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うららちゃんはゲームをやらない  作者: ササガミ
1章 うららちゃんはゲームをやらない
18/75

魔法の冠 (2)

ジャガイモを薄くスライスして、水にさらす。


「あの……」


たぶん、ブレンダンっぽい雑音はムシ!

歌を口ずさみながら、スライスしたジャガイモを水からあげて、水気をきれいにきって、油に入れてカリっと揚げて、塩をふる。


大きくて一番かわいいお皿に紙を敷いて、ポテチを載っけた。

あと、クッキーも添えて隣の部屋の大きなテーブルに載せる。

パリッ……!


「あ……しあわせ……」


台所で突っ立ってた王族3人+レリオも何となくって感じにテーブルについた。

アタシの正面にアラステアさん、アタシから見て右側にアラーナさん。

ブレンダンはアタシから見てアラステアさんの左に座って、レリオはアタシのすぐ隣の左側。


「レリオ、あーして。あー」


かぱっと口を開けたレリオの口にポテチを一枚突っ込む。


「おいしい?これがポテチ。お菓子の定番ね」


パリパリと言う音がするけどレリオは黙ってる。ていうか顔がみるみる赤くなる。


そういうの見てたらこっちのほうが恥ずかしいんだけど!

カンベンしてくれない!?なんでこんなので顔赤くなるの?!


「見たこと無い食べ物かも知れませんが、どうぞ食べてみてください 」


ついでに手を拭く為の濡れた布をテーブルに出してしておく。


「ありがとう。その前に、うららさん。これをつけてくれないかな?」


ムダにイケメンな王子さまだと思う。

アラステアさんはキラキラとした笑顔で、シンプルなデザインの輪っかをテーブルに置いた。


アタシはその顔を睨み付ける。

ふん!怒ってるんだから、まだ!


「これはね、『真実の冠』。これを着けている間、嘘をつけなくなるんだ。……着けてくれるかな?」


「良いですよ」


冠ってことは、頭に載っけるんだよね?

アタシはそれをかぶった。アタシにやましいとこなんてない。なんでそんなに警戒してくるのか、教えてもらいたいくらいだ。


この冠、不思議な匂いがする。

そんなに不快じゃないからいいけど。

もしかしてこの匂いがアラステアさんの魔力なのかな?


「まずは……そうだね。このお菓子は食べても害は無いのかい?」


「あるわけないじゃないですか」


この人達には見たこと無い食べ物みたい。

そうだよね。普段はどろどろのダーしか食べてないんだもん。


「あ、でもちょっとあるかも……」


そこまで言ったとこでブレンダンがガタッと立ち上がる。

まんまとひっかかった!


「食べ過ぎるとカロリーオーバーで太っちゃうんです。だから気をつけて食べないと」


アタシはポテチをポリポリ。ブレンダンをちょっと睨んだ。


「それ以上に食べ物で害になることなんて他にあるの?」


目の前で作ったんだよ?なにかあるわけないじゃないか。


「アラステア兄さんは毒の混入について聞いたんだっつの」


ブレンダンが脱力したみたいに椅子に座る。ポテチを何枚か一気食いした。


「うまいじゃん」


アタシはにやっと笑う。

さっきあんなことがあったんだもん。

ちょっとくらい仕返ししないと気がすまない。


「でしょ?甘いクッキーと交互に食べると止まんなくなるよ」


アラーナさんがおそるおそる、って感じにポテチを一枚食べてくれた。


「……とても美味しいです」


ふふーん。

アタシはまだ顔の赤いレリオを無視することにして、アラステアさんに笑いかけた。

アラステアさんは余裕たっぷりって感じに微笑んでた。

……イケメンめっ!


「アラステアさんもどうですか?」


「いただくよ。ところで、今日は君にいろいろ聞かないといけない。いいね?」


昨日のあれこれとか、さっきのあれこれとか、いろいろなこと。


さっき、アタシと離れたレリオを、ブレンダンとアラーナさんが二人で襲ってた。

レリオに危機が訪れた時にアタシがどんな反応をするのか知りたかったって。

ふざけないでよ。レリオが怪我するところだったんだから。


死にさえしなければ、アラステアさんとアラーナさん、レリオ、3人の魔法で治せるからって……。


そんなの、おかしい。


「どうぞ。答えられるだけ答えます」


アタシがこの尋問だか質問だかを断ったらレリオの立場が悪くなったり……うん。ありえる。

アタシにやましいところなんてひとつも……あ、ひとつくらいはあるかな……体重とかスリーサイズ聞かれたら答えたくないな……。


「では、君は何者だ?」


質問が始まる。

アラステアさんは肘をテーブルにつけ、両手の指を組んで、そこに顎を載せてた。

イケメン!凄く絵になる!イケメン!


怒ってるけど、それとこれは別なの!


冠が頭の上で存在感をアピールしてきた。


「アタシはうらら。女子高生。で、今はレリオの……」


あれ?なんだっけ?


「レリオの?」


アラステアさんが促してくるのに、言葉がどっかにひっかかって出てこない。


「レリオの……何て言うの?えっと……」


早速こんなんだからちょっとアセる。なのにわからない。

昨日とおんなじもどかしさを感じた。


「わかりません。アタシはレリオを守らなきゃいけないんです。……たぶん」


「何から、守るの?」


アラステアさんの低くて甘い声が頭の奥に響く。

やっぱり無駄にいい声だ。


「何から?……そんなのわかりません。でも、レリオから離れるなって命令が頭の中に出てくるし」


だんだんぼうっとしてきた。

目の前の世界が変になってくる。


灰色だらけで、みんな居なくなってて、アラステアさんしか居ない。

みんなはどこにいったの?


アタシは良い匂いがする方に手を伸ばす。安心出来る良い匂いと温もりが伝わってきた。


大丈夫。今は危険じゃない。


「君は、頭の中に文字が出てくると言っているらしいね?どう出てくるの?」


アタシは空いた手で空中を示す。

これを言おう、とか考えてないのに勝手に口や身体が動くのって気持ち悪い。


「見えないけど見える文字があるんです。

この辺に浮かんできたり、聞こえないのに聞こえる声とか。

選択ができる命令もあるけど、選べないやつは言う事聞かないと嫌な感じになる」


「今までで一番辛かった命令は?」


命令で辛くなったのなんて、まだあの2回しかない。

普段出てくる命令なんて、だいたいレリオから離れるな、だけだもん。


「レリオの所に行けなくなるような命令が一番、キツかった。命令違反したのもあれが初めてだったけど、あれは ……命令違反は、壊れるかと思った」


「そんなに辛くなるのなら、なぜ彼の所に行く事を優先したの?」


「だってアタシはレリオの……。

レリオに……。

レリオが……アタシを……」


アタシは首を傾げる。やっぱりわかんない。

質問によっては勝手に口が動くのに、一生懸命考えてもわからないことがある。

答えたいのに。


「アラステアさんには、わかりますか?」


ふっとアラステアさんは微笑む。レリオとはどこか違う笑いかた。大人の余裕ってやつ?


「わからないな。……質問を変えようか。君は、剣を自由自在に操れると聞いたけど」


アタシは眉をひそめる。


「これ、ですか?」


右手を宙に掲げたら、さっきレリオがテーブルの端に置いたアタシの剣が手元にやって来た。

ジャガイモをスライスするのに使ったらレリオが怒ってそこに置いたんだ。


「さすがにアタシの部屋からとかはドアがあるし無理です。まだ近くに無いとムリ」


ドアや壁が邪魔だもん。すり抜けるとか、まだムリ。


「まだ?」


すかさずにアラステアさんが繰り返す。


まだ、なんてアタシ言った?

まだ?そっか、まだ、


「まだ、足りてないんだった……」


この『ハナチラシミナモ』にはまだ足りない何かがある。


「何が足りないのかはわからないけど……」


「そうか……」


少し考えるみたいな間があった。ふむ、とアラステアさんがアタシの顔をのぞきこむ。テーブルを挟んでた筈なのに、ものすごく近くにいるみたいな気がした。

琥珀色の瞳がキラキラしてる。なんて綺麗なんだろう。


「君は、誰かや何かを害したいと思う?命令があれば、誰かを傷付けると思う?」


「するわけないじゃん」


とっさに答える。


「……でも、どうかな?たとえば、レリオが知らない人に襲われていたら?先程のように」


「状況によっては……あるかもしれない。でもなるべくさけたいです」


「……なるほど、ね。ところで君の中にはレリオ君の何かの魔法があるみたいだけど、君に心当たりは?」


「レリオの魔法?アタシの中に?」


そんなことを言ってた気がする、とか考えてみるけど心当たりなんてあるわけない。


そうこうしているうちに灰色の景色がだんだんと薄まって、アラーナさんとブレンダンが見えてくる。

アタシはレリオの手を握ってた。

レリオは心配そうにしてた。


「うららさんはレリオがこの国を裏切らない限り、この国に害を及ぼさないと誓えるかな?」


「アタシにそんなつもりはないよ」


「そうか……良かったよ。それなら私も安心だ」


アラステアさんはにこやかにポテチを食べて、美味しいと言ってくれた。

アラステアさんからしていた嫌な感じが無くなって、ものすごく好感の持てる人に見えてきたから、ふしぎ。


「うららさま、大丈夫でした?」


やっぱり心配そうな顔をしたアラーナさんが声をかけてくれる。


「大丈夫なわけないじゃん」


……あ。ヤバイかも。


冠はアタシの頭の上のまんまだった。

これのせいで嘘もごまかしもできないってアタシは思い知ってる。


「ごめんね、アラーナさん。でも、アタシ、ぜんぜん大丈夫じゃないの」


なんかもう……いいや。大きくため息をついた。


「これ、今取ったらダメですか?」


大丈夫じゃないって言いたくなかった。

『真実の冠』がまた存在を主張してくる。


「言いたく無いこともあるんです」


「言いたく無いことって?」


アラステアさんは、意地悪だ。

レリオとアラーナさんから、アラステアさんが皇太子として、大賢者としてアタシが見慣れない能力(剣を呼ぶこと、レリオの命令を聞くっていう謎魔法)を危険視しないといけなかった、仕方ないことだって言われた。


やっぱり意地悪だ。


何も今ここで言わせなくてもいいじゃんか……!

アタシは両手で顔を覆う。うつむいても、頭を振っても、手で払っても冠は外れてくれない。


「レリオ、ごめんね。

ごめん……凄くレリオは良くしてくれてるのに、アタシ……帰りたい……。

あんな餌みたいな食事はもう耐えられない、友達に会いたい、テレビ見たいしカラオケ行きたいしゲーセン行きたいしコンビニ行きたいし家に帰りたい!!家族に会いたい!!帰りたいの!!!


涙がこぼれる。

こんな風に人前で泣くような自分がすごく嫌だった。

どれだけおさえようとしても涙が止まらない。


イヤだ。泣くのは、嫌だ。


この、冠のせいだ。これの、これを使わせたアラステアさんのせいだ。

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