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レクイエム・フォー・ア・ガール  作者: 久里ワタル
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 あんたはアダルトDVDって、みる方かい? のっけから下ネタっぽくなってすまない。でも今回の話には非常にそれが関係してくるんだ。

 おれだって人並みにはみるほうだ。女はここ一年間、ずっといないしね。今回のトラブルは、久しぶりに後味の悪い話だったよ。おれの話のあとには、あんたもAVを手に取るのをためらうようになるはずだ。多分ね。おれはあの事件以降、一本もみれていない。吐き気がしてくるんだ。

 また本題に戻ろう。下は一般的な話だ。

 レンタルビデオ屋、隅のアダルトコーナーで、あんたはAVを手に取る。そしておれがそうするように、多分あんたもそのパッケージの裏をみて、その内容を少し想像してみる。その妄想内容が自分の趣向と合致すれば、あんたはそれを借りて、そして家に帰って、観る。それは自然なことであって、別に恥ずかしがることでもない。

 そのジャンルの中にさ、レイプものってのがあるよな。あんだけたくさん棚に並んでるんだから、きっとこの国でレイプものの需要はハンパじゃなくあるんだろう。そしてそれと同時に供給も。数えきれないくらい、世間にはこんなものがあふれかえってる。女が嫌がりながらセックスしている様子をみて、興奮する奴がたくさんいるのだ。おれはもともとそんなの好きじゃないけど。

 でもさ、よく考えてみてくれよ。あんたがどのくらい女と(もしくは男と)付き合ってきたのかは分からないけど、女ってのは難しい生き物だよな。表の顔、裏の顔、どちらも持っている。天然の女優といってもいい。男よりずっと複雑だ。

 だから何が言いたいかっていうと、あんたには分かるのか? そのAVの女が、本当にレイプされているかどうかなんてさ。

 もし、その女が本当にレイプされていて、その様子を下品な男たちが下卑(げび)た笑顔を浮かべながらビデオカメラをまわしていたとして、それでもあんたはそれを観続けることができるか? 一旦想像してしまったら、おれにはとてもできない。 

 なあもし、あんたの大切な人が、そんなことをされていたら、どうする? 女が涙やよだれ、鼻水なんかを垂れ流し、泣き叫んでいるが、それでも男は笑い声をあげながら腰を振っている。なあ、あんたはどうする? もしおれの大切な人がそんなことをされたなら、おれは何の躊躇もなくそいつを殺してしまうかもしれない。いや、必ず殺すだろう。一億以上もの人間がひしめいているこの国において、たかが一人を痛めつけたところで、その罪の重さといったら、耳垢にも劣るんだ。それが組織、国というものだ。




 結論を言おう。今回の話はバッドエンドだ。それは当然のことで、一人の少女が自ら命を断ち、その父親が復讐する話なのだから。ヤツに、社会に、そして、自分に。


 だけどあんたたちにはしっかりと見届けてもらいたい。人の死、特に自殺というものが、どれほど周りの人間を傷つけ、そして彼らの人生を狂わせるのかを。命の重さを、冗談抜きに考えてほしい。


 おれは今日もレクイエムを聴く。彼女たちの魂が、安らぐように……。

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