1/50
00 産声
地平線から金色の光が溢れ出したとき、その声は生まれた。
広大な城の中、数多くある部屋の中でその声が聞こえたのは正妃の部屋。
助産師やメイド、様々な人間に囲まれてその生命はこの世に咲いた。
必死に生きようと泣き叫ぶ赤子は親を探して小さな手を彷徨わせる。
ふっと、その小さな手を包む温もり。
華奢な指を懸命に握り返し、自らが此処にいる事を訴えた。
温もりの主は静かに笑い、幼い我が子の手を放す。
回りの人間が一斉に騒ぎ出したその音に紛れて呟いたそれは、あの子に届いているだろうか。
嗚呼、どうか願わくば
「幸せに、なって…」
地平線から金色の光が溢れ出したとき産声を上げた赤子はその後美しく成長し、賢王である父の跡を継いで王となる。
幼き頃から国の為に学を修め齢十三にして政治の場に立ち今では民から慕われる統治者となったあの赤子は胸に一つの嘘を抱えながら生きる事となる。
新作です。よろしくお願いします