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うららちゃんはゲームをやらない  作者: ササガミ
1章 うららちゃんはゲームをやらない
10/75

森を突っ切れ

「足はまだ痛くない?」


「大丈夫だよ」


左手の少し先には森があって、時間で言うなら、日が傾き始めてるくらいになってる。アタシ達のずっとずっと前に、次の街の門が見えてきてる。


「なら、いけるよね」


「いけるって……何が?」


レリオはゆっくりと首を動かして、辺りを見回した。つられてなんとなく、アタシも周りを見回してみる。

アタシたちの少し先を歩く人が、何人かいる。アタシの歩くペースが遅いせいで、アタシたちの後ろを歩く人は居ない。


いきなり腕を掴まれた。


「そっちはっ!」


街道のはしっこから出たらダメ!

レリオの足が街道から出る。続いて、引っ張られたアタシも。


頭の中に文字が浮かぶ。


《街道に戻る》《レリオに着いていく》


どうしよう!!!?

レリオはぐいぐいアタシを引っ張っていく。これは突き進むってやつだ。ぐんぐん突き進んでく。

レリオは早足だけど、アタシは走らないと追い付けない。


ここは危ない、夜は危ない。


振り返るともう、あんなに街道が遠い。

街道に近いところに生えてる雑草は芝生みたいなのに、ここまで進んじゃうと膝丈くらいある。

歩きにくいし、足元の安全が確認しにくい。


アタシたちと街道の間を、犬みたいな影が横切った。


レリオに着いていくしかないっ!

もともと、レリオに着いていく以外アタシに選ぶ道なんてない。

でもなんで、よりによって夕方に街道を出るの!?


「レリオ待ってよっ」


レリオに着いていくって思ったら、いきなり体が軽くなる。

やっと話しかける余裕が出来た。


でもレリオは聞いてくれない。


どんどん暗く見える森の方に行っちゃう。

いつもの優しいレリオとは少し違う感じがした。

強引?無理矢理?爽やかオーラが無い?


「夜はモンスターが多いんじゃないの?」


危ない方にわざわざ行くことないじゃん!?


「ここを抜けると、すぐクロウェルドに着ける」


やっと返してくれた言葉はそれ。

だから、モンスターと会うかもって話はっ!?


「うららちゃん、剣を抜いて」


レリオは走りながら剣を抜いたけど……あの……アタシ、普段、両手で剣を握ってるから……。

走りながら、レリオに掴まれてる腕を見る。

これじゃ剣を上手く持てない。


抜けって言われてるし、仕方ないか。


剣を呼ぶ。

左手にアタシの剣が収まった。


「モンスターとの戦いは、攻撃力があればだいたいいける」


レリオはとっくに剣を抜いてた。

早足のまんま剣を振る。切ってる、っていうより、ただ振ってるみたいに見えるんだ、レリオって。

目の前で木の枝が飛んでいった。


「うららちゃんの攻撃力はよくわからないけど、その剣の攻撃力なら、とにかく当たりさえすればモンスターは撃退できると思ってくれて構わない」


「ねえっ、一晩休んでからでも良かったんじゃない?」


夜よりも昼間のほうがモンスターは少ないんじゃ無いの?


「夜でも昼でも、そんなに変わんないだろ」


アタシもレリオの真似して、剣を軽く振った。

ぱりん、と少し離れた所で音がした。何かをやっつけたみたいだ。


「ね、もしかして朝までこうやって駆けていくつもり?」


そんなに体力無いんだけど。


「いけるだろ?」


だから……いけるかっ!体力無いって言ってるのっ!

文句を言おうとして、口を開きかけた。

でも、レリオが急に止まるから、タイミングを逃したっ!

……イラッ。

レリオの背中から、前を覗いてみる。


「モンスター……虫?」


目の前には大きな影。

これは……ずいぶんと大きな……虫さんだねー……(現実逃避)。


レリオの手がアタシの腕から離れた。

現実逃避をやめて、アタシは剣を右手に持ち変える。これならいつでも両手持ちになれる。


カミキリムシにそっくりな虫(体長3メートルくらい)はゆっくりこっちを見た。


「うららちゃん、やってみて」


って無茶振り!?

このタイミングでその冗談はツラいっ!


「こんなにおっきいのと!?」


「大きいから簡単に当たるよ」


……冗談のつもりじゃなかったみたい。


辺りはかなり薄暗い。

アタシはたっぷりと言っちゃいたい文句を、全部剣に込める……とかなんてしない。


怖いから、ちょっと走ってちょっと切ってさっさと逃げるっ!


パシャァ……ン!

それでも背後からはモンスターが消える時のあの音がした。


「ねっ?」


「ね?っじゃないっ!」


アタシは座り込む。


「足が痛いからちょっと休みたい……」


嘘はついてないよ。

だって、朝陽が昇る頃からずっと歩いてたんだもん。

昼間に休んだけど、そのあとは休んでない。ちょっとは休みたい。


「足、見せて」


……良かった。優しいレリオだ。

森に入ってからのレリオ、ちょっと怖かった。

レリオはアタシの足に靴の上から触れる。

その手と、靴の間から光が少し漏れた。

足が暖かい。


レリオの良いにおいがした。

きっとレリオには、この森を突っ切る理由があるんだ。

なら、アタシは着いていくしかない。


足の痛みはどんどん無くなっていく。


「ごめんね」


レリオが真っ直ぐアタシの目を見て、爽やかに言ってくれた。


「ううん。アタシ、がんばる」


「うん。ごめんね。……ありがとう」


やっぱり優しいレリオだ。


「レリオ、行こっ!」


もう足は痛くない。いっぱい歩ける。

アタシは立ち上がってレリオの手を軽く引いた。


「さっきの質問だけど。

森の中でも、街道と同じくらいしかモンスターとは会わないよ。

ただ、会うモンスターがちょっと強いってだけ」


レリオはさっきよりも少し進むのがゆっくりになった。

これならアタシでも着いていける。


「でも、あんまりゆっくりしてると、アイツらから寄ってくるから」


「それで急いでたの?」


「うん」


でも、そもそも街道を行けばモンスターにびくびくしなくてもいいのに。って言ったら、


「俺にとってはここのモンスターも弱いからな……4日は短縮できるし」


て言われた。そのままちょっと急ぎながら森を歩いた。

モンスターはたまに出たけど、けっこうなんとかなった。


……眠い。

疲れた。

辺りが少し明るくなってきた頃、街道に抜け出られた。


「あとちょっとだから」


ほとんどレリオに支えられるみたいにして、どこかのお家に入った気がする。


「ここで待ってて。俺はやることがあるから」


ソファーにかかってた布を外して、レリオがアタシを座らせてくれた。


「何も触るなよ?」


「わかった……まってる……」


眠い。疲れた。


ちょっとくらい、目を閉じてても良いよね?

ソファーは柔らかくて、気持ちいい。


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