密やかな恋の話
本日2話目の投稿です。
恋を、しました。
わたしにとって、最初で最後の恋を。
心に在るだけで幸せな、恋でした。
* * *
私、如月律花の朝の日課は3つある。
ひとつは、前日に図書館で借りた本を、誰もいない早朝に返すこと。
ひとつは、誰もいない教室の窓を全開にして、朝焼けの広がる空を眺めること。
そして最後のひとつは、ある人の登校を見届けて――挨拶を、交わすこと。
「おはよう、遠矢くん」
「おはよう、如月」
冬休みが明けて、三学期の始業式。
当たり前のようにそんな会話を交わして、ほんの数ヶ月前との違いに、ひっそりと笑う。
「? 如月、何かあった?」
「ふふ、うん。いろいろあったんだけど――まずは、聞いてくれる?」
「あ、前電話で言ってたやつか。いいよ、何だ?」
初対面の時の面影はまるでない、微かだけど柔らかな笑みを目にしながら。
私は口を開いた――この心に咲いた恋の話を、するために。
これにて完結です。
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