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信奉者の失敗






「は?」


地の底を這いずるようなその低い音が、これまで築き上げてきたものを全て崩壊させる切っ掛けとなった。









突然だが、先に明言しておこう。私は転生者だ。

それに気付いたのは四歳のときの事だった。自我を持ち始めて一年くらいだろうか、私は唐突に前世の『私』を思い出した。前世、私は極普通の女子高生だった。毎日面倒だと言いながらも律義に学校に通い、友達と騒ぎ、少しばかり夢見がちで、けれど隅にちらつく現実から目を逸らせない程度の、どこにでもいる女子高生だった。


死んだ理由は覚えていないが、こうして二回目の人生を歩んでいるという事は、やはり前世の私は何らかの不幸で若くしてこの世を去ったのだろう。

その後の私の心中は修羅場だった。それまでの四歳児としての意識と女子高生としての感情が複雑に絡み合い、自分が得体の知れない何かに変質してしまったような空恐ろしさがあった。それと同時に、それまで家族と信じて疑わなかった両親や兄を、急に他人のように感じるようになった。私は、ごちゃまぜの精神と唐突に訪れた孤独感を抱えきれず、泣き暮らすようになる。家族にはさぞ心配を掛け事だろう。面目ない。


しかし、そんな孤独な生活も長くは続かなかった。五歳を迎える一ヶ月前、私に転機が訪れたのだ。

両親により、とあるお屋敷に連れて行かれた。趣のある、これぞまさに日本貴族の邸宅、と言わんばかりのお屋敷である。端から端まで歩くのに何十分と掛かるほどだ。慎ましく且つ芸術的に手入れをされた日本庭園では当然のように鹿威しが高らかな音を響かせていた。


両親は言った。私と同い年のあの御方が五歳のお誕生日を迎えたからご挨拶をなさい、と。我が家が何やら特殊な仕事を生業としている事には薄々勘付いていたが、四歳児でそれに巻き込まれるとは思っていなかった。

そこで出逢った。私の、唯一の人。


私はそのお屋敷についても、めそめそと情けない顔を晒していた。当時は、前世の記憶を受け止めきれておらず、涙こそ流していなくとも今にも泣き出しそうな顔が常だった。そんな私は、その美しい日本庭園で足蹴にされた。泣きじゃくる幼児は顔面から、鯉が優雅に泳ぐ池に突き落とされたのである。


『黙れ、鬱陶しい』


誓って言おう。私は突然見ず知らずの少年に引き合わされ、両親がその少年に最大限の礼儀を払って接する不可解な現状について行けず、一言も発する余裕が無かった。私と同い年の少年は、五秒だけ私を観察すると実に滑らかな動きで足を振り上げ、不本意にも鯉と戯れる私を作り上げた。


私はあまりの事に呆然としていた。突然池に突き落とされてまともな反応を期待されても困る。おまけに季節は十一月。寒さで固まっていた所もあるかもしれない。ただし、それだけでは無かった。五歳児である彼の顔に大変な見覚えがあったのである。


その愛くるしくも陰のある冷たい双眸。幼いながらにすっと通った鼻筋に薄い唇。瞳の色と同じ黒髪は、一般的な日本人のそれとは違い、極上の絹糸のように滑らかに風に靡く。

私は彼をよく知っていた。正確には、私の良く知る彼は高校生だったが、ある『イベント』をこなせば幼少期の写真を見る事が出来るのだ。


彼の名前は篠宮斎しのみやいつき。かつては華族であったとまことしやかに囁かれる名門篠宮家の跡継ぎであり、容姿端麗、文武両道の完璧超人でありながら、思いやりという心を一切持たない冷徹人間。その実、その性格の原因は孤独な幼少期にあり、『ヒロイン』に心を開いてからは彼女に対してのみ甘い一面を見せる。


彼は、女子高生だった前世の私がドハマりしていた、乙女ゲームの攻略対象だった。

そのとき、私はようやく自身がただ生まれ変わっただけではなく、乙女ゲームの世界に転生してしまった事を知ったのである。










その後の事を端的にご報告しよう。

私は狂喜乱舞した。それまでのシリアスモードで可哀想なアタクシなど、鯉の餌としてくれてやった。黄色い悲鳴を上げて喜び勇んだのである。


私は乙女ゲームマニアだった。乙女ゲームを愛していた。信仰していた言っても良い。その中でも、彼は特別だった。最もお気に入りソフトの、最もお気に入りキャラである。恥も外聞も無く『斎様』と呼んでいたくらいだ。オタク万歳。


斎様が気を許せるのは幼少期から共に過ごして来た幼馴染の青年だけであり、この青年も篠宮家という特別な家柄に代々仕えている特殊な家系の生まれだった。例え気を許してはいても、斎様が対等に話せる人物はおらず、彼はいつでも孤独感を押し隠して生きて来た。

そんな彼の前に現われたのが、ヒロインである。ヒロインはその明るさと優しさで斎様を救った。彼女の天然でありながら物事の本質を見抜く目が、斎様を孤独から救いあげたのである。


しかし、乙女ゲームというからには、当然ヒロインのお相手は斎様だけではない。私は一度、斎様以外のキャラクタールートにも挑戦してみた事がある。ご丁寧にも、斎様を一度振ってからそのキャラクターの告白を受ける、という形になった。そのときの斎様の、お顔!私は一瞬でも浮気心を覗かせた自分を全力で悔いた!斎様に懺悔した。斎様にあのような哀しいお顔をさせるなど、一信者としてあるまじき愚行!

私はそれ以来、ヒロインと斎様が結ばれるルートばかり繰り返し続けた。

そんな私が生まれ変わった。そして、斎様と出逢う。そうなればすべき事は一つしかない。


必ずやヒロインとの恋を成就させる!


それが斎様の幸せなのだ。孤独な人生より、愛がある方が良い。あの、ヒロインのちょっと天然で優しい性格は頑なな斎様の心をほぐすのにぴったりで、二人はとてもお似合いなのだ。乙女ゲームといえば自己投影してキャラクターとの恋、というイメージかもしれないが、どちらかというと少女漫画を読むような気持ちで楽しむタイプだったので、それが現実に現われても、私は二人の幸福を繋ぐキューピッドになりたかった。あわよくば、ヒロインにデレまくる斎様を陰から覗いてニヨニヨしたかった。


私は斎様の恋の奴隷では無い。斎様という神を信奉する信者なのである。神様に幸せになって頂ける事が、信者の幸せだ。オタク上等である。

私はこのオタク心に固く誓った。ヒロインと出逢う高校入学まで、ハイスペックな彼を狙う雌豹達から必ず斎様を守り抜く、と。


幸いにして、その行動は実に容易かった。先に述べた彼の幼馴染である護衛役の青年は、私の兄である。我が宮下家みやしたけは代々篠宮家に仕え、国の中枢に関わって来た篠宮家の護衛を果たしきた。

もっとも、篠宮家がそうまで国の重役を担っていたのは今や昔の話で、その権力は時代と共に廃れていったのだが、何代か前の篠宮家当主が妙に商才に優れた人で、今の栄華はそのとき始めた事業の成功によって築かれていた。


宮下家はそんな、篠宮家が傾いたときも、再び栄華を手に入れてからも、変わらずお仕えし続けたのである。平和な現代では、護衛よりも側仕えとしての御役目の方が大きいが。

私は、宮下家の人間である事をフル活用した。御身の安全を…とか何とか繰り返してどこへでもついて行った。不埒な輩は宮下家の名の下に近寄らせなかった。


「斎様、斎様!この私にお任せを!紫緒しおが斎様を利用せんとする愚か者を退けてご覧に入れます!」

「そう言って、この間大事な商談相手の娘を邪険にしただろう」

「あの女からは下心を感じました!」


例え小学一年生であろうとも、女は女である。女という生き物はいくつに成っても女であるが、女という生き物はいくつで在っても女なのだ。

私は斎様が『女』という存在で道を誤る事なく、ヒロインとの完璧な出逢いを果たす為に最善の行動を心掛けた。篠宮家と宮下家の立場上、同じ小学校に同じクラスで入学したのだが、この至高の存在たる斎様は小学一年生にして女性を引きつけてやまない魅力を持っているので、私には休まるときがない。身内としか関わらなかった、平和な一年前がすっかり懐かしくなっていた。


「斎様、浮気はダメですよ!」

「はいはい」


そんな私の苦労など全く知らないのだろう。斎様は軽く繰り返すばかりだった。









斎様は初対面時こそ私のよく知る斎様だったが、年を経るにつれて少しばかりゲームのときの性格とずれが生じるようになった。

何と言うか、丸くなっている。基本的に端的な話し方をするので口調に温かみは少ないが、明確な拒絶を乗せるというほどでもない。むしろ、時々とても優しい。


「ひゃあ!あ、あっあっ頭!斎様、な、何ですか?」

「ご褒美?」

「首傾げないでください!超可愛いじゃないですかぁああ!」


頭を撫でてくれた際の返しの可愛さが異常である。高校生になると格好良いばかりの斎様だが、小学生の斎様はそれと同時に可愛らしさでも世界一だ。さすが斎様。

そんな中、一方では変わらず冷徹な一面を覗かせる。


「紫緒、何を怒っているんだ?」

「あ、斎様!同じクラスの堂本浩太ですよ!あいつ、私に役立たずって言うんです。斎様から離れろ、って言うんです!」


精神年齢25前後として、小学生の子どもに意地悪を言われて本気で怒るのは大人げないとも思うのだが、斎様の事に関しては早々に理性を放りだす事にしているのだ。何せこちとら本能に忠実なオタクである。本気で切れて本気で言い返してしまったのも致し方ない。


「へえ?」


すると、斎様は小学生の子どもとは思えない低い声を出した。底冷えするような、恐ろしい声である。


「手に入らないからって、他人のものにちょっかい掛けるのは感心しないな」

「な、誰かが斎様のものに手を出したんですか!?」


許すまじ。犯人は必ずこの私が捕まえて、斎様の御前にその首を晒してやる。


「いいや。俺のものは良い子だからね。きちんと自分で逃げ出したよ。………ただ、無知な愚か者にはそれなりの罰を与えないとね」


私は、そのとき感じた寒気の理由にさっぱり見当も付かなかった。ただ、その日以降、何かと私につまらないちょっかいを掛けていた堂本浩太が、何故か斎様の姿を見ると必死の形相で逃げだすようになったのである。









斎様のご両親は、斎様にご興味の無い方々である。

ご当主様は仕事一辺倒で、情というものを一切斬り捨てている。そのようなものは無価値であると判じながら、他人のそれを巧みに利用する人。


奥様はそんなご当主様にまるでロボットのように無感情に付き従う方だった。私は奥様の笑った顔も、泣いた顔も見た事が無い。奥様もまた、その表情の通り斎様に情を向ける事はなかった。斎様は、奥様に抱き上げられた事さえないらしい。


斎様はその事について、最早何もおっしゃらない。哀しいとも悔しいとも、ましてや自分を見て欲しいなどと、子どもらしくわがままに手を伸ばす事もなかった。

私には、それが堪らない。ゲームの彼は、その孤独から感情を抑圧していた。最早そんなものは無価値だと口にするほどに。けれど、それに性格を歪められるほどの影響を与えられるという事は、その寂しさはそれだけ彼にとって意味を持つ事だったという証明だ。


彼は、痛みを感じないロボットではない。孤独を孤独として受け止められる、寂しくて哀しい人だった。


「何をするんだ、紫緒」

「……………………」

「苦しいよ、息が詰まる。俺は何も思っていないよ?」

「……………………」

「何もかも今更じゃないか。俺はあの人達に何も求めてはいない。あの人達が、俺に何も求めないように」

「……………………………斎様ぁ」

「何?」


私は、子どもの身体で、子どもの彼を抱きしめた。ああ、もしも私がかつてのように女子高生だったなら、彼よりも一回り大きな身体で、彼を包み込む事が出来たのに。


「私は、斎様が何も感じないと言うのは、嫌です。そんなの、寂しいです。斎様が哀しいのは、嫌です」


私は、腕にぎゅうと力を込める。泣き喚いてしまいたい気持ちを必死で抑えた。彼の孤独は、彼だけのものだ。私が勝手に奪って、勝手に泣いて、私一人で全て終わった事になどしてはならない。


「斎様、私は、私が、紫緒が、斎様を幸せにしてあげますから」


待っていて、もう少しだけ。きっと高校生になったら、救いが現われるから。きっと彼女が、その無償の愛で貴方を包んでくれるから。その為に私は、何だってする。貴方を幸せにしてくれるあの子が、必ず貴方を選ぶように。


「………分かってる。俺には紫緒がいる」


だから、今は少しだけ我慢して。あの子が貴方を包んでくれるその日まで。









そうして私達は待ちに待った高校の入学式を迎える。

ここまで本当に長かった!斎様という超優良物件を狙う雌豹達をちぎっては投げ、ちぎっては投げ。小学生でも大変だったのに、中学生になると敵も中々巧みになり、更には女の武器の使い方まで心得始める。今の若い子達の積極性が怖いと思う精神年齢三十代。


まあ、斎様はそんな小娘の浅知恵に靡くような安い男ではないので安心ではあったけれど。何とか、悪い女に騙される事もなく、ヒロインが一目で恋に落ちてしまいそうな、ゲームのとき以上に素敵な男性に育ってくれたのだ。何せリアル斎様はゲームに比べれば気遣いもしてくれる優しい人である。初対面で十一月に幼女を池に叩き落とした事を想うと、矯正されて人間的にも真っ当に育ってくれた。

これから入学する、乙女ゲームの舞台でもある高校の校門前に立ち、私は意気揚々と斎様に声を掛けた。


「楽しみですね、斎様!」

「紫緒はいつも楽しそうだけど、高校入学は殊更待ち望んでいたね。何かそれほど良い事でもあるのか?」

「だって、斎様!高校生ですよ!」


高校生と言えば恋!恋といえば乙女ゲーム!そして貴方のお相手は誰もが認めるヒロイン!これが楽しみで無い訳がない。私は斎様の幸福を人生の主題に掲げているのだ。


「高校生になったら、」


私は大きく息を吸って斎様を振り返る。桜の花びらが舞う幻想的な春の景色に立つ斎様は、妖しいほどに美しい。うっかりときめきのあまり鼻血が出ないかと不安になった。だって、あの斎様が淡くでも微笑んでくれているのだから。


「素敵な恋をしましょうね!」


私は自身の変態性をひた隠しにし、この度の命題を告げた。その為に私は、小学校中学校生活を雌豹達との戦いに捧げたのだ。

しかし、すぐにまた馬鹿だね、とかはいはい、とか斎様らしく適当に流されると思ったのだが、一瞬固まった斎様は俯いてしまい、何の返答もくれない。もしかして、気分でも悪くなってしまったのか、私は心配になってその顔を覗き込もうとした。しかし、


「は?」


低いながらよく透る奇跡の美声で口にされたのは、これまで聞いた事のないような、心底の侮蔑を込めた恐ろしく低い声だった。


「え、え?あの、斎様?」

「………恋を、する?育むとかではなくて?」


戸惑って名前を呼べば、彼は返事をするでもなく、私に疑問をぶつける。とりあえず、返答があった事に安堵した私は、慌ててそれに答える。


「はい。だって、芽生えてもいないものは育みようがないじゃないですか」


次の瞬間、私は呼吸が止まった。驚きからでもあるし、物理的な問題でもある。目にも止まらぬ早さで斎様の素手が私の首を掴んだのだ。斎様のひんやり且つ固めの節くれ立った手が私の首に触れている。どうしよう、普段ならテンションを上げる所だが今は命の危機を感じる。

校門前に立つ私達の横をすり抜けながら、斎様に見惚れていた女子生徒達も、私達を何故か忌々しげに睨んでいた男子生徒達も、途端に目をそらしてそそくさと校内に入って行く。


「何だったんだ、浮気とか、私が幸せにすると繰り返していたのは」

「え?それは、えーと、その、高校生になったら斎様が素敵な恋をして幸せになれるような予感がビンビンしてたので、斎様の未来の恋人への貞節を守りつつ、私はキューピッドとなる事を固く決意していました」


一応、前世話、ましてやここが乙女ゲームの世界で斎様が攻略対象キャラである事は全力で秘匿している為、根拠は予感に留めた。普段から、私は勘で行動するタイプなので何ら問題はないだろう。


「は?」


しかし、斎様は再度あの神経を疑う、とでも言いたそうな低い声で一音だけを繰り返した。それだけで周囲にブリザードが吹き付ける。せっかく入学式に合わせて咲いた桜が散ってしまいそうである。


「へー、ふーん、ああ、そう。俺はそんな馬鹿げた予感に振り回されて、満たされるような気がしたり、優越感を覚えたり、幸せだと思い違いをしていた訳だ」


斎様は、吐き捨てるように口にする。こ、怖い…!冷たい印象の面立ちの割に意外と気遣いとか面倒見の良さを見せてくれる斎様が、今ではゲーム本編初期の冷徹さを剥き出しにしている。一度内側に入れた人間には意外と優しく、幸福な事に私も内側に入れてくれていると思っていたのに!


斎様は、私の首からゆっくりと手を離した。私はその時点でこの世の終わりに立ち合っているような恐怖を覚える。斎様は、思わずふらふらと引き寄せられてしまいそうな美しい微笑みを浮かべたかと思えば、次の瞬間には獰猛な肉食獣のように目を光らせた。そのまま、勢いに任せて私の胸倉を掴む。


「ひぃぎゃああああ!」


胸倉を掴まれ持ち上げられて、半ば宙づり状態の私に何が起こったか。噛みつかれました。斎様に。ちょうど首の付け根の肩との間くらいの所に。吸血鬼!実は吸血鬼だったのか!?斎様の麗しさを思えばそれも納得、と心のどこかで冷静な私も存在するが、予想外の現状への現実逃避とも言う。


「色気が無い」


斎様は凶行に走っておきながら端的に吐き捨て、私を突き飛ばすように手を離す。尻餅をついて目を白黒させながら傷口を押さえれば、ひい!血が出ている!生温かい!しかし斎様の唾液萌え!オタクという名の変態でごめん!


「俺は愛されてるなどと馬鹿げた妄想に胡坐をかいていただけか。全く、笑える。そう思うよね、紫緒。笑えよ」

「え、あの…」

「笑え」

「は、ははははははは!」


私は無理矢理笑い声を上げた。避けていると見せ掛けて陰からこの現状を覗いている人々、助けて!誰かがどうにかするだろう、という無関心が冷たい社会を作るんですよ!

斎様は満面の笑みを浮かべる。わあお。十年ほど一緒に過ごした中でも、ゲームの中でも見た事の無い凄絶な笑顔。怖すぎる…!


「欲しいものは胡坐をかかず、きちんと自分で行動に移さないといけないね。ねえ、紫緒」


斎様は途端に表情を消し、未だ腰が抜けて尻餅をついたままの私を、獰猛な肉食獣のように鋭い目で見下ろした。


「覚悟しろ」


前世は女子高生。この世に宮下紫緒として再び生を受けて早十五年。乙女ゲームの舞台である高校への入学を目の前にしながら、私の挙動の何かが斎様を異常に不快にさせてしまったらしい。

斎様、私は貴方の為にするべき何を間違ってしまったのでしょうか?


私が自身の発言の軽率さを身を持って知るのは、まだ先のお話。








読んでいただきありがとうございます。

この物語は、女の子が男の子に振り回されるベタな少女漫画的なの書きたい!最近乙女ゲームにトリップが流行っているらしい噂!たまには流行に乗ってみたい!という欲望の果てに誕生。結果、


どうしてこうなった。


唾液萌えが何なのだろうか、私にも分からないです。一方で、真の乙女ゲーム好きがトリップしたらこうなる、と信じています。目の前に好きキャラがいるという意味で。そして私は主従関係好き。好意の度合いは女の子の方が深い方が好き。変質的に。でもベタなのは逆だったのかもしれない、とあとで気付きました。


以下登場人物紹介


宮下紫緒:乙女ゲーム好き女子高生の転生者。基本的に面食いで変質的に斎に愛をそそぐ。おっと涎が。元々は少女漫画マニア。甘々な男の子とそれに愛される女の子にいたく萌える。幼少期に出会って以来、斎を(格好良い可愛い美しい)変質的に愛でる。


ゲーム版篠宮斎:肉親との縁に薄く、役立たずに生きる価値なし、という教育の下育てられ、他人を見下す冷徹人間。容姿端麗、文武両道だが、その性格の為に遠巻きにされる。心を開くのは側つきの青年のみ。誰にでも優しく天真爛漫なヒロインに当初は反発していたが、次第に彼女の温もりや優しさに心を開く。やがてそれが愛に変わる。これまで他人を傷つけてばかりだった自分を、初めて悔やむように。内側に入れた人間と他人への接し方の差が大きい。


篠宮斎:生活環境、能力面はゲームと同じ。ただし、紫緒によって鬱陶しくもにぎやかに暮らしてきたので、五歳以降孤独感はあまりない。ゲームに比べて穏やかで享楽的。他人に興味が無いのは同じだが、拒絶もしない。本話の後半、噛み付いたのは流石に殴るわけにはいかない、という理性が間違って働いた模様。



短くすっきり終わらせるつもりなので、最後までお付き合い頂けると幸いです。

こんな蛇足までお読み頂き、ありがとうございました。



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