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国土整備開始4

 俺は何かがへばりつくような感触で飛び起きた。


「なんだ!?」


 周りを見るとまだ夜が明けたばかりのようで少し薄暗かった。そこには何も異常がなかったので気のせいかと思って息を吐くと今度は腰から太股のかけて何かが這うような感触があり急いでシーツをめくった。そこにはまだ割れていない卵と何かの液体が腰の辺りにへばりついていた。


「こいつはゼリーか!?いったいどこから!」


 俺が慌てて剥がそうと手を伸ばすと、ゼリーは自分から離れ丸くなって震え始めた。まさかと思い卵を確認するとやはり青い卵がなくなっていた。どうやらこのゼリーは卵から産まれた俺の子供のようだ。


「・・・もしかしてさっきのは甘えていたのか?」


 俺がそう問いかけると、深い青い色で半透明の体を持つ50センチ位の女の子へと変わり、涙ぐんだ瞳を俺に向けていた。下半身は足ではなく液体のようだが、上半身はちゃんと人と同じ様な形だった。服は少し透けているので体と同じ性質なんだろうな。


「悪かったな、直ぐに気づいてやれなくて。安心しろ、もう怒ったりしないよ。さっきはいきなりで驚いただけなんだ。」


 俺はゼリーの魔人に謝りつつ手を伸ばした。女の子は恐る恐るという感じで手に触れてきた、女の子の体は見た目通り水の属性なのかひんやりとしていた。俺が拒絶していないことを理解したのか、器用に下半身を使い俺の直ぐ側まで近づいて来た。しかし、タイミングの悪いことに扉が勢いよく開きバーンズが入ってきた。


「ソーヤ様叫び声が聞こえましたが、何かありましたか!?」


 女の子はよほど驚いたのか液体化すると俺の体にへばりついた。なんか濡れたみたいで落ち着かないな。暑いときは良いかもしれないけど。そう言えばこの大陸の季節はどうなってるんだろ?とりあえずはバーンズに説明しないとな。


「いや、俺が勘違いして叫んだだけなんだよ。こいつが卵から産まれたんだが、ゼリーが俺にくっついてると勘違いしてな。ほら、お前も安心しろよ。この人はバーンズといって俺の家族みたいな奴なんだ。」


 そう言って俺の胸元から顔を出した女の子の頭を撫でた。すると女の子も落ち着いてきて、服の中から出てくると先程のような人型へと変わった。


「お前はゼリー系の魔物に似てるから、誤解されないようになるべく人型でいるんだぞ?それにしても魔物の特性が強い奴をどう呼ぶかな。この星にはスライムと名前につく魔物は居るか?」


「いえ、不定形の魔物の内、液体の魔物についているのはゼリー系だけですね。気体にも種類はいくつかありますけど近い名前はありません。」


 俺は女の子の頭に手を乗せると名前を付けた。


「お前は魔物に近い姿だから知名度を上げるためにもわかりやすい名前にしたよ。お前の名前は魔人族・妖人ヨウジンブルースライム・青香セイカだ。」


 妖人のゴロは悪いが仕方ない、あやかしびとと読んでも良いが他の種と同じく分かりやすいだろう。多分。


 俺がそんなことを考えていると青香は嬉しそうに俺の体に手と下半身を使いへばりつきながら震えている。なんかマッサージされてるみたいな感じに感じるけど、くすぐったいから止めるように言って俺の隣に移動させた。


「それでは私は城外の警備に戻ります。」


「あぁ、すまなかったな。見回り頑張ってくれ。」


 バーンズは頭を下げると部屋から出ていった。


「完全に目が覚めたな。青香、お前の兄姉が起きてくるまでのんびり過ごすか。」


 それを聞いた青香は俺の横で器用に形を変えながら何かをしている。とりあえず見ていると何かの形に成ろうとしているようだ。少し見ていると部屋にあるグラスやベルの形を真似しているようだ。そう言えば青香は一言も話していないな。


「お前は喋れないのか?喋れないなら何か対策を練らないといけないんだが。」


 すると青香は体の一部を伸ばすと俺の頭にくっつけた。俺が首を傾げているのを見た青香はにこりと微笑むと言葉を口ではなく体の一部を使い伝えてきた。


『ママ、お話しできるの。』


「これはどうやって伝えてるんだ?」


 青香は少し考えた後、首を傾げた。

 

『頭の中に浮かんだの。』


 骨伝導でも使ってるのか?音は振動で伝えられるはずだしな。


「よし、後でリリー達に相談してみよう。他の皆共話せるように出来ると良いな。」


 俺は青香の体を引っ張ったり、青香が形を色々変えるのを見ながら過ごしていると残っていた卵にもひびが入った。


「お?お前の妹か弟が生まれるみたいだぞ。そう言えば孵化を見るのは初めてだな。」


 青香も俺の膝の上に移動して卵の変化を見始めた。しばらく見ているとひびがだんだんと広がっていき、僅かに中が見えるくらいの亀裂が入った。するとそこから何かが溢れてきて卵の側に集まり始めた。魔素というよりは生命力と魔素の混ざったものかな?

集まった力はだんだんと人の体のように形成を始め、少しずつ実体化を始めた。卵の側で丸くなった姿を見る限りは赤い髪の女の子の様だな。そして実体化が終わったのか最後に残っていた殻が砕けると女の子の服に変化した。


 俺はこれ以上変化がないことを確認し、女の子の頭を撫でてみた。青香も興味があるのか恐る恐る近づいている。そして少しすると女の子が目を開けた。


 女の子は俺の顔を見ると可愛く笑みを浮かべ抱きついてきた。小さくママと聞こえるから喋れるようだ、間に挟まれた青香は隙間から抜け出し少し怒っているみたいだけど。俺が頭を撫でると背中に何か動くものが見えた。


「ん?ちょっと後ろを向いてくれるか?」


 女の子は首を傾げながら向きを変えてくれた、するとそこには小さめの翼が生えていた。


「なるほど翼か、昨日食べた鳥の影響かな?それにしてもこの姿はドリアージュよりも動物に近いし、妖人よりも人に近いな。よし、動物の特徴が出てるからお前は獣人と言うことにしよう。」


 女の子はまた俺の方を向くとスリスリと俺に甘えている。反対側からは青香も甘えているがどこか不機嫌そうだ。


「そうだな、お前はどんなことが出来るか分かるか?」


 女の子は少し考えた後、翼を広げると羽が燃えた。だが同時に女の子の後ろにあったシーツも燃えた。


「わ!?ストップ、止めて、シーツも燃えてる!」


 女の子は慌てる俺を不思議そうに見ている。確かにこれをやるように言ったのは俺だな。俺は急いでベルを鳴らす、すると今度は上から水が降ってきた。振り返ると青香が力を使ったのか手から水が出ている。


「ありがとう青香、おかげで火は消えたよ。出来れば範囲は絞ってほしかったけどね。」


 俺は青香の頭をなでお礼を言いながらびしょ濡れになった周りを見渡した。女の子もびしょ濡れになり、翼からは少し水蒸気が出ている。俺は二人を抱えると床におろしベッドを確認した。


「良かった、燃えたのはシーツだけでベッド自体には被害はないな。乾かせば問題なさそうだ。」


 俺が安心していると後ろが騒がしくなってきた。振り返ると手を鞭のように使いながら女の子を攻撃する青香と羽を矢のように飛ばして喧嘩する二人がいた、女の子が水をかけられたことに怒ったって所かな。


 俺は喧嘩する二人を眺めながら溜め息をついた。ベッドの事は俺の考慮不足だし、青香はは火を消してくれただけだから怒りづらいよな。とりあえずあの子にも名前を付けてあげるか。翼が燃える獣人か、安直かもしれないけどファイアウィングって所かな?とりあえず喧嘩を止めるか。羽や周りの物が散らばって片付けが大変そうだ。


「そろそろ、喧嘩はやめてくれ。部屋が凄い事になってきたから。青香はその子のお姉さんなんだから、大目に見てあげてね。」


 青香は不機嫌そうな顔で喧嘩を止めると俺の側までやってきた。


「それと君はこれから魔人族・獣人ファイアウィング・陽炎カゲロウだ。水を被ったのはベッドの火を消してくれたんだから、あまり怒ったら駄目だよ?」


 陽炎も名前を付けて貰って嬉しそうだが、俺の隣に居る青香を見ると不機嫌そうに目をそらし青香とは反対側の俺の隣に移動した。火と水なだけあって相性は最悪だな。


 睨み合う二人を宥めているとリリーが入ってきた。


「お呼びですか?それにしても凄い事になっていますね。」


 リリーは周りを見渡すと球を浮かべた。まずしたのは濡れたベッド周りを乾燥させたようで周りの水気が無くなった。そして今度は散らばっている羽を掃除機のような力を使い吸い込んで片付けた。


「リリーの力は凄い役に立つな。俺には出来ないよ。」


「私はメイドですからね、万能性が私の売りです。」


 そう言って焦げ付いたシーツを取り替えると疾風達も目を覚ましたことを伝えてきた。


「そうか、なら会いに行ってみるかな。リリーはこの二人をお風呂に連れて行ってくれ、名前は青香と陽炎だ。その後はみんなで食事にしよう。」


「わかりました。では、二人共行きますよ?」


 リリーは未だににらみ合う二人を連れて浴場へと向かった。あの二人は麻白とは違って、俺に甘えるよりも喧嘩の方に意識が向いているのかすんなり離れたな。


 俺は歩きながらも睨み合う二人に溜め息をつきながら見送り、疾風達の部屋へと向かった。


 俺が二人の居る部屋に入ると二人は何かを見ていた様だが、俺が入ってきたのに気づくと側までやって来た。


「二人共おはよう。何を見ていたんだ?」


 俺が頭をなでながらそう聞くと疾風が見ていた物を持ってきて見せてくれた。そこにはこの城の周りの地形が、少し粗いとはいえ薄い木の板に書かれていた。


「かーさまの為に地図を書いてみた。板は麻白が木の枝から作ったよ。」


「ママのお手伝いするの!バーンズから港作るって聞いたから役に立つかと思って。」


 二人は褒めて欲しそうに目をキラキラさせて俺を見てきた。この二人は青香達と違って喧嘩もしないし仲もいいな。


「あぁ、ありがとう。二人のおかげで港作りは楽になるよ。頼んでも居ないのにお手伝いが出来るなんて二人はえらいな!」


 俺が二人を褒めるととろけるような笑顔を浮かべ麻白は甘えてきた。疾風はニコニコしながら頭を撫でられている。俺達は部屋にあるテーブルへと移動し椅子に座り、俺は二人に話しかけた。


「この地図はどうやって調べたんだ?」


「お空を飛んで書いたの!魔物がいたら危ないから城からはあまり離れてないよ?海の方には空を飛ぶ魔物が居るから危ないんだって!」


「お城の近くはバーンズが警戒してるから安全なんだって言ってたよ。」


 そう言えばバーンズは良く見回りに行ってるな。


「そうか、無茶をして怪我はしないようにね?」


 俺が注意を促すと二人は真剣な顔で頷いていた。禁止されなかったから、これからも役に立てるって思って嬉しいのかな?そうだなこの二人には青香や陽炎みたいに後から生まれてくる子供達のリーダーを担って貰いたいな。


「二人共、今朝二人には妹が二人産まれたよ。青香と陽炎って名前なんだ、面倒を見てあげてね?」


「はーい。」


「頑張ります!」


 二人は妹が出来て嬉しいのか元気に返事をした。そう言えばこの二人は生まれたところを見てないからどちらが上と考えてるんだろ?


「そう言えば二人はどちらが姉や兄ってなってるの?」


 それを聞いた二人は少し考えて疾風だと答えた。確かに疾風は落ち着いてるから長兄として頼れるかも。


 俺達が地図の事や港のことを話ながら戯れているとバーンズが部屋に入ってきた。


「ソーヤ様、食事の用意が出来ました。青香達も既に食堂にいます。」


「そうか、よし二人共朝食に行こうか。」


「「はーい。」」


 俺達が食堂に着くとそこには少し離れた席に座った青香と陽炎がいた。これは俺が誰の席の近くに座るか決めさせようと言う事か?まぁ、俺の席は一番奥の席だからどちらからも遠いけど。


 俺はため息をつきつついつもの席に座ると入り口近くに座っていた二人を見てみた。二人は俺の座る所はここだと知らなかったのか、ガーンいった顔で此方を見ていた。しかし青香と陽炎はお互いの顔を見て席を立つと此方に近寄ってきた。しかし俺の近くの椅子には既に疾風達が座っているので、近くに来たは良いもののどうしようかと悩んでいるのか、席の近くをうろうろしていた。


 それを見ていた俺が二人に声をかけようとすると疾風が席から下り陽炎の手を取ると自分が座っていた席に座らせた。陽炎はどうしたらいいのか疾風の顔を伺っている。


「僕お兄ちゃんだから、妹にかーさまの隣の席代わってあげる!」


 それを見た麻白もかなり名残惜しそうに青香を持ち上げると席に座らせた。


「私もお姉ちゃんだから。でも時々代わってね?」


 二人は疾風と麻白に満面の笑顔で返し俺の方をみている。二人が大人しくなったのを見計らったのかリリーが果物を持ってきた。置かれた物を見る限り今日は果物だけみたいだな。俺は皆に配られたのを確認して四人に声をかけた。


「青香と陽炎は喧嘩をするからさっきみたいな事になるんだよ?これからはもう少し仲良くね、そうしないと一緒に食事できなくなるよ?それと、疾風と麻白は偉かったね。流石はお兄ちゃんとお姉ちゃんだよ。」


 それを聞いた青香達は頷いて食べ始め、疾風達は嬉しそうに食べ始めた。俺もそれを確認すると目の前の果物に手を伸ばした。


 ここまでがすでに出来ていた過去作の下書きですので次話からの更新は時間がかかるかもしれません。

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