(1)
あんたはアダルトDVDって、みる方かい? のっけから下ネタっぽくなってすまない。でも今回の話には非常にそれが関係してくるんだ。
おれだって人並みにはみるほうだ。女はここ一年間、ずっといないしね。今回のトラブルは、久しぶりに後味の悪い話だったよ。おれの話のあとには、あんたもAVを手に取るのをためらうようになるはずだ。多分ね。おれはあの事件以降、一本もみれていない。吐き気がしてくるんだ。
また本題に戻ろう。下は一般的な話だ。
レンタルビデオ屋、隅のアダルトコーナーで、あんたはAVを手に取る。そしておれがそうするように、多分あんたもそのパッケージの裏をみて、その内容を少し想像してみる。その妄想内容が自分の趣向と合致すれば、あんたはそれを借りて、そして家に帰って、観る。それは自然なことであって、別に恥ずかしがることでもない。
そのジャンルの中にさ、レイプものってのがあるよな。あんだけたくさん棚に並んでるんだから、きっとこの国でレイプものの需要はハンパじゃなくあるんだろう。そしてそれと同時に供給も。数えきれないくらい、世間にはこんなものがあふれかえってる。女が嫌がりながらセックスしている様子をみて、興奮する奴がたくさんいるのだ。おれはもともとそんなの好きじゃないけど。
でもさ、よく考えてみてくれよ。あんたがどのくらい女と(もしくは男と)付き合ってきたのかは分からないけど、女ってのは難しい生き物だよな。表の顔、裏の顔、どちらも持っている。天然の女優といってもいい。男よりずっと複雑だ。
だから何が言いたいかっていうと、あんたには分かるのか? そのAVの女が、本当にレイプされているかどうかなんてさ。
もし、その女が本当にレイプされていて、その様子を下品な男たちが下卑た笑顔を浮かべながらビデオカメラをまわしていたとして、それでもあんたはそれを観続けることができるか? 一旦想像してしまったら、おれにはとてもできない。
なあもし、あんたの大切な人が、そんなことをされていたら、どうする? 女が涙やよだれ、鼻水なんかを垂れ流し、泣き叫んでいるが、それでも男は笑い声をあげながら腰を振っている。なあ、あんたはどうする? もしおれの大切な人がそんなことをされたなら、おれは何の躊躇もなくそいつを殺してしまうかもしれない。いや、必ず殺すだろう。一億以上もの人間がひしめいているこの国において、たかが一人を痛めつけたところで、その罪の重さといったら、耳垢にも劣るんだ。それが組織、国というものだ。
結論を言おう。今回の話はバッドエンドだ。それは当然のことで、一人の少女が自ら命を断ち、その父親が復讐する話なのだから。ヤツに、社会に、そして、自分に。
だけどあんたたちにはしっかりと見届けてもらいたい。人の死、特に自殺というものが、どれほど周りの人間を傷つけ、そして彼らの人生を狂わせるのかを。命の重さを、冗談抜きに考えてほしい。
おれは今日もレクイエムを聴く。彼女たちの魂が、安らぐように……。




