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うららちゃんはゲームをやらない  作者: ササガミ
1章 うららちゃんはゲームをやらない
11/75

レリオの家

たまに回復魔法をかけてやったけど、やはり、うららにあの森を駆け抜けるだけの体力は無かったようだ。

うららは疲れきって、半分寝ながら歩いている。器用だ。


すぐ隣、という程じゃないけど、森から俺の家は近い。

家に入る。少し懐かしい気がした。遠出する度に感じる感覚は、いつもの事だ。

ソファにかけてあった布を外す。

そして、うららを座らせた。

テーブルにはうっすらとほこりが積もっている。明日はまた、掃除しないとな。


寝てしまいそうな、うららの事は放っておく。

一応、コップに水を汲んで、置いておいた。


俺はいったん庭に出る。

清浄な朝日を浴びてから、仕事用の小屋に入った。


もしも俺に魔法がかけられていたら。


服を脱ぎながら、部屋の結界を確認する。

清められた井戸から水を汲む。

その水は、床に描いてある魔法陣の上にぶちまける。

何度か水を汲むと、広くはない小屋の中は水浸しになった。


俺は清めの呪文を唱えながら、身に付けていた護符、呪符、全てを外していった。


魔方陣の上はちょっとした水溜まりになっている。

磨きあげられた冷たい石の上に寝転んだ。目を閉じて集中する。

俺にかけてある、全ての魔法を外していく。


そのままでは無防備過ぎる。裸で極寒を歩くようなものだ。

新しく俺は自分に守護と加護、対魔法結界、その他いろいろとかける。


魔法の定着を確認して、棚から新しい服を取り出した。

今まで身に付けていたものは全て魔法陣に投げ込む。


俺にかけられていたモノよ姿を表せ


やがて、水が生き物のように動き出した。

何も無い中空からぼとぼとと、様々な色形の石が魔法陣の上に落ちる。


これらは俺に今までかけてあった魔法や呪力が結晶化したものだ。

それらをひとつひとつ観察する。


……これだ。


やはりあった。身に覚えのない魔法を見つけた。

余り大きくない結晶は、何かの花の形に見える。


俺は解析するための魔方陣が描かれた紙を取り出して、その上に置く。


姿を表せ


俺はこういった魔法が得意だ。この国で一番上手い自信だってある。これで攻撃魔法が人並みに使えられさえすれば、大賢者の称号が貰えた筈なのに。


関係無い思考は頭を振って払う。

この俺に全く気付かせずに、魔法をかけてきたヤツは、誰だ。


「守護魔法……うらら?」


勿論、うららの可能性は考えていた。

だから魔法のかかりが浅いうちにと、ちょっと無理をさせて森を突っ切る道を選んで帰って来た。


しかし……。


「守護魔法か……」


守護魔法なら、問題はないのかも知れない。

そう思った途端に顔がほころぶ。


いやいや次はうらら自身に解析魔法をかけないとわからない。

結界を更に強化してから、小屋を出て俺の家に行く。

もう日が高い。うららは完全に寝ていた。


通った鼻筋、ぷっくりと形の良い唇。

睫毛が長い。

そっと小さな耳たぶに触れてみた。


「ん…っ……」


起きない。むずがるみたいに首を動かした。

頬に触ってみる。柔らかくて手触りの良い肌だった。


「んー……ん。んにゃーぁ……あ……れりお……?」


何ですかその可愛らしい寝惚け声!?

まだ眠いんだろう。うっすらと目を開けたうららは両手で俺の手を持った。


これは何?と思っていそうだ。

そして俺の手のひらを顔面に置いて、


寝た。


「う……うららちゃん、起きてよ……」


情けない声が出てしまう。

顔が小さい。

唇が手のひらに当たってる。


「ん……にゃぁ……ねむぅい……」


「仕方ないな。抱っこするよ?」


うららは目を閉じたままで小さくうなづいた。

ドキドキしながら、うららの身体の下に腕を入れて抱き上げる。ちょっと重い。女の子特有の良い香りがする。うららは眠たそうに俺の首に顔を潜らせた。

くすぐったさに、俺は震えそうになる。


ちょっとこれは、さすがに無防備過ぎないか!?


足でドアを開けて、うららを仕事用の小屋まで運ぶ。


××××××××


ひんやりとした硬い感触で目が覚めた。


何?ここ。


アタシは濡れた石の上にいた。


ここ、どこ?

ソファで寝てたハズなのに、気がついたら濡れた石の上にいた。


わけわかんない。

でも、イヤな感じがしない。

むしろ気持ちが良い。


目を開けたら、レリオが見えた。

何かの魔法を使ってるっぽいから黙ってよう。

水音がする。

生き物みたいにうねる水がアタシを包んでくる。


なんでだろう、全然怖くないし、このままでいたいと思った。


レリオはアタシに何かの魔法をかけてる?

水に浸かったまんまで部屋を見回した。不思議なことに息が苦しくない。


天井は少し高い。

壁には棚。棚には何が入ってるのかな。壺と紙がたくさんあるみたいだ。


レリオが言ってる言葉がわからない。

でも、とっても心が落ち着く響きをしてる。


突然、頭の中にイメージが沸いてきた。


景色。


池だか湖。その周りはびっしりと咲いたシバザクラ。

風が吹いて、どこからかたくさんの花びらが飛んでくる。

赤、黄色、ピンク、白、青…たくさんの花びらが、池だか湖だかの水面に浮かんだ。


そんな風景。


頭の中にそういう風景があっても、アタシはこの部屋の中に普通に居た。

ふたつの景色が同時にわかっちゃうって、スゴくない?


アタシは身を起こして部屋を見回す。

この水はなんなんだろ?

冷たいんだけど、寒いとかは感じない。

この石はなんなんだろ?

滑らかで、映画だとかアニメに出てきそうな、魔法陣みたいな模様が描いてある。


模様の縁のすぐ側にいたレリオは、ちょっと困った顔をしてる。起き上がるのって、もしかしてまずかった?

……アタシ、いつの間に着替えたのかな。白衣みたいな服を着てた。


寝転がってる時は見えなかった角度の棚に、たくさんの剣が置いてあるのが見えた。

剣、ナイフ、斧、槍、名前のわからない武器がたくさん。

どれも凄く綺麗。逞しくて、かっこいいと思った。


どっちかっていうと綺麗な部屋じゃないのに、なんでこんなに居心地が良いんだろう。


レリオは少し長い前髪を片手で払いのけた。

そしてアタシにブカブカのTシャツに似た服を差し出してくる。


「うららちゃん、服が濡れちゃったから、これに着替えていいよ」


「ここから出ていいの?」


アタシは足元の模様を指差しながら聞いた。レリオがうなづく。


「何の魔法かけてくれてたの?」


「旅をしているうちに、うららちゃんに悪い何かがついてないか、みようかなって」


ここは、旅をしてたら悪い何かがついちゃう世界なのかもしれない。魔法があるんだもん。呪いだとか幽霊だとかもいるのかもしれない。


レリオは難しい事を考えてる顔で、アタシを見てた。


「うららちゃん……俺たち、あの森で会うのがはじめてだよね?」


「そうだよ。決まってるじゃない」


アタシは服を広げて見る。丈が長いから膝上まではカバー出来るかな。

でも、これ一枚じゃ……ねぇ。

アタシは全身ずぶ濡れ。髪からは今もポタポタと水が垂れてるくらい。


「ん?着替えないの?」


レリオの言葉にアタシは唇を尖らせた。


「体を拭くものがほしい。あと、レリオがみてたら着替えらんないのと、これ一枚じゃ困るっ!」


「え?あ……あっ!ごめんっ!」


やっと体を拭く布をくれた。

レリオの目がアタシの身体の一部を見てた。

そうよっそこですっ!ブラジャーなんてレリオは持ってないでしょ?


「えっと……とりあえず……俺の着替えからなんか漁ってくれて構わないからっ」


白っぽい薄手のTシャツを1枚すとんと着るだけなんてなんか……ねぇ。


ここは、作業小屋みたい。

生活するのは別の建物だって言うから着いてく。生活してる家っていうのもあんまり大きくない。

リビングも兼ねてるっぽい台所と、どうみても書庫としか思えない、レリオが寝たりする部屋。以上。


あ、あとお風呂場もあった。


××××××××


うららの服、買いに行かないとな。

今夜は俺がソファで寝るとしても、やっぱりベッドを買って何処かに置きたい。でもこの家の大きさだとキツい。


俺の部屋に余裕はまだあるし一緒の部屋で寝起きとかしてみたいです。ベッドはちゃんともうひとつ買うから。

いや、うららはいつトウキョウとかいう世界に帰るかわからないんだった。


「レリオ、脱いだ服はどうしたらいい?洗いたいんだけど」


「こっち。やり方わかる?」


俺は掃除の手を止めて、台所の片隅を指差した。

流しは洗濯用と飲食用がある。


「ねぇ、なんで井戸みっつもあるの?」


「そりゃ……洗濯とか掃除用の、炊事用の、あとは聖水」


うららはかなり驚いたように俺を振り返る。

そうだろう。

清められた水がいくらでも沸いてくる井戸なんて、世界がどれだけ広くたって、俺の家にしかない筈だ。

俺の家には2つもその井戸があるわけだ。

俺の凄さがわかったか。


「洗濯機無いの?じゃこれ手洗い!?」


俺の凄さは全く伝わりませんでした。


諦めて掃除の続きをする。

2ヶ月位家を空けていたから、どうしても埃が気になる。


「レリオ、さっき服着替えたんでしょ?一緒に洗うから頂戴」


俺は床にまとめ置いてある、濡れた服を指差す。あとで洗おうかと思ってた。


「せっかく便利な魔法がある世界なんだから、洗濯も掃除も魔法でやればいいのに」


洗濯を始めたうららが呟くのが聞こえる。

……どうやら、うららの世界に魔法は無いらしい。

かわりに魔法のような道具がたくさんあると、旅の途中で教えてくれた。


「レリオー、これ、どこに干したら良いの?」


俺があらかた掃除を終えた頃、うららが洗濯物を入れたかごを持ってくる。


「あ、これは……こっち」


洗濯の洗い場に連れていく。

そこに置いてある、見た目は大きな箱の扉を開く。

軽くほぐした洗濯物を入れて、魔法の起動装置に触れる。

今はどこの家庭にもありふれた装置を、とても興味深そうに見ているうららの姿が面白い。

ものの数分で洗濯物は乾いた。


「へぇ!乾燥機はあるんだ!凄いね、これ。皺も無いしアイロンがけしなくて良いの、楽っ!」


カンソウキ?うららの世界にも似たような物があるらしい。


「でもさ、ならなんで洗濯機無いの?

お水入れて汚れを分離するとか、新品の状態にするとか、とにかく水流を作るとかさぁ……」


それ、俺の服……。


装置から取り出された俺の服が、うららの細い腕で畳まれていく。

そうだ。ついでに洗ってもらったんだった。

俺、しばらくあの服着ない。


「それは、何年もまえの『異世界より来たりし巫女』様の提案で開発されたんだ」


「じゃ、今度はレリオが洗濯機作ってねっ!」


はい。がんばります。

そんな可愛い笑顔が毎日見られるんならがんばります。

うららは勝手に俺の部屋に入って、服をタンスに入れていた。

大体の場所がわかっている風だった。

……あ、さっき、勝手に漁らせたからか。


「で、アタシはこれからどうしたらいい?」


片付け終わったうららが、しゃがんだまま、上目使いで首を傾げて聞いてくる。


奥さんみたいじゃない?

可愛くない?


「ご飯食べてから、うららちゃんの服とかいろいろ買いに行こうと思ってるよ。」


「レリオ、いつもゴメンね。でもありがとっ!」


「謝らないでよ」


俺は微笑む。にやけたかったけど微笑む。爽やかさを売りに生きていく。


うららとダーを作って、食べた。

その時にうららは台所にある道具、ダーの材料について細かく聞いてきたけど、ダーの材料までは俺は詳しくない。


ここまで修正完了

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