ様が連れていってくれたよ」


「良かった」


安心したように、うららは壁際のソファに身を任せた。

そうですね。ふたりっきりってとても良いですよね。


これで、恋人同士のように寄り添ってみたり、


肌を寄せ会うようにくっついてみたり、


顔を近づけておしゃべりしてみたり、


きゃっきゃうふふってできたらもっと言うこと無いんですけどね!

でも、そうだよな……うららの認識はきっと、ただの同居人だもんな……この距離が妥当なんだろうな……。


残念ながら俺とうららの距離はだいたい3m離れてた。


「アラーナさんとレリオって、付き合ったりしないの?」


なかなか……俺の妄想を吹き飛ばすような爆弾発言を投げてくださる。


「アラーナ様は、もう俺の事はどうでも良くなったそうだよ」


俺のうららへの態度を見て『冷めた』とおっしゃられて……なんだろう、何かがなんかグサッと来た。


別にアラーナ様からは


うららを見る目がにやけきっててだらしない。


とか、


とにかくなんでもうららには選ばせないで自分好みの物だけを買い与えているところが気持ち悪い。


とか、そんな事は言われてない、決して。

言われてません。

ブレンダンには言われたけど。

今だってクッションに回されてる腕をぷにぷにしたら気持ちいいだろうな、とか思ってないから。


仕事をしよう、俺。


さて、この金属の山はどこに保管しようかな……。


少し無理はしたけど午前中に修理依頼を全部済ませた。

今はブリュノがお客に返却してくれている。

あとは新しい武器の注文依頼……早速これを使ってみるか。


「うららちゃん。そこの紙の束を持ってきてくれる?」


「これ?」


注文依頼は10件くらいか。

紙に、依頼者の氏名と伸長、体重、欲しい武器のイメージ、用途、払える金が書き込まれている。


どれから作るかな。書き込まれた名前を見ていると『ブレンダン』があった。

俺はニヤリと笑う。こいつから作ろう。そしてぼったくろう。


「うららちゃん、カーテンを全部閉めてくれる?それが終わったら、バケツに水を汲んできて欲しいんだけど」


「はぁい」


つい、手伝いを頼んでるけど……いいんだよな?


広間の床に、ゆっくり魔力を流して俺の魔法記号を描く。

次に、魔力を高める魔法陣を丁寧に描く。

いろいろとおかしな事が起きないよう、結界を細かく張っていく。


その間にうららはカーテンをきっちりと締め、聖水を持ってきてくれた。


「戸締りもしておいたから」


さすがだ。

見れば、大きなたらいにバケツで運んだ聖水がたっぷり入っている。聖水を金属にかける。これは俺の魔法を馴染ませる融剤みたいなものだ。


うららは聖水を飲食を含めた何にでも使うけど、普通は薬にしたり、こうやって魔法を行う時に使うものだったりする。


うららが風呂にまで聖水を入れているのに気がついた時はさすがに驚いた。

疲れがとても取れるし怪我の治りがはやくなるので、『風呂に聖水』は俺もみんなに勧めたい。


魔力を込めながら、イメージする。雑多な材質が均一になるように。どんどん俺の魔力と金属は溶けて、混ざっていく。

このままでは加工も保管もしにくい。同じ大きさのブロックの形に固めた。


「……ふぅ」


午前中の無理が響いてる。

全力疾走した後のような疲労を感じていた。


「今日は、ここまでかな」


「お疲れ様」


いつ用意したんだろう。

温かなお茶が入れられていた。


また聖水を使ったらしい。お陰で疲労の回復度が違う。

うららがこの屋敷の中にも聖水が湧き出る井戸を欲しがる理由が最近よくわかる。


「ね、スープとサラダも用意したの。晩御飯にしようよ」


スープも、うららの作ったものなら聖水入りなんだろうな、と俺は苦笑いした。

きっとまた風呂にも聖水が入っているだろうし、うららが午前中布団のシーツも洗ってくれてた。絶対うららならそれにも聖水を使ってる筈だ。

ぐっすり眠れば無理した分の回復ができるだろう。


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