嫌味で御利益な魔法教師
魔法界にはカルディア魔法学校という有名な高校がある。その高校にはとても名物的な教師がいるのだが、人々は彼の事を尊敬の眼差しで見る事もあれば、畏怖の念を持って接する事もある。とにかく彼の評価は人によって全くという程、違う。
何故ここまで違うのか。それには大きな理由が一つある。それは性格が非常に悪いという欠点を持っているからだ。本来ならば魔導国宝という世界でも有数の資格を持つ彼は伝説の魔法使いとして未来永劫語られる存在だ。だが、彼はあまりに性悪なので素直に評価されにくいのが欠点でもある。
彼は自分の気に入らない生徒を檻に閉じ込めて、ひたすら耳元で生徒自身の悪口を言うという残忍性を持ち、階段ですれ違うたびに聞こえるか聞こえないかぐらいで「ッチ」と舌打ちをする執念深さもある。さらに言えば、気に入らない生徒にワザと難しい問いを与えて、答えられずにモジモジとする生徒を見てほくそ笑むという最低な行いもする。
そんな彼だが、何故かここにきて評判が上がっている。その理由は、彼に仕打ちを受けていた元学生が出世して大企業の社長になったからだ。しかもその学生だけではなく、他にも仕打ちを受けていた学生はいた。その学生達は皆卒業したという条件つきだが、それぞれエリートの道に進んでいるだ。
こうして『悪口嫌味教師』というあだ名から一転して、今では『御利益教師』として自ら彼に嫌われようと躍起になる生徒が増えた程である。だが彼はそんな事をしったこっちゃ無いので、ひたすら自分が嫌う生徒に対して嫌味攻撃をする固定砲台と化していた。
何故、彼に嫌われた生徒は高確率で出世するのか。それは彼の性格に関係していた。自分より優れた魔法使いなどいないと彼は考えているので、有望な若手を潰そうとネチネチと嫌味を言っている。だからそういう意味では、彼の見る目はあるという事だ。
どんな人物にも役割がある。彼は確かに嫌味な教師かもしれないが、生徒の見る目は誰よりもピカイチなのだった。