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隣の部屋に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする  作者: 夕姫


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6. 確かに言ったけど、少しくらい汲み取れないものか

6. 確かに言ったけど、少しくらい汲み取れないものか





 時刻は19時を回ったところだ。窓の外はすっかり暗くなり、街の明かりが星のように瞬き始めている。部屋の中は、昼間の明るさとは違う、落ち着いたオレンジ色の照明に照らされている。


 そろそろ夕飯の時間だな。この時間になれば、さすがの白石も自分の部屋に帰るだろう。そう思って、ホッと一息つこうとした、その矢先だった。ソファーでくつろいでいた白石が、体を起こしてこちらを向いた。その表情に、嫌な予感がよぎる。


「ねぇ先輩。お腹空きませんか?お夕飯にピザ頼みましょうよ!」


 ……やっぱりか。帰る気配など微塵もない。それどころか夕飯までここで済ませるつもりでいる。


「お前は自分の部屋に帰れよ。夕飯くらい自分で用意するか、自分の部屋で食え。何で毎日毎日オレの部屋にくるんだ?」


 もはや問い詰めるのも疲れた問いを、それでも口にしてしまう。


「だって、先輩と付き合ってるから。先輩の部屋で一緒に夕飯食べるのは当然じゃないんですか?」


 一切の悪びれもなく、当然のことのように言い放つ。その根拠はいつものそれだ。


「だから付き合ってねぇって言ってんだろ!」


 一体、何度この言葉を繰り返せば、こいつの頭に事実は刻み込まれるんだろう。


「もう照れちゃってー!先輩ったら可愛いなぁ!」


 オレの否定は、こいつの中では「照れ隠し」と変換されるらしい。完全に会話が成立していない。目の前に透明な壁があるかのようだ。


「……はぁ。」


 深いため息をつく。もう反論する気力もなくなった。何を言っても無駄だ。論理も事実も通用しない相手に言葉を尽くすだけこちらのエネルギーが消耗するだけだ。


「もういいや。腹も減った。とりあえず頼めよ」


 折れた。完全にオレの方が折れた。なんでこんな風に毎日押しかけてくる奴のペースに乗せられて、夕飯まで一緒に食べようとしているんだオレは。自分でも理解できない。


 くそっ。こいつの思考回路はどうなってんだよ。この前もいきなり抱きついてきやがって……思えば、こいつの行動は予測不能で常にオレの平静を乱してくる。


 まぁ……柔らかかったし……じゃなくて!それは別に、そんなに嫌じゃなかったんだけどさ。


 ……ん?今、なんて考えた?「嫌じゃなかった」?


 いや待て、冷静になれ。何を考えてるんだオレは。嫌じゃなかったなんてそんな馬鹿なことがあるか。オレはこいつのことが好きなわけじゃない。恋愛感情なんて断じてない。ただ、こんな風に毎日毎日、何の遠慮もなく押しかけてこられるとさすがに困るというか……プライベートな空間に毎日土足で踏み込まれているようなものだ。


 そもそもオレたちは付き合っているわけじゃないだろ。勘違いしているのはこいつだけだ。この前抱きついてきたのも、きっと悪気はないんだろう。こいつは、ただ単にパーソナルスペースが異常に狭くて、スキンシップが多いだけなんだ。多分。それがこいつの普通なんだ。そこに恋愛感情とか、特別な意味とか、オレの方が変に意識するのはおかしいじゃないか。変に意識してしまうなんて、そんな気持ちオレには断じてない。そう断じてないんだ。


 それに……こんな関係を続けていると、一体どうなるんだ?いつまで続くんだ?誰かに見られたらどう説明するんだ?アパートの他の住人とか、学校の奴とかに、毎日、後輩の女の子が部屋に来てるなんて知られたら……


「えぇっ!?」


 思考の海に沈みかけていたオレの意識は、白石の突然の大きな声で一気に現実に引き戻された。


「おい!急に大きな声出すなよ!びっくりするだろう!」


「ごめんなさいっ!でも、びっくりしたんですよ!ほらこれ見てください!」


 白石は手に持っていたスマホの画面を、興奮した様子でオレに見せてくる。そこにはピザの宅配サイトのページが表示されていた。


「2枚頼むと1枚半額ですよ!すごくないですか!?私たちみたいな学生には助かりますね?ピザって、一枚でも結構高いじゃないですか。」


「なら、高いならピザなんか頼むなよ……他のものにしろ」


「え?でも先輩が頼んでくれって言ったんで……」


「いや!だから!お前がピザ食べたいって言ったから、それを受けて、じゃあ頼めって言ったんだろ!流れ的にピザだろうが!」


「あれぇ?そうでしたっけ?」


 白石は首を傾げ、本当に覚えていないような素振りを見せる。……この天然なのか計算なのか分からないところが、また厄介だ。そして次の瞬間、こいつの思考はいつもの場所に着地した。


「でも!でもですよ!彼女の頼みを聞いてくれるなんて、さすがですね!先輩やっぱり優しい!私、愛されてますね!」


 本当になんなんだよこいつは。オレの言葉は全て都合よく曲げられ「付き合っている」「愛されている」という結論に繋がっていく。この全く噛み合わない、そしてどこに着地するのか分からないやり取りが、またいつものように繰り返されていく。


 こうして、いつものように白石との無意味な会話が続き、その後、注文したピザが届いた。あんな面倒なやり取りの末にたどり着いた夕食だったが、驚くほど美味しかった。


 あんなにイライラさせられたのに、美味しいものを食べると気分が少しだけ持ち直す。こんな奇妙な日常の中でも、こういう瞬間があるから、オレはまだ完全に全てを投げ出して白石を追い出すという決断ができないのかもしれない。

『面白い!』

『続きが気になるな』


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