寝物語~2(ショートショート)
『ふむ……ぼうや今日も眠れないのか?
それじゃあ今日もお父さんがお前に寝物語を読んであげよう
やっぱり面白くない話だが、寝るにはちょうどいいだろう』
昔々のそのまた昔、ある山に一人の男が住んでいた。
その男は巨人のように大きく強くやさしかったそうな。
ある日、男は何時もと同じように狩りをして捕ってきた動物を持ち帰っていると道の途中に血まみれの兵士がふらつきながら走っていた。
男が興味を持ち兵士に話しかけると、兵士は怯えたような顔をしながらも事情を話した。
なんでも町に手に負えないような魔物の群れが現れ、国王に急いで伝えに行く途中であったそうだ。
そこまで話し終えた兵士は国王にそのことを伝えてくれるように頼むとそのまま息を引き取ってしまった。
しかし男は国王がどこにいるのかわからなかった。
ならばその魔物を俺がなんとかしようと考えたがやはりその道がわからない
少しの間悩んでいた男だがふと兵士の血が点々と続いていることに気がついた。
兵士は町の危機を伝えに行く途中だったのだから、当然この血は町に続いているはずだと考えた男は兵士の屍をつまみあげるとその血を目印に町に向かっていった。
男が辿り着いたとき町は魔物の群れに襲われひどい有様だったがまだ抵抗を続けている様子だった。
男は大急ぎで魔物の群れを倒すと兵士の死体を埋葬してくれるように頼み、そのまま再び血を頼りに帰っていったのだという。
その後しばらくしたある日のこと、男の所に突然国王が一人で訪ねてきたそうだ。
国王が言うには、この国に巨大な竜のような魔物が現れこのままでは国もろとも領民も全滅してしまう勢いなのだという。
そんなときにとても強い大男の話を聞きつけ情けないとは思いつつも助けを求めに来たのだそうな。
話を聞いた男は任せてくれとすぐに国王と共に竜のところにむかった。
竜のところに辿り着いた男は自分の身の丈と同じほどの大きさがある竜と戦いを繰り広げた。
竜と男は熾烈な戦いを三日三晩繰り広げ、そのまま両方とも大きな音を立てて倒れた。
国王はとても喜び、すぐに倒れた男の元に駆け寄ると感謝の言葉を伝えようとしたがそのときにはすでに息を引き取っていたそうだ。
国王は国と領民を救った英雄のために墓を作ろうと男の死体を運ぼうとしたがとても重くどれだけの人数で引っ張ってもびくともしなかったらしい。
竜の死体も同じで、とても重くてまったく動かなかったらしい。
国王は止むを得ずそのまま土をかぶせ彼の戦果とともに埋葬したそうだ。
その男の墓は巨人山と呼ばれるようになり今でも王国にあるらしい。
俺は行ったことないけどな。
ちなみにそのころは王国なんて言葉は国名に入っていなかったらしいが、その男の活躍を歴史に残すためにその王様が大男とかけて王(大)国って付け始めたそうな。
『む、今日は起きてるな。まぁ俺が寝るから話はここまでだ
それじゃあおやすみぼうや』