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ガラス越しの願いを

作者: 平安 煜

「ねぇ、ロン。今日が何の日か知ってる?」

ガラス越しの貴方に聞こえるかわからないけど、私は聞く。

「わからない」泡を吐きながら首まで振ってロンは言った。

「そう、今日は七夕というのよ。星に願いを叶えて貰う日なの。素敵でしょ私の国はそうやって祝う日だったの」

ロンは不思議そうに私を見る。どう反応するのか困っているみたいで、眉を寄せて唇に人差し指を立てて悩んでいる。そんなロンが可愛くて私はフフッと声を漏らして笑った。でも、ロンは気づかないまま考えて、ぼやっとしていた。が、思いついたように言った。

「星は何?」星について頑張って考えたのだろう。でも、自分にはわからないと判断してロンは疑問を私にぶつけた。その疑問は進歩で喜ばしいことだったけれど、もう少し早く聞いてもいいのにと思ってしまう自分もいた。自分の思考に矛盾を見つけながらも私は教えた。

「星はね、手が届かないほど遠くにあるもので、キラキラ光って綺麗なものよ。でも、本当は大きくて少し怖いものだったりするの」ロンに本物の星を見せたかったけれど、それは無理なことだから私は眉を少し寄せて笑った。

「そうなんだ。ねぇ、星はどんな遠くにあるの。教えて」

ロンは目を輝かして私を見てくる。知りたいと言うように。

「空っていう場所にあるのよ。空はこの天井よりも高くて広いものなの。わかったかしら」この言葉でわかったか、わからないけれどロンを見る。ロンは頷きながら私を見ていた。真っ直ぐな目で。わかってくれたのだろう。ホッとして、息を吐いた。ふと、私は最初の会話を振り返る。七夕の話だった、願い事の話だった。昔、私が見ていた夢を思い出しながら言った。

「ねぇ、ロン。願いは何かあるの。私は何があったかしら」目を瞑り考える。様々な夢があった。人を喜ばせたい、助けたいなど、それは今の職業とは違い明るいものだった。好きな人もいた。やっと結ばれたのに直ぐに私の前から消えていった。一年に一度最愛の人に会える織姫を私は羨ましいと思っている。今も切実に。

暗い思考に嫌気がさして私は首を振って、目を開けた。

「ロンは決まったかしら」笑顔で聞けたかは微妙なところだけど、ロンは口を開いた。

「まだ、わからない。だから、聞かして、夢」どう答えていいかわからないのだろう。でも、私の願いなんて暗いものばかりで話たくはなかった。

「そうね、私は貴方をここから出して色々なものを見せに行きたいわね」

自分の口角は上がったかわからない。嘘だとバレてしまったらと後で考えても、もう遅い。自分の話をそらすように私はロンに話を振った。

「僕の夢…待って、もうちょっとだから」目を閉じてうーんと唸りながら考える。純粋なロンは何処か昔の自分や彼を思い出し眩しく感じた。

「わかった。僕の夢…此処から出ることが夢」なんとなくわかっていた夢。私が教えた夢だけど、消えていなくなるようで悲しかった。

「そっか、ロンも出たいんだね」仕方がないと諦めたいのに諦められない。下を向いて痛みが和らぐの待とうとした。

「あのね、僕は泣いている貴方を抱きしめたい。苦しめてるもの全部僕が受け止めるから笑って」その声に私は顔を上げた。内側から手を出して触れないのに私の目元を撫でる仕草をするロンに私は始めて泣いていることに気がついた。優しいロンの手に触れることは出来ないけれど私は外側から自分の手をロンの動く手に重ね合わせる。冷たいガラスを挟んで貴方の体温は感じることは出来ないけれど、いつか貴方の体温を感じれる日を願いガラス越しに貴方と笑う。

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